54 新・ハンデルン
あれから月日が流れるのは早かった。
とうとう、街が生まれ変わった。
ベルナルドの仕事は早かった。
が、自分の事は二の次なのか?
まったく気にしないのか?
屋敷の事はお構いなしだったので、私とウィルで好き勝手に改装した。
街の開発費や屋敷の改装。それに、それまでの町の民に対する保証。
莫大な資金が流れたはずなのに、ベルナルドはいつも涼しい顔だ。
本当に、底が知れない人だ。
街は、予想より遥かに素敵だった。
洗練されながら自然と調和した街。
精霊の光も増して輝いて見えた。
ベルナルドに頼んであった。精霊の光の件は
光が弱まると災害が発生したらしく
街に小さな教会を建てる事にし、定期的に町を浄化する事にした。
ガロを呼んで聞いてみたが、精霊の力も関係あるが、自然の摂理もあるから整備は念の為に必要だろうとの事だった。
商店街はメイン通りは、お高めの店で固めた。
テラス席がある店舗や店先に商品を出すなど
見た目を華やかにした。
裏路地の店は、庶民派の店がメインだ。
果樹園は、収穫時期に収穫体験しながら食べられる体験型にしたり
採れたて野菜などの販売。乳搾り体験など。
考えられるものは取り入れて様子を見る事にする。
ジャムやプリンなどお土産なども作り。
苦労したのが水着だ。
生地を作ってもらう事から始まった。
デザインも豊富にしたりで案外、時間がかかった。
羽織るパーカーの様なものも作ったり。
そして、魔法でプロジェクションマッピング風なものを作るのも、ちょっと手こずった
拡大して映すのが意外と大変だったのだ。
魔法を大きくすれば、火力やらの魔法の威力が拡大してしまい危険だし
威力を弱めて大きさを保つ術式を完成されるのが大変だったのだ。
貴族用の方の入浴施設のゴージャスさと
マッサージを施す者の育成もあり。
一筋縄では、行かないこともあったが
ある程度の無茶難題もベルナルドが答えてくれたのが一番助かったと思う。
ある程度の知名度が付いたら
正式にベルナルドは男爵を名乗る。
いよいよ。王が何か動き出す事になるのだろう。
ウィルも私も巻き込まれて行くのだろうか?
出来上がった街を
街から、ちょっと離れた小高い山から見下ろす。
「やっと、完成したね。
僕達の、初めての共同作業は終わりだね。」
ってウィルが笑う。
「お疲れ様でした。
あとは、見届けるだけだね。
この街が、活気が出るか。
受け入れられなかったら、どうしよう。」
と、ちょっと不安になる。
するとウィルが
「君のイメージを形にしたのはベルナルドだ。
失敗しても、彼の責任だよ。」
って意地悪そうに笑うから
酷いと言いながら私も笑う。
この街は、私とウィルにとって
特別な街になりそうだ。
「想い出を作りに毎年、ここに来よう。」
とウィルが言うので頷いた。
まずは、王がピックアップした貴族達が招待されている。
ベルナルドが案内役だそうだ。
ベルナルドを貴族達に接触させる気だろう。
裏は、なりを潜め、暫く表の顔で過ごすのだろう。
私たちの仕事は、ここで終わりだ。
今日は、貸別荘を借りて客になる。
実際、お客さんになるのだ。
お屋敷は、ベルナルドへ明け渡し。
貸別荘で両親や兄達と合流する。
一番、デカい貸別荘を借りたから
お忍びで国王と王妃も露天風呂に入りに来るそうだ。
ルナ様も招待されてるから家族で別の別荘に来るらしい。
夜は一緒に街で楽しみたいな。なんてワクワクしてたら。
「ローズ。楽しみ〜って感情が顔に出てるよ。
もっと楽しみにしててね。」
と、ウィルが微笑む。
もっと。って何を?と思い。
聞いてみたが
「ひみつ」と誤魔化された。
両親達と合流し、別荘でゆっくり寛ぎ談笑した。
ウィルは途中、退席し王と王妃を迎えに行った。
戻ってくると、皆んなでワイワイと早めの夕食を食べ。
お互いの両親は、別荘で露天風呂を楽しむと残り
私とウィルと兄は街に出る事にする。
プロジェクションマッピング風を見に行くのだ。
今日は、花火も上がる事になっていた。
出かける前に、ウィルからデカい箱を渡される。
開けると、黒がベースで赤の薔薇の刺繍がされたワンピースが入っていて
それを着てきてと言われた。
私とウィルの色のワンピース。
ワンピースに合わせて、両サイドを少し垂らし髪をアップにした。
準備して、部屋を出るとウィルも黒をベースにしたシャツに片腕側に赤い薔薇の刺繍が施されていた。
お揃いみたいだ。
その服を見て兄が呆れた顔をしていたが
何かを言われる前に、ルナ様を迎えに出たのだった。
街の広場に着けば、チラホラと人が集まってる様子だ。
広場に設置してあるベンチに座り時間まで待った。
兄は、ルナ様を連れて店の方へ歩いていく。
「ん?お兄様たち何処に行くのかしら?」
と、私が不思議がって居ると
「リュカは、ルナ嬢にお揃いのネックレスを贈るそうだよ。
宝石店で、恋人達に流行らそうと二つ合わせると一つの形になる物を作ったらしいから。
教えてあげたんだ。
どの形が良いか選びに行ったんだろ。」
とニッコリ笑う。
「あら、ウィル。
お兄様にアドバイス?
婚約したのに、焦ったいですものね。
あの二人…。
未だに、二人がイチャイチャしてるの見た事がないんですよ。
仲は良さそうですけど、親密度が足りないと言うか…。
お兄様って、グイグイ行きそうな雰囲気してるのに真逆なんですよね」
ヤレヤレと肩を竦めれば
「だね。
なんで、あんなに奥手なのかな?
昔は、僕にしつこくする令嬢たちに
ウィルより僕を見て欲しいなとか、普通に言ってたからね。
そういう奴なんだと思ってたしね。
だけど、今は愛想無し。
本当のリュカは愛想なんか振り撒きたく無かったんだろうな。
僕の為に無理してたのかな?」
そうなのだろう。
兄は見た目と中身のギャップが凄いのだろう。
見た目に合わせてたみたいな感じなんだろうか?
二人で苦笑いしながら、温かく見守る事にした。
兄達が戻って来た時には、二人の首からネックレスが掛かり形は服に隠れて見えなかった。
気付かないフリをして、ベンチに促す。
そろそろ時間だ。
広場を照らす照明が落ち暗くなる。
音楽と共に映像が流れる。
光の煌めきや各属性魔法のそれぞれの色で形取られた魔法が広がっては消えてを繰り返す。
途中、花火が打ち上がる。
とても幻想的で綺麗な仕上がりだ。
ウィルが手を重ねてくる。
掌の上にして握り返す。
手の温もりが伝わって、ロマンチックな夜に酔いしれる。
耳元に顔を寄せてきて
「この後、2人きりで話したい。」
そう、囁かれた。
このワンピースに話って言ったら
なんだか、想像できてしまったような。
それは
きっと…。




