83 サイラスの決意
散々、泣き喚いてウィルに甘えてたサイラスが落ち着いた頃
ノアが話し出す。
「すいませんでした。
いきなりの事で、頭が回りませんでした。
サイラスが、ちょっと不憫で国王様から直接
話が無かった意図を考えられませんでした。
正直言って、サイラスには早過ぎる気もしますね。
宮廷貴族の一件で、貴族達は震え上がり真面目に領地を運営してる様ですし歯向かうものは出ないと思いますが。
いささか早慶かと。
一年くらい、待って頂けませんか?
国王としての心得を叩き込む時間を下さい。」
ノアとしては、完璧な完成度に持っていきたいのだろう。
続けて、レオが話し出す。
「悪いな。俺も国王に怒りが込み上げた。
理由なんて考えなかった。
サイラスは義弟だ。いつ国王になろうが
俺がサイラスを守る事に変わりは無い。」
レオの考えは単純だった。
話を聞いてたウィルが二人に言う。
「そうだな。
2人共、サイラスの事を思ってくれて感謝する。
ノアの意見はごもっともだ。
中身はガキでも、表向きは立派な国王になって貰わないとな。
ノア、教育を頼めるか?
アリアナの教育も頼む。
子供を産んだばかりなのに母上と同じく子供と引き離してしまうかな?
その辺は、ちゃんと考えなきゃな。
俺達の様な想いをさせては可哀想だ。
レオ。
これからも今まで通り頼むな。」
そう言ってから、サイラスに向かって
「ほらっ。いつまで甘えてる。困った弟だ。
1年間の猶予をやる。
完璧な仮面を付けてみろ。
出来るよな。
辛くなったら、いつでも甘えに来い。
どうせ、アリアナの前でもカッコつけてんだろ?
オマエは不器用だな。
オマエが、父上の様にならないか心配だ。
ちゃんと家族と向き合え。
オマエが欲しかった家族の愛を自分の家族には与えるんだ。
カッコつけてる場合じゃないぞ。
分かったな。
愛し方が分からないなんて言うか?
オマエがして欲しかった事をすれば良いんだ。
沢山、愛してやれ。
雑務は、まだ父上の周りの奴らが引退には早過ぎるんだ、オマエが使ってやれ。
父上の様に仕事に逃げるなよ。
ローズ〜。
口の中が痛い。俺の顔、腫れてない?
兄に向かって本気で3発も殴るとはな
手加減を知らないのか?
痛いっ。ローズ〜ヒール掛けて。」
今度は、ウィルが甘えだした。
「まったく、兄弟喧嘩も程々にして欲しいわ。
兄弟揃って甘えん坊とか、そっくりね。
アリアナが見たらドン引きよ。
絶対に見せられないわ。」
そう言いながらヒールを掛けた。
サイラスが泣き腫らした顔で
「ローズマリー、アリーに見せてたまるかっ
アリーに言ったらブッ飛ばすぞ。」
可愛くないわねっ。と思って。
「アンタね。ウィルには甘えるくせに
私には当たり強いわよね?
義姉に対して酷くない?
少しは可愛げ見せなさいよ。
それに、よくもウィルを殴ったわね。
いつまで、ウィルに抱き付いてるつもり?
早く離れなさいよ。」
そんな私とサイラスの言い合いを楽しそうにウィルがニコニコしてる。
嬉しいのだろう。
このパターンが、いつもの事だ。
ノアとレオが呆れている。
このままの顔では帰れないとサイラスがウィルから離れない。
「サイラス。
帰って、オマエが父上に一年待ってくれと頼め。
たまにはサイラスの方から会いに行け。
本当は、父上もオマエと仲良くしたいんだ。
素直になれ。
俺にも甘えられる様になったろ。
早く、オマエが離れてくれないとローズが妬いてしまうだろ。
俺はローズが大事なんだ。
あまり長くオマエとイチャつくのを見せるのは可哀想だ。
ノアとレオも早く帰りたいと思ってるぞ。
仕事も途中だろう。」
そう言うとサイラスは
「俺が邪魔ってこと?
ローズマリーとは毎日、一緒だろ。
たまには、いいだろ。」
彼女かっ!て突っ込みたい。
サイラスのウィル大好き度が半端ない。
年々、増してる様に思うのは気のせい?
呆れて黙ってるとウィルが
「ほら。ローズが呆れちゃったぞ。
どうした?今日は随分と甘えるな。
どうせ、ローズに嫌がらせしてるんだろ?
オマエは、ローズにライバル心がある様だ。
どうしてだ。」
ライバル心??
そうなの?ウィルが好き過ぎる訳じゃ無い訳?
「だって、ローズマリーはズルいんだ。
昔は、城に来ても鍛錬ばっかで兄貴にも父上にも見向きもしなかった癖にさ
学園の事件以来、俺を差し置いて兄貴も父上もローズマリーばっかで、頼りにされて…
なんかムカつくんだよ。
俺が欲しい物をアッサリ持ってくんだ。」
サイラスが私を睨んでる。
そんな風に思ってたのか。
「サイラス。
謝んないわよ。アンタ、覚えてる?
ウィルが、眠りから醒めてから私がウィルのお見舞いに行った日の事。
貴方、私に言ったのよ。兄上を頼むって、自分じゃ何をしていいか分からないみたいな事を言ってたのよ。
貴方は、あの頃ウィルから逃げてたのよ。
向き合うのが怖くて。
甘えるばかりで受け入れる事も出来ない。
アンタは私に文句いう資格なんて無いわよ。
ガキで居れば、誰かが構ってくれる、愛してくれるとでも思ってる訳?
甘やかされた、お坊ちゃん。
アンタは、ずっと甘やかされてたのよ。
愛されてなかった?ふざけないで
アンタ程、愛されてる奴は居ないわよ。
王子に生まれて、何の重圧もないまま
あの日まで生きて来れたのは何故だが考えてみなさいよ。
甘ったれも程々にしなさい。
たまに、寄りかかるのも弱音を吐くのも良いわよ。
でもね、アンタの覚悟はその程度なのかって思っちゃうわ。
ガキ扱いが嫌だと言うなら
対等に歩みたいと言うなら
事後報告は嫌だと言うなら
シッカリしなさいよっ!
ウィルも義お父様も、アンタに甘いから
私が代わりに言ってあげる。
ピーピーほざいてないで
さっきと、国王様に俺に任せろってカッコつけて親離れして来なさい!
俺は、アンタみたいに不器用な愛し方しか出来ない国王にはならないってね。
ありがとうございました。
って強がって来なさい!
本当に、昔 私がアンタを国王に向いてるとか思ってたなんて買い被り過ぎたわね。
サイラス。
分かったっ!
さっさと帰んなさい。」
逆ギレの如く、サイラスに対しての怒りを吐き出した。
ポカンとするサイラスと
ケラケラ笑うウィルの対照的なことよ。
暫く、ポカンとしてたが
サイラスは、徐に立ち上がり
「義姉貴。悪かった。
八つ当たりしてた。
ローズマリーに甘えてた。
オマエも、昔は自由にガキしてたのに
一緒に鍛錬してた頃のガキのままで止まってるのは俺だけだな。
でもさ、俺はガキなんだわ。
そうやって、その度に怒ってくれ。
皆んな、俺を甘やかすんだ。
子供の頃から、ずっと。
俺に、分からない様にな。
知ってたか?
俺さ、きっとオマエに憧れてたんだ。
一緒に本気で剣を交えてくれたのは
殺す勢いで俺の相手してくれたのって
オマエだけだ。
アレが初めての恋だったと後になって気付いた。
女として、見てなかった気になってただけだ。
そんな女が兄貴と結婚してくれて良かったよ。
オマエは、昔から
いつだって本気で生きてんだよな。
俺も、本気で覚悟を決める。
ありがとな。
兄貴、ごめんな。 帰るよ。」
そう言うと、ノアとレオに目で合図して消えて行った。
初恋だった?
なんだ、その急なカミングアウトは。
ウィルが、微妙な顔してますけど〜。
「へぇ〜、サイラスの初恋ねぇ。
ローズ、さっきの本音?
違うよね?」
ウィルには何か視えたのか。
惚けられないかな。
「何か視えた?
サイラスってさ、ウィルに似てるよね。
人の為になる自分になってる様な所ある気がする。
意図して無いのかもなんだけど…。
子供の頃は、サイラスは自由だったけど
影で努力してたのよね。
無駄な派閥が出来ないように、兄を立てる為に筋肉馬鹿のフリしてる様な気がしてた。
鍛錬もそうよ。
みんな、サイラスの相手は手抜きって言うか本気で相手にしてないと言うか。
本気で、やり合ってたのは私とレオ様くらいかしら?
サイラスってムカつくじゃない?
叩きのめしてやりたくて。
甘えたいから、弱い自分になるとか
愛されてるか確認するようにガキで居たり
まるで、ウィルの様に見えるけど
気のせいかな?」
そう言いながらウィルに視線を向けて笑うと
「まぁ〜、兄弟だし。
その節はあるかもね。
けど、僕と違って意図せずやってるかもよ?
天性の才能かもね。
それに、サイラスの罠にハマってるのはローズの方かもよ?
僕には甘えたくて
君には怒られたいのかもね。」
そう言って笑う。
やっぱりサイラスはウィルに似てるんだ。




