59 我慢は続くよ何処までも?
「我慢出来ない」
そう切なそうに言うウィルが
愛おしくて許したくなるが…。
「ウィル?
急にだし… 心の準備ってものが…」
虐めたくもある。
暫しの沈黙。
「あぁ〜〜〜っ!」
と苦しそうに叫んだと思ったら
私から離れて大の字にベットに倒れ込んだ。
男って大変ね…。
と、思いながら苦笑いしてしまう。
そのうち、大きな溜息をつき
「ローズ〜。
性欲と闘うのも辛い。
君を大切にしたい気持ちと性欲と
おかしくなりそうだよ。
平然としてる君が憎い…。」
これは、物理的接触は控えなきゃね。
ササっとソファーに移動する。
「逃げるなよ〜。」
と、上半身を起こしてウィルが拗ねてる。
こんなウィルは、可愛い。
「だって、我慢するんでしょ?」
と、意地悪く言うと。
「もう、書類だけ提出して、結婚しよ?
式は後でも良いけど、書類は受理してもらお。
ね?ダメ?」
駄々っ子、ウィルだ。
今まで、パーフェクト良い子の完璧王子だった
反動は凄まじいのかも知れない。
国王様も反抗期だって苦笑いしてたしなぁ。
「国王様に聞いてください。」
と、淡々と答えた。
あまり、甘やかすのはよそう。
そして話題を逸らす。
「ねぇ〜ウィル。
学園の改革は追々って言ってたよね?
学園長の代理を任せられる人探して
国を見て回らない?
現状確認と番犬になる子を探しに。
各地の孤児院の現状も気になるし
良さそうな子は引き取って育てましょう?
ウィルの愛しのサイラスの為に。
お兄様って、家は継ぐだろうけど
サイラスの側近にはならないと思うのよね。
お兄様に理事長代理して貰ったら?
元々、お兄様はウィルを尊敬してたからウィルを守りたいって頑張ってたんだもの。
どう思う?」
そう提案すると
「あからさまに話題を変えたな。
確かに、義父上の番犬は街に溶け込んでる情報収集組は、そのまま受け継ぐとして
ベルナルドの様な者は、若い奴をメインにベルナルドにピックアップして貰うつもりだよ。
義父上が引退する時、一緒に引退する奴が出るだろうしね。年齢的に。
孤児院周りは賛成だ。
使用人がてら、教育と魔法に鍛錬を叩き込まないとな。
子育てと一緒か。
それと、リュカか。
リュカが、どうしたいかだ。
強要はしたくないんだ。
この機会に、リュカはリュカの気持ちを大切にして欲しいしな。
僕の都合で巻き込みたくはない。」
そう言いながら、私の隣に座る。
「ウィルは基本的に優しいのね。
お兄様は、がむしゃらに夢中になれるものを選んでしてるだけみたいに思えるのよね?
自分でも、どうしたらいいのか
本当は分からないんじゃないのかしら?
こうなるのが当たり前って生きてきて
夢を描いた事なんて無かったから
夢を見ることさえ分からないのかも。
そんな気がする。」
私の顔を見ながら聞いてたウィルが
「そんな哀しそうな顔するなよ。
リュカと一度、話そう。
近いうち、リュカも自分の家の本当の仕事を聞くだろう。
リュカは、それは継がないにしろ思う所があると思うよ。
学園長の仕事の引き継ぎが終わったら
色々と、動こう。
サイラスとも、落ち着いてちゃんと話さないとな。
アイツの本心も聞きたいしな。」
他人の気持ちは、推し量れない。
そんな気がすると勝手に思ってしまいがちだ。
自分の物差しで…。
だから、会話する。
他人を理解する様に。
この世界に転生して、神や聖霊の領域を経て
前世の記憶を保有する私。
世界は光と闇のバランスで出来ていると聞いた。
陰と陽。
それは人間の本質でもあると思った。
相反する思い。
喜びがあるから哀しみもあり
哀しみを知るから更に喜びが増す。
光があるから闇が生まれる
闇を知った時、光の尊さを知るのか
それとも光の輝きを恐れるのか
光を知った時、闇を恐れるのか
それとも闇の平穏を知るのか
自我の概念によるものだ。
私にとって兄のリュカ
ウィルにとって弟のサイラス
彼等は、何を思うのか?
家族と言う愛しい存在の彼等。
他人事には出来ない。
そんな事を思考してたら
ウィルが
「今、ローズが考えても仕方ない。
いくら考えても今何を思うかなんて
聞かなきゃ分からないんだ。
それより、僕の考えを聞いてよ。
今は、リュカやサイラスの事はいいよ。
僕の方が大事でしょ?
僕が、ずっと我慢してるのに。
君は酷いね。意地悪してるの?
ねぇ?婚姻届け出そ。
王の印を今すぐ押してもらおう。」
話を戻された。
「もぉ〜。
国王様に叱られるわよ。
しかもお父様だって、またブーブー言うんだから
半年後って決めたじゃない?
性欲が我慢出来ないからって言う訳?」
と言って見れば
平然と言う。
「言うけど。」
呆れた…。
最近のウィルは、思った事に真っ直ぐだ。
素直過ぎる。
呆れてると
「こんな僕は嫌い?」
また試す様に聞いてくる。
「ウィル。
直ぐに試す様に聞かないでよね。
好きよ。どんなウィルだって
呆れちゃうくらいに。
でも、我慢できないから早くなんて要求するの恥ずかし過ぎでしょ⁈」
と、言う私に
ちょっと不満げに
「ローズも、僕と同じ気持ちになればいい。」
そう言って、ソファーに押し倒され
熱いキスが降ってきた。
何度も……。
火照る私を、見下ろすウィル
「これで終わりに出来るの?」
そう囁くウィルは、妖艶でエロく美しい。
私はウィルの頬に掌を添えて
「私も貴方の全てが欲しいわ。
でも、まだダメ。
私の愛しいウィル。
楽しみは待った分だけ悦びが増すのよ?」
そう言って微笑むと
溜息をして私から離れるウィルは
「なんて、悩ましいんだ。
憎らしい程に妖艶な顔で微笑むなんて。
君は、そうやって僕を試すんだね。」
項垂れたウィルに
「貴方も私を試すじゃない?
お互い様よ。
ねぇ、ウィル。
女だって勿論、愛する人を求める気持ちはあるわ。
こんなセクシーなウィルを受け入れたいって。
だけど、こうして一緒にいるだけで
満たされて満足しちゃう私も居るの。
男と女の違いかな?」
そう言って笑うとウィルが苦笑いして
「ローズも僕が欲しいって思ってくれてるから我慢するよ。
でも、覚悟しておいてね。
式が終わったら、数日は監禁だから。」
監禁とは物騒だ。
本当にしそうで、ちょっと怖い。
「本当に監禁しそうね…
そういえば。
何も言わずに急に家から消えたのよね?
あぁ〜、アンに叱られるわ〜。
ウィルのせいだからね。
も〜、これから一緒に謝ってよ〜。
お母様の次に、アンの説教は長いのよ。
ウィルが一緒なら少しの嫌味で済むわ、きっと。」
絶望感漂う私に
「ローズ。僕のせいなの?
一緒でも僕も同じ様に叱られると思うけど。
だって、君は僕が急に連れ出したからって言い訳するんだろ?
酷いよね。」
ヤレヤレと肩を竦めるウィルに
「だって本当の事じゃない。
言い訳じゃないわ。」
と、くってかかると
呆れた顔をしながら
「一緒に叱られに行こう。」
と、屋敷に転移した。
案の定
私たちは、正座させられ
アンに、長々と説教されたのであった。




