84 契約継承と因縁
一年と少しの時が流れ
王位継承の義と称した一大イベントが執り行われた。
サイラスが新国王となった。
女神アルティア直々に新旧交代の義が行われて、その様子は各地の巨大モニターに映された。
国中で、お祭り騒ぎになった。
女神アルティアが宣言した後の天から七色に光る粒子が国を覆ったのは幻想的だった。
皆に御披露目する表向きの王位継承だ。
本当の王位継承は女神アルティアの契約を継承する事、王冠は飾りだ。
サイラスは、女神の契約継承を済ませる事となる。
これは、本来なら新旧の王二人だけで行われる訳だが、なぜか女神に私とウィルも呼び出された。
城の地下。
地下とは思えない空間は別次元の様だ。
本来なら、王しか立ち入れない。
女神アルティアは、私達が到着するなり
『まずは、契約継承しましょうか?
オリバー、サイラス。
向かい合って立ってくれるかしら。』
向き合う二人に近づくと
眩い光と共に陣が浮かび上がる。
そして眩しく光輝いたと思ったら
『はいっ。終わりです。
オリバー。御苦労であった。
これからの余生を楽しむのですよ。
サイラス。これから宜しくね。』
アッサリなのだ。
サイラスも、これで終わり?って顔をしてる。
『さっ、話はココからよ。
サイラス、ウィリアム、ローズマリー。
貴方達に、話したい事があるのよ。
オリバーは、もう大丈夫よ。
サイラスを通じて、また会いましょう。』
その言い方、義父が邪魔みたいじゃん。
義父は、はいはい。と帰って行く。
慣れた感じだ。
すると、いきなり目の前にテーブルとソファーが現れたと思ったらテーブルの上にワインが現れた。
『座って。少し長くなるからね。』
そう言って私達に座るよう促す。
女神の乾杯の合図でワインで喉を潤す。
『貴方達の因縁についての話よ。
まずは、この国の始まりの物語は知ってるわよね。
ある兄弟が力を合わせて、この大陸をまとめ上げ
二つの国を作った話よ。
この国の初代国王と、今は無き国の初代国王。
でもね、この兄弟には末の妹がいたの。
何となく想像出来た?
その魂たちが貴方達。
ローズマリー、貴方は仕組まれてココに転生したんだと思うわ。
私は女神だけど、大いなる神では無い。
全ては知らない、私は一部に過ぎないから。
ウィリアムが、この国の初代。
サイラスが、今は無き国の初代。
そして、その妹がローズマリー。
それぞれの魂よ。
ややこしいから、今の名で呼ぶわ。
ウィリアムの魂に私の加護を与え
サイラスの魂に精霊王の加護を与え
二人の兄弟は、大きな力を持ったわ。
私と契約したウィリアムの魂が
私を女神アルティアと名付け、この姿を想像した。
でも精霊王の名付けと姿を想像したのはローズマリーの魂なのよ。
精霊王が興味の対象としたのはローズマリーの魂だったからね。
けど、ローズマリーの魂は契約は拒んだのよ。
いや、正確には二重契約なのかしらね?
サイラスの魂とも契約したの。
それがローズマリーの魂の望みだったの。
それから、私達はそれぞれ
今の今まで、この名と姿に執着した。
本来なら、契約者の概念が私達の姿を形取る。
その時々で、変えられるのよ姿なんて。
けど、私も精霊王も変えなかった。
執着したのよ。
私はね、転生しても貴方達が、あの人達の魂だと分かるのよ。
それが私に備わる能力の一つだからね。
けど精霊王は人間を輝きで見てるのよ。
だから、分かってないわ。
あの兄弟の妹の時の魂の輝きと
ローズマリーの魂の今の輝きは違うもの。
なのに、精霊王はローズマリー貴方に惹かれた。
因縁なのかもね。
その前にも、貴方は何度かこの世界に転生してるのよ。
けど、その時は精霊王は反応さえしなかった。
なのに、今回は興味を示したのよ。
理由は分からないわ。
貴方達が、遠い昔に兄弟として生まれ
転生を繰り返して、今ココに居る。
こんなに交わるのは、初めてよ。
3人の兄弟達は、理想があった。
その理想の為に力を求め、私と精霊王が反応した。興味を持ったのよ。
力を与え、3人の様子を楽しんだ。
無秩序な世の中よ。それは力で勝ち取らないとね。
理想の為に悪に身を投じる時もあったわ。
そして築き上げた。
自分達の国を。
兄と弟の理想のズレに気が付いた。
対立ではなく分ける事にした。
だから、国が二つになった。
末の妹は、中立を保ったわ。
何故なら、妹に理想はなかったの。
ただ、兄2人の夢を一緒に叶えたかっただけ。
二人の間で、きっと苦悩したでしょうね。
兄弟以上に想う上の兄と
魂の契約で繋がった下の兄と
二人共に、形は違うが愛があった。
その為に、翻弄したわ。
そして命を落とした。
そしてまた、兄弟二人も敵対は無い愛があった。
創りたい国が途中から違っただけなのよ。
時に嫉妬や憎悪に身を焦がした時もあるけど。
違う方向性の国同士が敵対してしまうのが世の常かも知れない。
国王にも止められない大きな流れの渦が出来てもおかしくない。
人間というのは、数に優るものがないのよ。
歴史とは時に無惨で残酷よ。
理想の国を創るのに人の命は儚すぎる。
私は、あの人が描いた夢を見届ける為に存在しているの。
それが女神アルティア。
精霊王は、彼の事を考えたら分かるだろうけど
興味の対象が居なくなった世界には興味を示さなかったわ。
精霊王が興味あるのは魂の輝きだけよ。
世界なんて関係ないの。
貴方達が、この時代に再び降り立ち交わった。
精霊王まで、揃ってね。
私は、長いこと
この世界を、この国を見てきたわ。
運命の悪戯なのかしらね。
あの頃を思い出すわ。
ウィリアムがローズマリーに惹かれるのも無理はないわ。
初代はね、妹を愛してたわ。
家族以上の想いでね。
お互いに愛してた。
許されざる愛よ。
報われる事など無かったわ。
お互いが内に秘めた。
伝える術も無かったのかしらね。
妹は先に死んでしまったもの。
貴方の魂が何度、転生しても王家なのは
ローズマリーの魂を待ってたのかしらね?
転生の条件は私にも分からないからね。
兄弟愛が強かった、弟の方は
サイラスと同じよね。
貴方は、ウィリアムもローズマリーも好きだものね。
変わらないわ。
別にね、話さなくても良い事なのよ。
けどね、私の存在自体が貴方達との因縁なの。
なんか、教えたくなっちゃったから話してる。
ウィリアムが今世で全てをやり切れる様に。
サイラスが、兄弟と共に当初、夢見た国に出来るようにね。
ローズマリー。創造神が、貴方の元へ精霊王を差し向けた。
その意味は分からないわ。
ただの気まぐれかも知れないし、計らいなのかも知れない。
ローズマリーではなく、精霊王への計らいかも知れないしね。
でも、何か仕組まれたのかな?って思うわよね。
運命なのかな?
それとも奇跡かしら?
その意味合いは、貴方達が決めるのよ。
全てが、交わった。
それを、どうするかも貴方達次第なのよ。
私達、聖霊さえ何かの計らいの中に居るみたいだわ。
正解は無いわ。
ただ悔いを残さずにね。
それが私からの、お話。
ウィリアムは眼を使える様になった。
私の加護を受けてサイラスは何を開眼するかしらね?
それは、これからのお楽しみかしら。
益々、これからの貴方達が楽しみよ。
ねぇ、ウィリアム。
私の愛した魂さん、貴方の命の燈が消えた後に私からプレゼントがあるから楽しみにしててね。
貴方の答えが楽しみよ。
サイラス。あの人の祖先で弟の魂なんてね。
今の私の興味は貴方よ。
次の契約継承まで、共に歩みましょうね。
さっ、以上よ。帰るわね」
そう言うと消えた。
女神は、いつも言いたい事を言って消えてしまう。
残された私達は無言だ。
そして急にソファーもテーブルも消えて
私達は、尻餅を付いた。
やってくれたな女神よ。
と思ったが、それぞれに女神の話の意味を考えていた。
私達は無言で別れた。
私とウィルは屋敷に戻る。
沈黙の時が、続いた。




