47 やり手商人の正体
次の日、朝から
私と、エリの光魔法で
広大な土地の浄化をした。
精霊達の光が弱かったからだ。
元気な精霊の光は、眩い金色の光を放つ。
豊かな自然を見渡すと、輝く景色が広がり
本当に美しく映るのだ。
それから、一旦 転移で王都に戻る事にした。
ハンデルンの屋敷の使用人
ゲート番やハンデルンの町の護衛
などの人員選びなどをしなくてはいけないし。
例の商人とも会わなきゃいけない。
後に、その商人が住む屋敷になるのだ。
改装や、人員選びは一緒にした方が良いだろう。
アンとエリを家に送り
その足で王城へ向かった。
商人が王城へやって来るまで時間があると言われ
ウィルとサロンでティータイムを楽しむ事にした。
沢山のスイーツが並べられる。
多くない?と思ってたら
メイド長が現れ
「御婚約、おめでとうございます。」
とニッコリ笑う。
御礼を言うと、他のメイドと共に下がって行った。
「ねぇ。ウィル
デザート多すぎない?」
そんな私の感想に
「きっと、僕の婚約者の好みが知りたいんだろうね。
リサーチだ。」
と笑う。
なるほど、出来るメイド長って訳ね。
「ところで、ウィルの好みのデザートは?
甘いものは平気なの?」
ウィルの好みとか実は何も知らないのだ。
「割と甘い物は好きだよ。
そんなに量は食べれないけど。
こんなに、並べられても一つで充分だよね。
この、中でならチョコケーキが好きかな。
ローズは、生クリームが好きでしょ?」
何で知ってる?と不思議に思ってると
「不思議?
昔から、君が王城に来る時は
生クリームを使ったものが多かったから
そうなのかな?って思って。」
そんな事まで把握してるとは
伊達に王子じゃないってことか。
「そんな事までチェックしてるんですね。
生クリームは好きですよ。
でも、どちらかと言うとフルーツの方が好きなんですけどね。」
そう言うと
「ケーキやクッキーなんかより
フルーツが好きなんだ。
覚えておくよ。
お茶は?どんなお茶が好き?」
と、私の好きな物や、ウィルの好きな物なんかを
話しながら楽しんでいると、メイドと共に一人の男が現れた。
「ご機嫌麗しゅう。ウィリアム殿下。
それと、噂に違わずお美しいローズマリー嬢。
初めまして、私はベルナルドと申します。
今はエバンス商会に属しております。
どうぞ、お見知りおきを。」
胸に手を当て礼をする男は、スマートな身のこなしで平民にしては出来すぎている。
歳は二十代半ば辺りか?
長身で、茶色の髪の深い緑色の瞳。
少し吊り目ではあるが、スッキリとした目が印象的な男前だ。
「やぁ〜。君の事は父上から聞いてる。
ベルナルドは本名かい?
王の番犬の一人なんじゃないのか?
引退かい?」
ウィルが鋭い顔で問う。
初めて見る顔だ。
「バレてましたか。
番犬も若いうちは表舞台に立てませんが
エバンス商会を探れって何年も前から商人なんかさせられてます。
まぁ〜。
その辺のカラクリは、学園長になったら知らされますよ。
ほんと、国王陛下も人使いが荒い。
次は貴族になれって言うんだもんな。
本当の名前はとうの昔に捨てました。
これからは、ベルナルドとして生きて行きますよ。」
呆れた様な顔になり鋭さが抜けたウィルが
「なる程ね。
父がやりたいのは、富を独占しようとする貴族の排除かな?
また、すごい所に手を出すもんだ。
君を男爵に据えて、新たな勢力の商会を作る気だね。
エバンス商会を潰したら
商人組合でも作る気かい?
貴族社会も新しい風を入れる気か…。
父上の命は、ちゃんと守ってくれよ。」
そう言うウィルにベルナルドは一言
「御意」といい。跪いた。
「あっ。後、サイラスに悪い虫が寄りつかない様に見張れよ。
僕が、学園長になればサイラスが正式に王位継承権第一位だ。」
そう口にすれば
「その辺は抜かり無く。」
と、笑顔で答える。
そして
「さっ、ハンデルンの屋敷に行きましょうか?
俺が、王城に長居して誰かに見られるのも不味いんで。」
と、肩をすくめる。
メイドに退室を知らせて3人で転移した。
「へぇ〜。
ココが俺の屋敷になるんだ。
デカ過ぎ。まったく、一人で持て余すな。」
最初のスマートさは何処へやら。
通常はコチラと言うことか。
「あの〜。ベルナルドさんて
観光地化の資金出すんですよね?
何で、そんなに儲けてるんですか?」
素朴な疑問だった。
「えっ?知らない?
ローズマリー嬢の家、スペンサー侯爵家から
魔石を仕入れて、魔道具やら付与やらして儲けてます。
スペンサー家には、アイデア料も払ってますよ。
スペンサー家様々です。」
観光地化には魔道具が大活躍っぽいし
現物支給が多そうだし、資金源の心配は御無用ですよ。」
家と取引してるとは、初耳だわ。
だから、父も何だかんだ言いながら
私がハンデルンに関わる事を許してる訳ね。
「で、最終的にココが君の物になるけど
改装とかするか?
使用人とか警備やらは、君が選んだ方がいいだろ?
人員なんかは君に任せる。
ある程度の構想と魔道具開発なんかはやるが
町の住人達の指揮は君が取るんだね。
君が領主になるんだから。
僕たちは居候だからね。」
どうも、ウィルはベルナルドに冷たい。
「ウィリアム殿下。
俺は、ココに付きっきりは無理だ。
エバンス商会にちょこちょこ出入りしてたいんでね。
人員は、今日中に何とかする。
屋敷も壁紙と絨毯の貼り替えだけでいいだろ。
家具はそのままでいいし。
どうせ、一人だ。男爵になろうが屋敷に居ることは少ないだろうしな。
まぁ〜、街が出来るまで住んでるんなら
金は俺が出すから好きな家具でも買っていいぞ」
王子に向かって口が悪い。
王の番犬って、国王だけにしか忠誠を誓ってないから王子は敬わないって事かしら?
「そうか。じゃ〜君の金を好きに使わせて貰うよ。
君の代わりの金庫番を屋敷に置いておけ。
どうせ、領主になっても優秀な執事にでも仕事を押し付けるんだろ。」
刺々しい会話が続く。
「はいはい。ウィリアム殿下の仰せのままに。」
そう言うと、転移で消えていった。
「ねぇ、ウィル。
ベルナルドに冷たくない?
言葉に棘しかなかったけど。」
そう問うと。
「こんな僕は嫌い?
優秀なんだろうけど、ああいう軽薄そうな男は嫌いかな?
父上の前では真面目なんだろうけど
他では、全てが胡散臭い感じが信用出来ない。
アイツらは、王にだけしか忠誠は誓わない。
王じゃない王族も貴族も、アイツらにとっては
どうなっても良い存在だよ。
王の為にならないなら僕さえ躊躇いなく殺すだろうね。
だから、ローズも心許しちゃダメだよ。」
ウィルの、こう言う潔癖とも言える所が
王にならない方が良いと思う所だ。
なんの躊躇もなく、不利益なモノを排除する
その冷酷さを持たないからだ。
そんな者が王を継げば、心が壊れてしまう。
悪びれても、本当に冷酷には慣れないのだ。
「ウィルらしいと思うよ。
そんな事で嫌いになんかならないわ。
ウィルが、どんな私でも受け入れるって言ってくれるじゃない?
私もそうよ。
どんなウィルも受け入れるわ。
キラキラ王子様のウィルを好きになった訳じゃないもの。
寧ろ、ダメなウィルを好きになったのよ。」
そう言って笑うと
「カッコ悪い僕が好きとか
ローズだけだよ。変わってるね。
今まで、好意を寄せてくれる女性は
カッコいい僕しか見てくれなかったのに。
可愛くないローズも、いっぱい見せてくれなきゃ
割に合わないな」
そう言って笑う。
暫く、二人きりの静かな時間を過ごした。
肩を寄せ合って、ただ時が流れるのを感じる。
心が満たされていくのを感じた。




