表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/99

96 新時代突入の序章


ウィルが貴族血統主義者に利用されない為の警戒をしてる中で、久しぶりにサイラスが現れた。


たまに、お忍びで夜の街の偵察と言う名の息抜きに来ていたのだが、今日は何やら様子が違って見えた。


閉店後の片付けが終わって寝静まる頃に現れたからだ。


万が一にもウィルが拉致られない様にと寝る前には結界を張って侵入者に気付く様にしてあったので、まさか侵入者か?と焦ったがサイラスなので安心した。


「こんな時間に、何かあったのか?

夜の営み中だったかもしれないだろが。

少しは空気読めよ。」


そうウィルが冗談めいて話すとサイラスは少し申し訳無さそうな顔で


「悪い。ちょっとな報告しに来たんだ。

国が騒然となるかも知れないからな。

兄貴達、情報屋としても備えてた方がいい。


これから俺がしようとしてる事に兄貴を巻き込む可能性もあるしな。

俺がと言うより貴族もかな?」


そう言って暗い顔をした。


「何かやるつもりなのは分かったけど、そんな暗い顔して。

自分の決断に迷いがあるの?」


私が、そう問えばサイラスは此方を見据えて答える。


「決断に迷いわない。

けど、その為に兄貴を巻き込むかも知れないのは忍びない。

悪い、民衆を味方につけて貴族は牽制する気では居るんだが。

力技に出で来る輩も居ないとは言い切れない。

兄貴達が弱くないのは知ってるが隙が無い訳じゃ無いだろ?」


どうやら、ウィルを心配してる様だ。

それを察したウィルが言う。


「サイラス。

オマエが何か大きく変えるんだろうな。

今までの常識を覆す様な事なんだろう?


俺達の噂話もそうだが、何かあるなとは思ってたよ。

今だって警戒してるつもりだ。

オマエに心配されなくても、これでも王家だったんだ。そこから逃げられないのも分かってる。

王にならなくても、何かしらの駒にはなるからな。

しかも妻はローズマリーだ。

神の加護を持つ天才と言われた女だぞ。

大博打をするのに良い駒だ。

分かってるよ、自分達が本当の自由や平和とは無縁な事くらいな。

心配するな、俺達は俺達の、やりたい様にする。

自分の身も自分で守るよ。

オマエは、オマエの信じる道に進め。」


そう言い切った。

私も笑顔で頷いた。


「悪いな。また甘えた。

そう言ってくれると思ってた。


息子達と話し合ったんだ。これからの王家の事をな。

ロイもカイルも出来た奴らだ、王というものに誇りと尊敬を持ってる。

けれど、その重圧なんかも理解してる。


国には、まとめ役は必要だ。

それが、王家に生まれただけで、その責務が課せられるのは度し難いと結論付けた。


国の行末は、皆んな平等に責務を負うべきだとね。

弱い者に手を差し伸べるばかりでは、何の成長も無いのだと痛感したよ。

それを逆手に取って弱き者を装う者も出てきてる。


理想を持つ事は素晴らしい事なのかも知れないが、理想を押し付けるばかりでも駄目なんだな。


何の成長もない国になってしまう。

王家という、王という象徴は姿を変える。


王族も貴族も平民も、民に選ばれた者がリーダーになる。


全ての民に選ばせる。

選ばれた者も選ぶ者も責任が伴う。

責任の共有だ。


多数決制だな。より多くの者が支持した方が正義だ。

正義は、いつだって変わる。

けれど、正義を決めるのは民だ。


落ち着くまで混乱するだろう。

暗躍する者が出る。

情報屋は、大忙しになるかも知れない。


兄貴は、リーダーを狙う新たな王になろうとする輩に王家の血筋として利用されるかも知れない。

貴族は、なんとしてでも自分達の地位を失いたくないだろうからな。

何をするか分からない。


俺からしたら平民がリーダーになるのが望ましい。

いきなりリーダーに担ぎ上げられた奴は戸惑うだろうから俺たち王家は補佐に回ろうと思う。

落ち着くまでな。


そこで、情報屋に依頼もある。

大多数が平民だ、情報操作して良さそうな平民が担ぎ上げられる様に仕向けて欲しい。


まぁ〜、領地の長も含めてね。

ハンデルンなら、そのまま続投でリアムが長かも知れないが、他は貴族の領主に対して不満もあるだろうからな。


まずは、そこからだ。

各領地の長を新たに決め直してから、新たな王たるリーダーを決める。


悪いな逆恨みの標的にされる可能性もある。

俺もそうだが、兄貴もね。


今の話が気に入らないなら兄貴にすら命を狙われる覚悟もしてるぞ。


平和な生活を邪魔して悪いな。

毒を投下する様なものなのかも知れない。


今まで闇で動いてた者すら表舞台に立てるチャンスだからな。

混乱を最小限にしたい気持ちはあるから騎士団達には警備に当たらせるが全てをカバー出来ないかも知れないからな。


平和的に流れが出来る様に暗躍してくれると助かる。

いつまでも甘えて巻き込んで、すまないね。

手のかかる弟だと諦めてくれ。」



そう言って苦笑いするサイラスだが、ウィルの庇護下ではなくなって自分で考え出した結論なのだと思う。

王という者になり、王を手放す選択をしたのだ。

継承することすらも辞めたのだ。


民主主義国家にするという事で、選挙をする事でもある。

最初は混乱するに違いない。


王に依存してた者が大多数なのだから、いきなり自分が決める選択を与えられて喜ぶ者ばかりでは無いからだ。


初めての事は皆、戸惑うものだ。

未知の世界なのだ。

王国より、弱肉強食が増すかも知れない。

動かなきゃ何もしなきゃ取り残される。


確かに、闇の番人の様な者が表舞台に現れ、平民の先頭を歩いてやらなきゃ駄目なのかも知れない。


底辺を知り、ドン底から這い上がり自ら勝ち取った居場所は闇の中かも知れないが、ハングリー精神や行動力、世の中の理不尽に負けない精神力。

全てが新たな時代の幕開けを牽引するに相応しい人物なのかも知れない。


貴族が束になって抑え付けても蹴散らす野生児の様な荒々しい勢力。


王家だけは、自らが辞退し平民の為の国にすると宣言するのだから賞賛されるかも知れない。


貴族達は賛成派に周り、自分達が良い人間だと示すか反対派に周り力で潰すかの二択だろうか?



元王族のウィル、元貴族の私。

巻き込まれない訳もないか…。



反対派の貴族達が私達が、どちら側なのか王と仲違いしてるのか気になる所だろう。


時代の変換期に突入する訳だ。

この国を創り上げた兄弟が、また国を変えるのだ。


因果って奴なのか。


また、犠牲が出るのだとしたら

また私でいいかな?なんて思ってしまった。


ウィルに心を読まれたら怒られてしまいそうだ。


「なるほどな。

これはまた、随分と大きく変えるな。

担ぎ上げるなら、相当な強者じゃなきゃな〜。

大丈夫か?多少、血が流れるかもだぞ。

民同士のぶつかり合いだ。


それに、俺達だって安全とは言えないな。

自分の身は自分で守れって事だな。


まぁ〜さ、俺達は、人の命を奪ってきた側だ。

いつ、自分が手に掛かられても文句は言えない。

運命に任せるよ。


リーダーは、こっちで考えて良いのか?

希望があれば聞くが、ないなら勝手に決めるぞ。

さっさと噂の元ネタを作らなきゃならない。

噂は尾鰭が付いて、段々と真実味を増してくる。

操作するのも最初だけだ、着地点は分からない。


人の噂は凄いんだぜ。

嘘が真実になる。


今回は、一斉に情報戦争になる。

あまり貴族を舐めない方がいいぞ。

貴族の社交界で培った噂話を利用するのは御家芸だぞ。


上手くいくかは、終わってみないと分からんぞ。

けど、オマエは匙を投げたら関与出来ないよ。

オマエが予期しない者がリーダーになっても文句は言えないからな。

それだけは覚悟してろ。


サイラスの理想と民の理想が違うって叩き付けられても凹むなよ。


呑気に酒場経営なんてしてる余裕なくなるのか〜。

楽しかったのにな〜。


毎晩、酒を喰らって馬鹿話して笑って騒いで。

束の間の自由だったよ。


って、さっさと落ち着いてくれて生きてりゃいいだけの話か。」


そう言って笑うウィル。

なんかフラグ立ててない?と思ってしまう。


それから、各地の長を決める計画書を具体的に詰める事と王がしてきた役割を、どう変えて民に譲るのかとか詳しく決めてこいとサイラスを帰らせたウィルは溜息を吐きながら語り出した。


「ローズ。ごめんな。

いつまでも、俺の都合で平穏な日を与えてやれないな。


それに、影の時から死と隣り合わせだ。

逆恨みされない様に周りを消したりした。

不安分身を取り除いた結果なんだけど…。


褒められた事じゃ無いよな。

その片棒を担がせてしまった。


君は、いつだって公平に物事を見てる。

勝手に決めつけて自分は正義だって言い張る様な人では無いのにね。

俺の決めた事を全力で手伝ってるだけだ。


もしもの時、俺を庇って死なないでくれよ。

また、君を失う想いをさせないでくれよ。

もし死ぬなら一緒だよ。


情報屋として民、全てが依頼者であるなら

貴族の為に動くのだって仕事なのに

国に関与しないと言ってたのにね。

また国に関与する結果になる。


俺達が、王の思惑で動いてるのは直ぐにバレるだろうね。

王への当てつけで俺の命を狙ってくる可能性もある。

王やその家族をやるより、平民として夜の街に居る俺の方が狙いやすい。


だからこそ、俺の命を狙って牽制しても、怯まない奴をリーダーに仕立てなくちゃな。

貴族に逆らったら命が危ないと思わせる目的でもある訳だしね。

最初から立候補させない手だってある。


今更、俺を王に祀りあげる馬鹿は居ないと思う。

ただ、命を狙うのは色々と考えても有りそうだ。

見せしめ的にね。


サイラスが宣言する前に全容がバレる筈だ。

城の使用人や出入りは激しい、どこの貴族が仕込んでるか分からないからね。

早かれ遅かれ情報は漏れるだろう。


今日から本気で警戒してローズ。

君だって危ないんだ。

この店ごとって事だってあるよ。

仕入れてる食材や酒も、毒がないか調べてから口に入れてね。

それと、客に一度出した酒は勧められても飲むなよ。


元々、番犬だった情報屋だって同じだよ。

主従関係は切った、同じ同業者になったんだ。

家族だと思ってるのは俺達だけかも知れないよ?

疑いたくは無いけど用心してね。


彼等も守りたい奴の為に動くんだ。

それはベルも同じだよ。

エリーの為なら俺達だって裏切ると思う。

もう昔のベルじゃない。


俺だって、君を守る為なら世界を敵に回すよ。

全てが、落ち着くまで誰も信用するな。

君は騙されても笑って許しそうだから怖いよ。

君は、前世の記憶が鮮明過ぎて実際の歳より長く生きてる気分である様だからね。


俺だって魂の記憶を思い出してから長いこと生きてしまったと錯覚しそうになる。」


そう言って抱き寄せられた。

少しの間、お互いの温もりを感じながら沈黙の時が流れていった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ