初デート
今日は小宮さんとの初デート。
小宮さんは手芸と料理と美術が得意な可愛い、僕のクラスメイトだ。密かに想いを寄せていたのだけれど、とうとう2人で遊びに行けることになるとは。ああ、勇気を出して美術展に誘って良かった……。
前日からソワソワしてしまい、何度もデートコースの確認をしてしまった。服も何を着ていけばいいものか(悔しいけれど)、姉にチェックを頼んだ。
そういえば小宮さんの制服以外の姿を見るのは今日が初めてだ。どんな服を着てくるのだろう?可愛いワンピースかな?それともパンツルックかな?待てよ、僕は小宮さんが好きなわけだけど、向こうは優しさで付き合ってくれている可能性もある。その場合は制服で来ることもあり得るか……?
待ち合わせに早く来過ぎて俺は1人で悶々としていた。
すると「お待たせしました!」と言いながら小宮さんが現れた。
彼女はブラウンのチェック柄のコート、黒のサロペットスカートに白いセーター、黒いボリューム感のあるブーツという服装でやってきた。
か、可愛い……。
普段の制服の真面目な姿もいいけれど、私服姿も可愛い……。
いつもは見られない彼女の姿に、僕は内心すごく興奮した。
「いえ、僕もさっき来たばかりなので全然待っていないです!」
この僕の叫びから、今日のデートは始まった。
その後のデートはまあまあ順風満帆にいった、と思う。
もちろん、美術展の良さ(印象派というやつらしい?)に僕が全くついていけなかったり、行こうと考えていたカフェが定休日だったり、途中で道に迷いかけたり、といったハプニングは多少あった。しかし、彼女はいつでも楽しそうに笑って盛り上げようとしてくれた。
デート終盤、桜のきれいな公園を散歩している時のこと。
彼女の様子が少し気になった。
うまく言えないが、笑顔を無理して顔に貼り付けている気がする。
どうしたのだろう。もしかしてデートが退屈だったのかな?
彼女の様子を観察していると、彼女の歩き方が少しおかしいことに気がついた。
まさか、と思い、彼女に聞いてみた。
「小宮さん、もしかして、靴ずれしてる?」
小宮さんの顔が、かああっと赤くなった。どうやら当たっていたらしい。
「ごめんなさい……歩くの遅かった、かな?」
「ううん、こちらこそたくさん歩かせてごめんね。」
「いえ、高山くんは悪くないよ!私が新しいブーツで来ちゃったのが悪いんだ……。」
「ううん、そのブーツ、かっこかわいいもん!むしろおしゃれして来てくれて嬉しい、よ……」
話しているうちに何だか少し恥ずかしくなってしまい、最後の方は少し小声になってしまった。
小宮さんが赤くうつむきながら呟いた。
「ほんとごめんね。私、背が低いなのがコンプレックスで……。
今日、最後に桜のきれいな公園を歩くって言ってたからさ。
ブーツで少しでも身長を高くして、高山くんの見ている景色に近づきたくて……。」
そう呟くと、小宮さんはさらにうつむいてしまった。
な、何てかわいいことを考えるんだ……。
じんわりと感動していたら、ある考えが浮かんだ。
そして、僕はしゃがみ、彼女に背中を差し出した。
「僕、おんぶするから乗ってよ。」
「え、でも、私重い……」
「大丈夫!僕、こう見えて結構筋肉あるから!」
そう言うと小宮さんはおそるおそる背中に乗ってくれた。
そして僕は彼女をおんぶして歩きだした。
「……これでさ、もっと目線が近くなったでしょ?」
今、小宮さんと僕はほとんど同じ景色を見ているのだ。
そう考えると何だか嬉しくて、照れくさくなった。
小宮さんは、
「うん……桜の花が近くて、きれいに見えるね。」
そして、ありがとう、と、ささやいてくれた。
次からはもっと体調に気を配れるようにならなきゃ。
でも、こうやって近い距離で散歩するのも悪くないな。……って、小宮さんの足を痛めておきながら何を考えているんだ!?っていうか女性をおぶるのは失礼だったかな!?
……ああ、今更ながら緊張してきた。おんぶじゃ小宮さんの顔を見ることができないけど、どう思っているんだろう……。
ーーおんぶされている小宮さんが、背中に隠れながら嬉しそうに微笑んでいるのを、高山くんは知らないのであった。
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