表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/99

97 新時代の幕開け


月日が流れ、その日。

国王による、前代未聞の宣言が全ての民へ伝わった。


案の定なのか、貴族達は大きな混乱は無い。

情報は漏れていたのだろう。


民達の方が、騒然とした。戸惑いが広がる。


情報屋の出番だ。

これは、平民にとって喜ばしい事だ。

国王は、民の為に決断したんだ。

平民を代表するならジャックじゃないか?

など、まずは噂話を流し様子を見る。


各地に溢れる情報屋は、私達とは別の勢力もいる。

情報屋は基本的に個人経営なのだ。

依頼者を見つけられず困った時の頼りが私達の様な元締めなのだ。

仕事を回すバックマージンを貰うのだ。


情報戦争の始まりでもある。

政治は貴族にしか出来ないなどと言う噂も出回り始めた。

あの手この手の情報合戦だ。


世論の偏りの認識が勝敗を決めると言っても良いかもしれない。


民同士が日々、語り合いが行われる。

その中で、先だって自分の意見や理想を掲げる者達がチラホラ出始め、その後援者を募り出す。


所謂、選挙活動みたいなものだ。

人気票集めって所だろう。


まだ、立候補者の受付は先だが平民の間では、その波が大きくなっていく。


そろそろ貴族側の動きも上品にはいかなくなる頃合いだ。



私達の警戒もマックスになる。

今のところは、周りで裏切りなど貴族側に付いてる様子はない様だが。

ずっと警戒してるのも疲れるものだ。

気が緩みそうになる。


そんな中、お兄様から手紙が届く。

受け取り次第、高等部の校長室に来いと呼び出すだけの手紙だった。

私とウィルは、学校に転移した。


少し、お疲れ顔の兄が


「急に呼び出して、すまない。

今回の事だが、スペンサー家の領地は魔物の森を擁してる為か平民達は続投を希望する者が多い。

いきなり森の管理の責務は誰も負いたくないだろうしな。

各領地の長を決めるのは、その領地に住む民達だけだからな。


しかし、どこの領地も元々の領主が良いと思ってる訳ではない。

貴族の中でも劣勢に立ちそうな奴は居る。

そんな奴等が結託し出したぞ。


俺は、オマエ達が心配なんだ。

スペンサー家の使用人達含め全てが心配してる。

無茶するなよ。


平民を担ぎ上げる後押ししてるのはオマエ達なんだろ?

噂は、回ってるよ。

潰しにかかるのは目に見えてる。


呑気に店を営業してる場合なのか?

ジェイに任せて隠れててもいいだろ?


新たな時代を見ずに死ぬつもりか?

また、サイラスの為に犠牲になんのか。」



兄は、本当に心配してくれてるのだろう。

私達が平民になる事も最初は反対していた。

何故、私達ばかりが。などと割り切れない想いみたいなものが前からあったのだろう。


「ありがとな。

分かってる。始まる前から覚悟はしてる。

隠れるって、何処に居ても同じさ。

奴らだって情報網は持ってる。


天に任せてるよ、俺達の運命は。

俺達も警戒はしてるさ。簡単にやられるつもりは無いけどな。


ただな、俺達もサイラスが描く国の為に手を汚して来たんだ。

他の奴に逆をやられても仕方ないと思ってる。


勝った奴が正義なんだよ。

お互いの理想のぶつかり合いだ。

綺麗事じゃないんだ。

貴族共には貴族共の理想がある。

リュカ、オマエは勝者を見届けろ。

そして、順応しろよ。


俺達は、負けたら命があっても敗者だ。

闇に紛れて生きてく事になる。


今は、ローズとの時間を1日1日を大事に過ごしたいんだ。エデンでな。

あそこは俺達の楽園だ。離れるつもりは無いよ。」



ウィルの話を聞いた兄が溜息を吐く。

そして私の方を見て


「マリー。オマエは納得してるんだな?

オマエも母上と同じなんだな。惚れた男の為なら死さえ厭わぬと言うことか?」


哀しそうな顔だった。


「お兄様。お母様から聞いたのですか?

私も、ウィルが影を引き継ぐと決まった時に、お母様に聞いた事があったの。

それで納得してるのか?って。愛する父の為に覚悟は決めてるって感じの事を言ってたわ。

貴方も、そうでしょう?なんて聞き返されたもの。


私ね、自分の夢とか希望が無かったのよね。

前世の記憶の続きみたいな感覚で目的を果たしたら私の幸せってなんだっけみたいな。


それで前世の記憶を辿れば愛する人と共に歩む人生をやり残してたって感じで。

私の夢なんて些細な事なのよ。ウィルと出会えて今まで私は夢の中に居るの。


幸せよ。とっても。


けれど、ウィルとの時間で手を汚してきたのは事実だし、情報だって誰かに取っては毒になるのよ。

今回の事だけじゃなく、常に命を狙われてると思うわ。

殺されないまでも恨まれたりね。

考えない様に生きてきたけど、やっぱり何処かで因果応報の報いは来るんじゃ無いかしら?って思うわ。


だから、お兄様。哀しまなくていいのよ。

それが、私の選んだ道なんだから。

後悔なんてしてないわよ。

ウィルと共に歩んだ日々は全て無駄じゃ無いもの。」



そう言って笑うと、兄は何も言わなかった。

言える言葉が無かったのかも知れない。

するとウィルが


「もぉ〜。湿っぽいの無し無し。

それより、お茶も出してくれない訳?

俺達、死ぬって決まってないけど。


仮に死んだとして、これが最後の会話で終わっていい訳?

俺は嫌だけど。楽しい話しようぜ。

娘と息子は元気か?

そういや娘の婚約者の家は大丈夫なのか?

オマエが許した訳だし、ちゃんとした男なんだろ?じゃなきゃ溺愛してる娘の婚約なんて許さないもんな。」


そんな話を持ち出して、話を逸らしたのだ。

久しぶりに、何気ない会話を楽しむ。幼い頃からの付き合いの友と何事もない様に。



そして、店に戻る。

開店前の店に、ベルとエリーが居た。

ジェイの姿は無かった。


「ジェイは?

今日って何か仕事あったっけ?」


そう私が問うと、ベルナルドが答えた。


「あ〜、ちょっと仕事を頼んだ。

居ると暴れられても困るしな。

悪いけど、俺達の為に死んでくんねぇか?」


急な言葉に思考が追いつかなかった。

そんな私と違いウィルは


「ほぉ〜。俺達を売ったんだ。

エリーの為か?」


そう聞いた。

ベルナルドは答える。


「察しが良くて助かるよ。

エリーがヘマして貴族の差し向けた輩に首輪をつけられちまった。

見えるだろ?魔道具だ。

オマエ達が死んでくれなきゃ、エリーが死ぬ。

俺は、ウィルを慕ってるぜ。ローズもな。

けど、悪いが天秤にかける。


お二人さんは、どうする?

俺達を始末するか?」


なるほど。と思った。

愛する者の為に選んだ最善の道だ。

私達に言わずに、油断させて殺める方が良いのに、わざわざ死んでくれとは礼儀ってやつか。


「ベル。私達が死んで、マリーが助かる保証はあるのよね?

ベルは仕事を完璧にこなす出来る人だものね?

この店やジェイも大丈夫なんでしょ?」


私が質問する。

するとベルナルドは


「勿論だ。

お返しをしてある。

マリーの首輪を外さなきゃ、オマエの首輪も外さないとね。

首輪を付けるなら俺にしとけば良かったなって脅した。

まったく、厄介な魔道具だ。

付けた奴にしか外せない。

マリーに付けた奴が誰か分からねぇ。

下手にこっちが外そうとすりゃ勝手に爆発するなんて誰が作ったんだか。


オマエらが死んだら俺が始末する。

ウィル、オマエの手を汚さないってのも、もうおしまいだ。」



それを聞いたウィルは


「好きにしろ。

オマエの判断は正しいよ。

エリーは首輪だけじゃなく、術式を刻まれたな。

最初は大人しく従って術式も解除させろ。


さて、どう死のうかな?

自分達で死ねって言うんだろ?ベル。

痛いのも苦しいのも嫌だな〜。

どうするローズ?」


私が答える前にエリーが話し出す。


「ベル。私が犠牲になるわ。もう辞めて!

私は、とっくの昔に死ぬはずだったのよ。

マリー様が助けてくれた、救い出してくれたの。

貰った命だわ。だからっ!」


その言葉を遮って私が割って入る


「エリー! ベルの気持ちを考えなさい。

貴方が全てなのよ。

私だって、逆の立場なら死んでくれと頼んだわ。


人は、自分が余裕がある時は他人に優しく出来る。

けどね、切羽詰まれば自分を一番に考えるのよ。

そして、自分の命より愛する人の命の方が大事になっちゃうのよ。


ベルは、こんな話しないで私達を殺せたと思うのよ。なのにしなかった。


私達に殺されても文句は言わないって腹づもりでね。

どっちに転んでもマリーを助けたいのよ。


マリー、貴方の愛するベルが決めた事よ。

貴方も覚悟を決めなさい。



さて、ベルナルド。

猶予は、どのくらい?

明日まで、待ってくれる?

2人の最後の時間くらいくれるわよね?」



そう言うとエリーは黙り込みベルナルドは答える。


「勿論だ。ジェイは明日の昼まで戻らない。

その間、店を閉めても構わない。

ジェイが戻るまでの時間で終わりにしてくれると助かるな。

もし、逃げたとしても恨まない。

それでエリーが死んだら俺も死ぬ。


俺達は、店に明日まで戻らない。

今まで楽しかったぜ。

オマエ達に会えて良かったよ。ありがとな。」


そう言って店を出て行った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ