64 時が流れるのは早いもので
私とウィルの新居が完成した。
王都の貴族のタウンハウスエリアにありながら
どこか別荘の様な佇まいの屋敷は
パーティーホールも無い。
使用人の居住区も屋敷の中だ。
素敵なサンルームの様なバルコニー付きのサロン
小さな図書館の様な書斎
私達の寝室と、それに続き部屋の様にお互いのプライベートルームを両脇に配置し
まだ、いない子供部屋や客室が数部屋
外には露天風呂。
花を育てるガーデンハウスに、お茶が出来るスペースも作った。
庭園には、薔薇園。
とっても素敵な二人の家が広がる。
ベルナルドの仕事は完璧だった。
いや、それ以上かも知れない。
イメージだけで、素敵な家具まで揃え
随所に、気遣いが感じられた。
エリアーナの他に使用人は少ないが、全てを補うだけの能力のある者が集められて居た。
何かと忙しく自分達で探さなかった
孤児が3人居た。生意気そうな目をしてる。
当分は、ベルナルドが面倒見ると言っていたが
普段から子供の様に接するから最初は食事も子供達と共にすると決めた。
結婚式は三日後だ。
使用人達を先に住まわせる事にして
私とウィルが、ココで寝るのは式が終わってからと言う事になっている。
外から屋敷を眺めてウィルが
「やっとだね。
あぁ〜、嬉しいなぁ〜。
僕の夢の一歩だよ。
あと、3日したら君と夜を共に出来る。
僕、良く我慢したよね〜。
褒めて褒めて。」
はしゃぐウィルが可愛くて頭を撫でちゃう。
あれから、周りからの押しで
サイラスとアリアナは、段々と良い感じになって来たらしい。
最近は、二人でお茶をするまでになったとか。
レオは、少し寂しそうな顔をしてるとノアの報告書に書いてあった。
ちょっと、幸せに浸って居ると
ベルナルドが真面目な顔をして
「少し、お時間を頂けますか?
お話が有ります。」
そう言って、書斎まで私達を促して話始めた。
「向こうでの最後の仕事をしたら
俺は、ウィリアム様。貴方の番犬です。
前の主の命令は聞きません。
ハンデルンの領主もベルナルドと言う名も
如何様にもして下さい。
俺は、貴方様に忠誠を誓う。
ジョン様に支えながら貴方様を俺は見て来た。
確かに、最初はリュカ様が受け継ぐと思っていましたのでリュカ様を影で観察してた。
近くには、いつも貴方様が居ましたからね。
初めて、お会いした時
俺が番犬だと分かったのは
俺が、影で観察してたのを分かってらっしゃったのですよね?
学園の件は、他の仕事をしてたので気付く事が出来ず申し訳ない。
ハンデルンの時も、貴方様とローズマリー様を
見極めておりました。
支えるに値するのか?
やはり、最初の感は間違い無かった。
我が主は、貴方様だけです。
ウィリアム・ノワール様。
最後の汚れ仕事は、主様に引き継がない様に
キッチリ終わらせて来ますので三日後
ココで、また会いましょう。」
そう言うと跪いた。
ウィルが、驚いた顔で言う。
「なんだ、いきなり畏まって。
オマエが、そんな態度なのは調子が狂うな。
辞めてくれないか?
忠誠心は行動で示せば良い。
オマエは、これから僕の家族だ。
最後の仕事が終わったら
その後の汚れ仕事は一緒にやるぞ。
一人で背負わせやしないよ。
僕は僕のやり方でやる。
今までの、やり方は捨てろ。
僕もオマエも同じ影だ。
そしてローズもな。
番犬共は、運命共同体だ。
誰かを切れば良いなんて思うなよ。
誰かの失敗は、皆んなでカバーする。
それが、僕のやり方だよ。
分かったかい?」
そう言うウィルにベルナルドは頷き
「仰せのままに。我が主。」
そう言い残し、消えて言った。
最後の仕事とは、何なんだろう?
「ローズ。
式が終わったあと、一週間は監禁する約束だったけど…。
ちょっと、お預けかもね。
死体が見つかっちゃうかも。
アイツの事だから、数日は発見されない様に上手くやるだろうしね。
父上たちは、最終手段に踏み切ったらしい。
怖い人たちだ。
後処理は、どうする気かな?
商会が慌ただしくなるね。
ハンデルンは、どうしたものかな?
当分は、ベルナルドに男爵として頑張ってもらうつもりだったのになぁ。
考えなきゃならない事が増えそうだ。
子供達と遊ぼうと思ってたのに。
一緒に、考えてくれるかい?ローズ。」
監禁の話、覚えてたのねと苦笑いしそうになるが
実現しないで済むと思うと安心した。
「お父様が最終的にって言ってたものね。
尻尾を掴みきれなかったって事よね?
ちょっと、確認した方が良さそうね。
家に戻ってアンに確認するわ。
ねぇ。ウィル。
私達は、義お父様の為に動く訳じゃないわ。
サイラスの為に動くのよ。
現国王の為に動くのは、お父様。
商会の在り方なんかはサイラスの意見を聞かなきゃね。
私は、お父様達の動きを確認してくる。
ウィルは、サイラスとノアに接触して
どうしたいか詰めて来て。
結婚式くらい、穏やかに迎えたいわ。
そうでしょ?」
そう言うと
ウィルが笑顔で
「やっぱり頼もしいね、ローズは。
そりゃ、初夜は誰にも邪魔されたくないしね。
万全に迎えないと。
新居を堪能しようと思ったのに父上にも困ったもんだ。
サイラスの所へ行くついでに
嫌味を言ってくるよ。」
そう言って、抱き寄せられた
そして耳元で囁かれる。
「もう少しでローズの全ては僕のものだ。」
その後、二人は別れた。
私は自分の家に、ウィルは城に。
アンと母を呼び付け話を聞いた。
ある伯爵家と子爵家の現当主を暗殺する事。
息子の方は、親達の悪巧みを知らないらしいので家ごと潰す事はしない事。
結婚式には出席する予定の2人なので
終わるまでは、発見されない方法を取る事。
そして、今日 暗殺を決行する事。
2人が、ある街で密会するらしく別邸に集うらしい
盗みに入った強奪犯に殺されていたと言う状況を作るらしい。
この別邸には、使用人も置いていないらしく密談だけの為にある様な屋敷らしいのだ。
結婚式にも帰宅せずなら、家族が探すはずだ。
そして、ウィルがベルナルドにわざわざ
誰かを切れば良いなんて思うなよ。と言った意味が分かった。
番犬の中から、犯人を仕立て上げるらしい。
本人も了承しての事ではあるが
そんな、やり方なのかと割り切れない気持ちになる。
ウィルは、いつから番犬の存在を知っていたのか
そんな番犬の実態を何処まで知っていたのか
ウィルは、国王も父も知らぬ内に
あの目で、全てを見ていたのだろうか?
あの星屑の瞳。
たまに全てを見透かされてる気がする時がある。
そんな事を思いながら
母に私は問うのだ。
「お母様は、そのやり方で割り切れるのですか?」
静かに母は答える。
「あの人が、決めたなら。
私は、何でも割り切るわ。
それが、私の覚悟ですのよ。
ローズマリー。
貴方も、そうでしょ?」
そうか、私は
この母の娘なのだ。
惚れた男の為に生きるのだ。
「そうですわね」
そう言って母に微笑み掛けると
母も微笑む。
「お母様。
重荷が外れたら本当にしたい事をして下さいね。
後は、私達が引き継ぎますから。」
そう言って家を後にした。
やっぱり、ウィルを心から愛してる。
誰も切り捨てないとは、難しい事だってある。
けれど、ウィルは決めたのだ。
番犬達と共に生きる事。そして守る事を。
だから、彼は見捨てないし切り捨てない。
綺麗事かも知れないが、手を汚しながら実現したいのだ。
そう。相反する矛盾を全て回収するように。
私は、本当の意味で理解出来て居ない、いつも。
そして、後からウィルの凄さを知る。
私が頼りになるなんて嘘。
彼が、いつだって先を読む。
守られて居るのは私なのだ。
なのに、私に守りたいと思わせるのだ。
なんて憎らしくて愛おしいのだろう。




