60 リュカの希望
学園長の引き継ぎは2日に掛けて行われた。
運営費や雑務の確認が主で教育内容などはサラッと終わった。
職員名簿や、生徒名簿
その他の書類など様々なものに目を通した。
当たり障りなく事務的に終わった。
在籍中に、改善点なども見極めて居ただろう。
途中、色々あったが…。
個人的に気になる事柄などの書類は別にしたり
引き継ぎ中もウィルの動きは沙汰がない。
一緒に手伝ってと言ってたが
ウィル一人で、淡々とこなせる。
本当に私、必要ですか?って感じだけど
居て欲しいのだろう。
基本的に、学園長と言っても雑務がメイン。
教師と職員が居れば、学園は廻る。
合間をぬって、お兄様と会う事にした。
スペンサー家のサロンで話す事にする。
家に着いたら、ルナ様も一緒に居たので
婚約して、全て共有したいと言う気持ちの表れなんだと思ったりした。
「ご機嫌よう。ルナ様。
ちゃんと、お祝いしてなかったわ〜
ご婚約、おめでとうございます。
義姉が出来るのは嬉しいわ。
お母様も、私と違って素敵な淑女が娘になって喜んでるわ。」
お祝いの言葉を贈るとルナ様は、とても穏やかな笑顔で御礼を告げた。
すると兄が苦笑いして言う。
「マリー、母上が思ってる事
気付いてたんだな。」
当たり前だ。
ジャジャ馬令嬢などと噂されてた私を鍛え直すと最初は頑張ってた母が
途中、諦めたのは知ってるが本当は、ルナ様みたいな清楚な女性らしい娘になって欲しかったに違いないのだ。
「そりゃね…。
私が、こんなんだからね」
と自虐的に言うと
「ローズマリー様は、そのままで素敵ですわ」
と、ルナ様が言ってくれる。
「ルナ様。
これからは、私も義お姉様と呼びますので
私の事も、マリーで良いですわ。
家族になるんですもの。」
そう言うと、嬉しそうに笑う義お姉様は
水の女神の様に美しい。
ウィルも兄と義姉に、お祝いの言葉を贈り
お茶が用意された席に皆んなで座った。
「今日の本題は、お兄様の御心を聞きたくて時間を作って貰ったの。
お兄様は、今後の事を考えると思いますが
本心が聞きたいのです。」
そう切り出すと兄は少し黙って
姉を見てから話し出す。
「これからはルナと、この家を守る。
スペンサー家の嫡男として領地の運営をしっかり学ぶよ。
昔は、父の様に王の側近を目指してたけど…
ルナとの時間も大切にしたいしね。
俺がしっかりしないとルナの負担が増える。
あまり、仕事は増やしたくないかな?
魔物の森を管理しながら魔石の管理に
魔道具の開発なんかして行ければいいかなって。」
兄も、ウィルと似てるのね。
義姉と、暖かな家庭を作りたいのだろう。
「なるほど。
義姉上と、あまり離れたくないと言う事か。
困ったなぁ。
ちょっと、学園長の補佐をして欲しいと思ったのだがな。」
そう試す様に聞くウィルに兄が
「他の事をするのに、仕事を押し付ける気だろ。
何年ウィルの側に居たと思ってる。」
苦笑いしながら、そこまで言うと
一息ついて
「また俺を側に置いてくれるのか?
お前を守らせてくれるのか?」
そう問うのだった。
「もう、僕を守らなくていい。
共に、歩いてくれるか?」
そう微笑むウィルに兄は笑顔で答える。
「定時で帰るけどな」
あの一件以来、あんなに一緒に居た2人は
殆ど、二人で顔を合わせなくなって居て
どこか、ぎこちなさがあった様に思う。
だけど、幼い頃からの信頼は損なわれて居ない。
二人には二人だけの絆があるのだろう。
「じゃっ。決まりね。
義お姉様との時間は損なわせないと私が約束するわ。
ウィルが無理難題を押し付けても
ちゃんと、帰れるようにするわね。」
と私が言うと
「リュカが仕事を放り投げて帰ったら
頑張るのは君だけど。」
と、ウィルが揶揄うように言ってくる。
「なんで私?ウィルでしょ?
ちょっと、私にも押し付ける気なの?
じゃ〜、お兄様が無理して早く終わらせれば良いのよ。」
そんな私達の話を聞いて兄は呆れた顔で
「最初から無理難題を言わなきゃ良いだろ」
と、溜息を吐く。
そんな私達を、クスクス笑いながら見てる義姉。
これから、家族になっていく人達。
こんな時間が、ずっと続けばいい。
そう思うのだった。
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【リュカ視点】
ウィルとマリーが帰って行った。
騒がしい奴らだ。
ルナが、二人が帰った後に嬉しそうに
「義お姉様って言われるのが、嬉しい」と
本当に幸せな顔をして微笑んでる。
この、笑顔を守りたいと思う。
父に、真実を聞いた。
王の影という存在が居る事、その役目をしてるのが父だと言うこと。
それに次はウィルが、その役目を負うこと。
ウィルは、もう守らなくて良いと言った。
ルナに話せない俺が、心を痛めないように気遣ってくれてるのだろう。
ウィルは、そういう奴だ。
全て自分で背負おうとする。
彼の力になりたい。
けど、昔の様に命を掛けられはしない。
ルナに哀しい顔をして欲しくない。
彼女との未来が1番大事だ。
マリーに任せよう。
アイツが支えるだろう。
俺は俺なりに、ウィルの助けになればいい。
共に歩むとは、そういう事だよな。
そうだろ?ウィル。
彼が、サイラスの為に負う事になる事柄を
他の煩わしい物が邪魔にならぬ様に支えよう。
煩わしい雑務は、俺が引き受けよう。
大切な友の為に
そして義弟の為にな。
そっと、ルナを抱き寄せて呟く。
「幸せになろうな」
昔、命を掛けて守って行こうと思った相手はウィルだった。
でも、今は
ルナが居る未来を、何よりも守りたい。
誤字報告、有難う御座います。
これからも宜しくお願いします。




