53 覚悟を決めて(リュカ視点)
今日も学園で魔道具研究。
教室へ転移すると、ルナが既に来ていた。
最初、この教室で手伝いを頼むのは気が引けたが
こうして、居てくれると嬉しい。
あんなにも俺はルナを傷付けたのに。
昔からキャーキャーと寄ってくる女が
信用出来ずにいた。
家柄や容姿によってくる奴等
強くてカッコ良くてスマート、そんな幻想を見ているのだと思っていた。
本当の俺は臆病で弱い。
嫌われるのが怖い。
あの一件で、酷い俺を見せても
眠りから覚めて無様な姿を見せても
彼女は、変わらず俺を慕ってくれた。
彼女との出会いは5歳の時
城に行った時、ウロウロしてる女の子と会った。
泣きそうな顔をしてたから話しかけた。
聞けばダンスレッスンを抜け出し迷子になったと言う。
一緒に謝りに行って怒られた記憶がある。
それがルナだったとマリーが教えてくれた。
そして、この時から俺を慕っていたと。
正直、あの女の子が彼女だと覚えていなかった。
俺にとっては些細な事だった。
幼い頃からウィルと共に居る事が多く。
周りはいつも賑やかで、取り巻きが途絶える事が無かった。
自分の立場、そしてウィルの立場を考え
完璧であろうとした。
どんな時でも微笑みを絶やさず
時に、ウィルに寄り付く虫を牽制し
しつこい女の相手をし気を逸らさせた
偽りの自分を作り上げて行った。
ウィルを尊敬していた。この人を守ろうと思ってた。
優秀なウィルを追いかけて、それ以上になって守ろうと。
だから、見えない綻びに気付かなかったんだ。
あの一件で、俺は容易く魅了にかかった。
綻びから、いとも簡単に俺の闇に侵入されたのだ。
もう、自分を飾りたくない。
弱さも曝け出し不様に生きよう。
もう、期待なんてされやしない。
目覚めてから暫くは
鍛錬や魔導を極めていきたいと
何も考えずに、ただひたすら何かに夢中になっていたかった。
その一環が魔道具研究。
マリーに無理矢理に近い形で、ルナを押し付けられた。
最初は罪滅ぼしのようなものだった。
こんな俺を許してくれて有り難かった。
それだけだった。
ルナは真面目に俺を手伝ってくれ
擦り寄る事もなく、ただ一緒に居てくれた。
なんだか心地良かった。
明る過ぎず、俺を包む月明かりのように。
そんな、ある日。
突然、マリーとウィルが教室に現れ。
なんやかんや言ってくる。
押しが強い。
こっちにも自分のペースがあるんだ!
とイラつかせた。
ただ、マリーの他の奴に奪われるって言葉が
俺の心をザワつかせた。
心の雑音が煩くて、ルナの手を掴んで勢いのまま外に出てしまった。
暫く黙って、勢いのまま歩いていたら
「あの。リュカ様?
どこまで行くのです?」
ルナの戸惑いの声で、我に返った。
立ち止まり、覚悟を決める。
振り返り、手を取ったまま
俺は、彼女を見下ろし
「こんな俺を、不甲斐ない俺を
ずっと慕ってくれて有り難う。
これからも、臆病で弱い俺を支えてくれるか?
ルナを誰にも取られたくない。
こんなカッコ悪い俺と共に生きてくれますか?」
真っ直ぐに彼女を見つめていた。
黙って驚く顔をしてる彼女が居る。
沈黙が怖かった。
断られたらと思う恐怖から逃げ出したかった。
本当に、俺ってカッコ悪い。
彼女の目から涙が溢れる。
泣かせてしまって少し焦る。
おそるおそる、指で涙を拭う。
涙を流しながら笑顔になるルナが
静かに「はい。喜んで。」と言う彼女が
とても愛おしい。
思わず抱き締めてしまった。
一瞬、彼女の身体が強張った気がしたが
直ぐに緩み、小さな声が聞こえる。
「とても幸せです…」
抱き締めたまま、俺も言う。
「俺もだよ。」
そのまま、暫く時が過ぎた。
授業が終わったのだろう。
遠くが騒がしくなってきた。
教室に戻ると、ウィルがマリーにキスする瞬間だった。
マジかよ!
隣のルナを見ると顔を真っ赤にしてた
俺に視線に気付けば顔を手で覆ってしまう。
ゴホンっ。咳払いしてやった。
まったく、イチャつくなっ。
って人の事だと腹立たしい。
俺は、あの二人の様には無理そうだ。
臆病者な俺は、ゆっくりルナと2人で
愛を紡いでいきたい。
不器用に不安と向き合いながら
彼女に甘えながら、少しずつ少しずつ
ルナに愛を注ぎたい。
俺なりに。
その後、両親に伝えて
ルナの家、コンプトン子爵家へ
婚約打診の手紙を送った。
直ぐに返事は来て、正式に婚約が決まった。
母が、お淑やかな娘が出来ると大喜びだった。
マリーには内緒にしておこう。




