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86 番犬の仕事


サイラスが国王になり

国は表向き、とても平和である。


学校や商人ギルドや孤児院の改善増設を始め

天候で左右されるものへの魔道具の配布など


サイラスが貧民を減らす政策を勢力的にこなしていたからだ。


そして教育面により差別意識の緩和。


しかし、集中して富を集められない事や権力を誇示出来ないと言う事でもあり

欲深い者達や権力主義者などには、その平和が良いとは限らない。


人間とは、清らかなものでもない。

知性や理性がある反面、欲望や本能みたいなものは、その内側に潜んでるのだ。


平和と言う光が輝けば闇が生まれる。


闇は静かに生まれるのだ。


その平和とは

誰の為の平和なのか?


平和と言う概念は人それぞれなのだ。



バランスが大事でもある。

闇にも色々あるのだ。

全てを排除すれば良いと言う事でもない。


闇の定義さえも、それぞれなのだ。


匙加減を間違えば毒薬にもなるので見極めは大事になる。


貧民街は一層されたが、夜の街に姿を変えただけでもある。


私とウィルは、正直に言って

恵まれた世界で生きてきた。


本当の貧しさや貧困を知らない。

貧民街で育った番犬達の考えを聞くのも私達の義務であり仕事だ。


こちらの、押し付けだけではダメなのだ。


貧民街での生活で、どんな精神状況になるのかなど分からないと影の仕事は出来ない。


貴族達の権威誇示は理解出来るので問題ないが

平民の気持ちは想像で理解してはいけないのだ。



闇に紛れる様に、地下や地方で動く組織はいる。

網を掻い潜り、闇取引もある。


その闇でしか生きられない者もいる。


組織にしても、様々だ。


私達、影と協力できる者もいる。


光輝く世界で生きられない者たちの受け皿でもあるからだ。


時に、目を瞑る事もある。


サイラスの言う、皆が夢を描ける世界とは

とても、途方もない事だ。

サイラスが言う夢とは、たぶん自分が恵まれた立場から見る夢だ。


しかし、恵まれていない者が見る夢が

綺麗とは限らない。


そして、恵まれてる者達の欲望は枯れる事がない。

もっともっとと増えたりする。


最近は、サイラスが進める国の政策を聞くだけで

その為に生じるバランスの崩れを正し見極めて手を下すというものになってきた。


影で何をしてるかはサイラスには話してない。


サイラスのお陰で平和だから影は動かなくていいとまで言っている。


理想の国と家族との愛を望むサイラス。

穏便に血を流さず平和な世界。

弱き者が泣かない世界。


とても欲張りで綺麗事なのかも知れない。


綺麗事で掴むには、大き過ぎる理想なのだと思う。


そして、その理想が時に誰かには苦痛なのだ。



遥か遠い昔の魂の記憶が教えてくれる。

それぞれが、望む未来の為の正解を。


だから、私とウィルは影にいる。

サイラスを輝かせ、闇など無いと言う。


私とウィルは夜の闇に消える、番犬と共に。


そして朝には何事も無い様に平和の中に居る。


数の暴力に引き裂かれないように

今度は間違えない。




ある日、ベルナルドが報告する。


「また、あの組織が母親が捨てた子供を買った。

奴隷として他国に売る気なのか。

それとも、夜の秘密クラブ用に育てるか。

個人的な売買か。


避妊具を買えない奴らの拙僧の無さは嫌気がさすな。

孤児院に連れてくより売って金にする。


手取り早い金の稼ぎ方だ。

働き口が増えても、働きたく無い奴はいる。

金に綺麗も汚いも無いからな。


昔は何とも思わなかったけど、今じゃヘドが出るな。

金の為に、子供を産むのかって感じだ。


確かに、事情で子供を育てられずに泣く泣く捨てる親もいるけどな。


人の欲は無限に広がり人も変える。


それと、これは噂だ。

ある貴族が、子供を買って玩具にしてるってよ。


ただの噂だぞ。

まだ、確認は取れてない。


玩具も、どんな遊び方かも分からねぇしな。

継続して調べる。


何も無いのに噂になるとは思えない。

事実で無くても、他の目くらませかもだしな。


ちょっと貴族さんにも怪しい動きがあるかもな。」



私とウィルは渋い顔になる。

子供が犠牲になるのは聞いてて気分は良く無い。


大人になって、堕落した生活を好む人達はいる

そんな世界で生きる方が幸せな者たち。


けれど、子供は選んだ訳ではない。

早急に、手を打ちたい所だ。



「子供が犠牲になるのは腹立たしいわね。

秘密クラブは、自ら選んで働くならいいけど子供はダメよ。

それに、噂が本当なら潰さないとね。

貴族の事になるとサイラスにバレない様に始末するのはしんどいわね。


性的な玩具なのか奴隷の様に痛めつけてるか…。

あ〜、考えただけで抹殺したくなるわ。


まずは、ノアにそれとなく避妊具配布とか何か政策の打診をしましょうか?

金の為に産むなんて奴が悪いのか

買う奴が悪いのか…。


あの組織を潰しても、後から違う組織が生まれるだけよ。


稼ぎ方かぁ〜。

楽して稼ぎたいって人の考える事って

次から次で、イタチごっこね。


需要と供給ならいいけど、子供が巻き込まれるのは許せないわ。」


怒りが込み上げてしまう。

するとウィルが


「そうだね。

子供が犠牲になるのはいけないね。

大人は選べる、だけど子供は選べない。

国で生まれた子供は3歳に魔力量測定で神殿にて把握出来る様にはなってるが

その前と、隠されて囲われてたら分からないからな。


その辺の改善も考えないと次から次なのかもね。



ベルナルド、早急に調べてくれるか。

好きなだけ番犬を使え。」


指示されたベルナルドは静かに消えていった。


二人で顔を合わせて溜息を漏らす。


「ローズ。

大丈夫かい?国の闇は尽きない。

嫌になって無いかい?


僕は、君の為なら影だって辞めてもいいよ。

例え、サイラスの理想の国にならなくても。


僕は、君が居ればどんな国だろうと良いんだ。

君と、君と築き上げた家族だけ守れればいい。


無理しないで。」


そう言ってくれるウィル。

でも、私がそれを許さない。


「有難う、ウィル。

私ね、サイラスにも幸せで後悔ない人生を送って欲しいの。私達の様にね。


ウィルだって本当は、そうでしょ?


私は、ウィルと一緒に居られるから幸せよ。

今日は、ちょっと何も分からない子供が犠牲になってる事に嫌気がさしただけよ。



ウィルと、こうして毎日、隣に居られる。

ずっと一緒。

言葉に出来ない程に幸福なのよ。

だから、他の誰かの幸福の為に動くのも苦ではないわ。」


そう言うと

キスしてくれる。

優しくて甘いキスを。


「ローズ。

君のしたい事を僕はするよ。

僕は、君だけなんだ。

僕の希望は、君だけで他に何もない。

魂の記憶を感じて、ハッキリ分かったんだ。


君の望みを叶える事が、僕の夢。

君の望みを、今度は見誤らない。


君が、サイラスの理想を叶えたいなら

僕も君と共にサイラスの理想を叶えるよ。


きっとベルナルドの仕事は早い。

近いうちに、また闇に紛れる。


噂が本当なら当主だけ消せばいい。

これでも貴族達の事は把握してるつもりだよ

何となく当てはつく。

きっと息子は学校の寮だ、何も知らない。


あの組織は、前から目を付けてた。

残す者は居ない、一斉に消す。


一夜で終わる。

だから、見知らぬ子供達の事で心を痛めないで。


僕のローズ。

影の仕事は、終わったら記憶から消去だよ。

それが僕たちの鉄則だ。


まだ、明るい。

平和を満喫しよう。


たまには、街で買い物でもするかい?

ハンデルンの商店街に新しい店が出来たみたいだ。


見に行くかい?」



ウィルは、とっても優しい。

私と家族にだけは。


それは最近、輪をかけて如実だ。


そして、魂の記憶を感じて以来

ウィルは私との時間を最優先する。

他の事は、どうでも良いかのように。


私も、それは一緒なのかも知れない。

魂の記憶の後悔や想いは今も私達に刻まれてる。


今度こそ、間違えない。

そう強く思ってしまう。



「何の店?私、聞いてなかったわ〜。

見に行きたいわ。私たちの街だもの。

最近、暫く行ってないものね。

何を着ていこうかな〜。

この前、ウィルが買ってくれたワンピースにしようかな〜?

ウィルは、何着てく?

色を合わせたいわ。

ねぇ、一緒に選びましょう。

さっ、来て来て。」


そう言って立ち上がりウィルを引っ張って行く。

先程のベルナルドの話が無かったように。

仲の良いだけの夫婦に戻るのだ。


引き摺らない。

決めたら動く。

手短に終わらせる。

そして忘れる。



それが番犬。

それが影。

それが私達の掟。










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