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95 ある日のエデン


エデンに暮らし出して、ウィルは楽しんでいた。


自分で家事や接客をする事が新鮮なのだろう。

しかし、王家に生まれた坊ちゃんだ。

そうそう、出来る訳も無く失敗ばかりだ。


ある日、店を閉めた後。


ジェイは、何処かにフラッと出掛けて行き。

ベルとエリーは寝ると言って部屋に行ってしまった。


今日は、私達が店の後片付けの当番なのだ。


ホール全体の片付けと掃除をし終わるとウィルが、洗い物をすると言うので割るから私がやるわよと言うと


「ローズっ。俺だって少しは成長してるからね。

役に立たないみたいな言い方しないでよ。


毎日が新鮮なんだよね。

本当、使用人の有難味を実感するよ。


ローズは、前世の記憶の特権なのか沙汰なくこなすよね。なんかズルい。

ローズだって、貴族の令嬢だった癖に。」


そう言ってイジケるのだ。


「ウィル。適材適所なのよ。

誰にでも苦手はあるじゃない?

それに、食器を割りすぎなのよウィルは。


何個あっても足りないわ。

無駄な出費だと思わない?


客と酒を飲んじゃう時とか特に割るじゃない?

グラスも割り過ぎ。

酔っ払った客も割ったりするけどウィルが一番、割ってる自覚を持ってね。」



そう追い討ちをかけるとウィルが怒り始めた。


「自覚はしてるよ。

だけど、そんな言い方しなくても良いだろ。

ローズが、優しくないっ。

酷すぎる〜〜〜っ!」


と、泣き真似をし始めた。


はぁ〜っと呆れて言葉を出そうと思った時。

後ろから声がした。


「まったく煩くて寝られやしないな。

何を遊んでんだ。」


振り返ると、ベルナルドが居た。

しかも、上半身裸でだ。


「ベル。煩かったのは謝るけど…。


何で上半身裸なのよっ!

しかも、それキスマークよね?

如何にも、してきました。みたいな感じで部屋から出て来ないでくれるかしら?

それに、防音にしてるはずだけど。


ほんと、何なの?

ベルもエリーも、エデンに住み始めてから色気が増してない?


ダダ漏れてるからねっ。」



そう言って、顔を晒すとウィルが


「おいっ、ローズ?

ベルに色気感じて興奮してないよな?

怒るよ?俺だけにしてよね。


ベルも、そんな格好でウロウロすんなよ。

なんか飲み物でも取りに来たんだろうけど服は着て降りてこいよ。」


何言ってんだって顔をウィルに向ける私と

ニヤけるベルナルド。


「悪い悪い。

まだ片付け終わってないのかよ。

喉が渇いたから水を取りに来たんだ。


今度から気を付けるよ。

ウィルだって、たまにセクシーな姿でウロウロしてんじゃね〜か。

お互い様だと思うがな。」



そう言って、水と酒を持って部屋に戻って行った。


それを見届けた私は


「ねぇ〜、ウィル。

きっちりと決まりを作りましょ。


ココには私と、エリーが居るのよ。

自分のパートナーじゃない男の破廉恥な姿は流石に見たくないわけよね。


目のやり場に困るのよ。


ウィルも気を付けてね。」



そう言う私にウィルは疑う様な視線で見てくる。


「ローズ。ベルに色気を感じてるんだよね?

そんな目で見てたんだ〜。

ベルを男として見てるの?ねぇ〜?

妬けるんだけど。」


問題そこですか。と呆れながら


「妬き持ち妬かれるのは嬉しいけど。

そうじゃなくて、あの二人がココに来てから気兼ね無く愛し合ってるせいか、急に色香みたいなものが出てきたと思わない?


流石にノワール家で、堂々とイチャイチャしたりは無かったじゃない?


それが今では、恥ずかしげもなく堂々とイチャイチャしてるし。

ベルって元気よね。

完全に普通の人間の心を持ったって感じなのかしら。

良い事なんだけど、初めての恋の炎は燃え上がって消えないのかしらね?


問題は、お手本がウィルだって事よ。

自覚してね。」


それを聞いたウィルは


「確かにね。

最近は、特に人間味が出てきたよね。


良い事なんじゃないか?

あっちこっちフラフラしてる訳じゃ無いんだし。

ベルは一途らしい。

俺が見本じゃダメって酷くない?


それに俺もだよ。

ローズだけだから、よそ見はしちゃダメ。

俺だけ見ててね。

アイツらに負けない様にイチャイチャしなきゃな。」


えっ?そこ競う所か?と呆れてしまう。


サッサと洗い物を済ませるわよと二人でやる事にした。

案の定、グラスを割ってたが大目に見た。

何か言うのも、めんどくさくなったからだ。


全ての片付けを終えると、二人でワインを開けて飲んだ。


仕事終わりの酒は美味いっ。

店のカウンター席でワインを飲みながら一日を振り返る。


「今日さ、依頼が来たんだ。

伯爵家の婦人が使用人を通して依頼してきたんだけど、当主の浮気を疑ってるらしいんだよ。

調べてくれないかってね。

保留にしたよ。まず、相手が居たとしてどーするんだって話だ。


離縁なんて馬鹿な事をするとは思えない。

浮気してたとしても、普通は目を瞑るだろ?

跡取り問題なら男の隠し子がいないか調べるだろ?


わざわざ依頼してくるなんてね。

妾が居たら、始末してくれなんて言いかねないと思ったんだよね。


ローズは、どう思う?」



確かに、男社会の国だ。

そして貴族は階級などをステータスにしている。

伯爵夫人として何不自由なく暮らしてるなら他に望んではいけない。

女の役目は跡取りとなる男児を産む事。

それに、離縁などしたら腫れ物扱いだ。

当主が外で女を作ろうが、見て見ぬふりが淑女の在り方かも知れない。


「そうね。どこの伯爵家なのか詳しく知らないから何とも言えないけど。

跡取りが産めなくて焦ってるとか有るかも知れないわよね?

まだ、平民の女を囲っての遊びなら良いけど。

仮に相手が、何処かの令嬢だとしたら?

まだ、第二夫人的な妾なら良いけど、自分が追い出されたら…なんて危機感を持ってたら?


命を奪ってしまおうとか思うかもしれないわね。

どこの家かは聞いたの?」


そう聞くと、依頼を受けてくれるまでは言えないと代理の使用人が言ったそうだ。



「なるほどね。

しっかりした使用人よね。

それが、正解だわ。


って事は、もう来ないかもね。

他の、金を握らせれば何でもやっちゃう様な所に行くだろうし。


仕事は選ぶんでしょ?

下手な仕事を他の人達にも回せないものね。


貴族も色々よね。

毒殺やら事故偽装やら暗躍する人も居るし、それに付け込み金を巻き上げる奴もいる。


もう、私達が出来る事は見て見ぬフリかしら?

仕事を選ぶってそう言う事だし。

痛い目を見なきゃ学ばない人達は大勢いるのよね。


誰かが代わりにやる事が正義とは限らない。

正義って何なのかしらね〜?


まぁ〜、誰かから見たら私達も充分に悪人だものね。

誰かの秘密を暴いて誰かに売ってるんだから。

それが、情報は相手次第で善にも悪にもなる。


選んでるつもりでも悪の加担に成りかねないからね。


まっ、勝者が正義だから、私達は賭博師って所かしらね?笑えるわ。」


と、笑えば。ウィルが言う。



「知ってるかい?俺達の噂話。

貴族の間では、俺達は好き放題して王に愛想を尽かされた憐れな奴らしいよ。


王家に刃向かう気に入らない貴族を証拠も無く抹殺しまくった悪人で、王の温情で処刑されずに放り出されたってね。


まぁ〜半分は合ってるけどね。

それもあって、汚れ仕事を持ってくる貴族が増えちゃうかも知れないって少しは警戒してるよ。


ほんと、めんどくさい噂が出回ったもんだ。

消えた奴等の話で盛り上がるなんて、貴族達は平和なんだね。

ギスギスしてないだけサイラスは、やり易いかな?」


貴族の社交の場は、大半が噂話だ。

嘘と真実。本音と建前が混ざり合う。


「いい話のネタって事ね。

それにしても今更感があるけど。

それを半信半疑でも信じてココを利用する人が居れば、仕事の出来や信頼度が計れるって奴ね。

この噂の出所の人間は賢いかもね。


そして、何か企んでるとも言えるわね。

関わらないのが身の為ね。


でも、王家出身でも悪さをしたら放り出されるって思わせるのは良い事なんじゃない?


貴族だって賢い奴は平民の弱味に漬け込んで裏で使ってる者は居るものね。

命が掛かってる者が生き延びる為に優秀に動くなんて事もあるでしょ?

使用人を家族の様に大事にする方が少ないのよ。


お貴族様は、自分より下の人間は人とも思ってないなんて普通なのかもよ。

教育でいくら平等を浸透させても本当の平等なんて有り得ないもの。


王家の王の兄って言う事実は変わらない。

血統主義の奴等に利用されない様にしなきゃね。


ウィル、少し警戒しなきゃね」


ちょっと真面目に、そう言う私に


「心配してくれてるの?

ローズが俺を守ってくれる?


なんて冗談はさて置き。

確かに、俺を担ぎ上げて勝利して、こっちこそ正義なんて馬鹿な物語に参加させられたくは無いからね。


はぁ〜、拉致られないように気を付けるよ。」


平民で気楽になんて思ってたけど。

やっぱり王家に生まれた宿命は、本当の自由とは縁遠いのかも知れない。









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