33 この世界は愛と勇気が奇跡を起こす
あれから、私はこの世界で
ローズマリー・スペンサーとして生きている。
学園へは、授業を受ける事は無いけれど
魔道具研究などの知識を入れに通ったりしている。
魔道具は、人間が作りし技術な訳で
ガロから教えを乞う事ができない為である。
あの事件の後処理も裁判も、そろそろ収束しようとする中。
私は、エリアーナの事で
国王と父、それに兄とウィリアムにも
話す機会を設けて貰ったのだ。
その話し合いが、今日 行われる。
王城にある、国王陛下のプライベート空間の
一角にある、サロンにそれぞれ集まり密談する。
メイドがお茶の用意をして立ち去るのを見届けた私は
「本日は、私の我儘で皆様に集まって貰いました。
国王陛下や父には、前に少しだけお話した事ですが、神の導きで私は転生して参りました。
そして、エリアーナもまた、転生者です。
この世界、そのものがエリアーナの想念の様なモノかも知れません。
それがエリアーナの神の創意。
エリアーナの前世の。と言うべきでしょうか?
エリアーナの前世での、ある物語りを模した世界を神が創造したのです。
エリアーナの前世の世界と、この世界は
まったく異なる文化です。
しかも、エリアーナは前世、病で普通に生きられなかった。
何かが欠けているのです。
学園に入学する前までの人生でも、本当の意味で生きると言う事を学ばなかったのでしょう。
学べなかったのかも知れません。
裕福とは言えない環境で、両親からの愛情も愛を持って導く者さえいなかった。
生まれた時から、平民なのに魔力量が高いとなれば、利用価値としてしか見られて居なかったのかも知れません。
同じ転生者として、
同情の様な気持ちが私にはあります。
転生前、私は神から彼女の事を助ける事を
求められた訳ではありません。
この世界の、光と闇。陰と陽。そのバランスの調整だけが私に求められた事。
私が、新たな人生を生きる為に
この世界を救えと…。
しかし、私はエリアーナの前世の生い立ちを知っているのです。
そして、一度会って話した事で
彼女が、本気で生きると言う事を知らないだけなのだと思ってしまいました。
これは、同情なのかも知れません。
だけど、
私は、彼女に本当の愛を知って欲しいのです。
彼女は、愛されているのに
それを愛と認識する事をしなかった気概があります。
この世界が、彼女の中にある物語を模して
神が創造したというなら
きっと、この世界は
愛と勇気で創られていると思うのです。
エリアーナの罪を無かったものには出来ない事は
理解しております。
刑に便宜を図って頂きたいのです。」
話終えて、私が俯いたままで居ると
皆は、黙って各々に思う所があるのだろう
考える様子で沈黙が続く。
その時、国王の背後が光ったと思ったら
それは美しい姿の女神?が現れた。
びっくりして、言葉を失っていると
『私は、この国を守護する女神。
アルティアと人は呼ぶ。
この国の王となる者と古代より契約している。
この私と契約する事で王となる。
私が契約を断れば王にはなれない。
これを知るのは、王だけ
人間は、勘違いしているわ。
血筋が、王を決めるのでは無い。
私が決めるのよ。
さて、この世界の創造神は最初から
エリアーナなるものを導く気はない様ね。
神の守護を付けてないもの。
ステータスは授けた様だけど
だから、私も静観してたわ。
ローズマリー。オマエが予想して居た通り
私は、この国の守護をする者として
導く時は、愛と勇気を基準にしているわ。
オマエも良く知ってると思うけど、神とは私も含め
ある視点で判断する気まぐれな存在。
それ故に、神は複数存在する。
さてさて、愛と言っても色々な角度がある。
オマエの同情さえ、愛だと言えるわね。
王よ。
この娘、ローズマリーの希望を叶えたらどう?
私も、あの者 エリアーナが
どんな愛の形を見つけるか興味はある。
気まぐれで創られた世界だけど
あの者が、居たからできた世界でもある。
どう?
私の気まぐれを聞くなら
次の王はウィリアムでなくても構わないわ。
サイラスも見所はあるし。
私は、ウィリアムに期待してたのだけどね。
その瞳は、私からの贈り物でもあったの。
私と契約しなければ
宝の持ち腐れかも知れないけどね。』
そう言うと
ちょっと離れた場所にある椅子に座り
お茶とケーキを何処からともなく目の前に出し
寛ぎ始めた。
「女神よ。
そなたは、いつも唐突にやってくる。
女神の気まぐれも程々にしてくれ。
サラッと王だけが知る王位継承の事まで話しおって。
そなた以外の神の加護持ちのローズマリーが
気に入ってるのか?」
そう問う国王に女神は
『ん〜、正確には精霊王のガロが肩入れしてるから興味あるの。
アイツが、どうするのかも気になるけど
ローズマリー。そなたも気になる。
今の、私の楽しみでもあるのよ。』
そう言うと、ニコニコ笑っている。
全てを見られてるという事か?
考えるのはよそうと直ぐに思い直す。
「どう、思う。
ウィリアム、リュカ。
お前たちは、被害者だ。
お前達が、魅了に支配されてた間の失態は
刑罰としては無い。
社会的、評価がお前達への罰だと言えよう。
エリアーナも
平民が王族や貴族といった者達を憚った罪はある
しかし、彼女もまた被害者だ。
重い罰は、どうかと思う反面
王として、王族や貴族の面子というくだらない
体裁もある事をどうしたものかと思っておる。
他の貴族が、煩いからな。
推し切る事も出来るがな。
幸いというか、私の周りの者達の子息が多い
そこが、許せば
他の貴族は何も言えまい。
お前達は、どうしたい?」
ウィリアムとリュカの顔を真面目な顔で見つめる王にたいし
先に口を開いたのはウィリアムだった。
「父上。
僕は、ローズマリーの意見を尊重したく思います。
闇の魔力が膨大だった魔道具が使われたとはいえ
本来、魅了の闇魔法は私の中に芽生えた小さな感情を増大するもの。
僕の中に、彼女への興味は少なからずあったのでしょう。
それに、あの一件で僕は本当の自分自身と向き合う事が出来た。
少し感謝してるんです。
エリアーナに寛大な処置を願います。
アルティア様。
期待に応えられない私を、お許し下さい。
私は、王としてではなく違う形で
アルティア様が守る、この国の為に生きようと思ってます。」
王は頷き、女神は黙って微笑んだ。
そして兄も口を開く。
「私も、重い罰は望んでおりません。
魔導師を志す者として、不覚だった私が悪いと思っております。
魔法や魔術、魔道具を使った悪行を
事前に察知し阻止する事で犯罪は防げると
思うのです。それを可能にする事は出来る。
今回の事で学びました。
私は、その分野で力を付けていきたいと思っております。
その、キッカケをくれた彼女に私も感謝しております。」
国王は深く頷き、父に視線を移し
「そういう事だ。
彼女をどうするかな?
国外追放という名目で
海の向こうの友好国に送ってやるか?
貴族共のガヤを鎮めるのも手伝ってくれるか?」
ヤレヤレと肩をすくめながら苦笑いする父。
「あの、国王様、お父様。
彼女の意見を聞いても良いですか?
他国で、一からやり直すか。
もしくは、うちのメイドにしても宜しいですか?」
そう言うと、2人は顔を合わせる。
どうする?と目で会話してる様だ。
「マリー。
うちのメイドにするのか?
本気で言ってるのか?
うちにはリュカもいるんだぞ。
気まずいだろ?」
と父が呆れた様に言う。
「うちのっていうか
私付きのメイドにしようかと…
いつか、私は家を出るし
その時は、一緒に連れてくわ。
まぁ、彼女が望めばだけど…」
と、気まずそうに言う私に
今度は兄が
「マリー。
なんか考えがあるんだろ?
俺の事は気にするな。
同じ敷地にいたとしても
そこまで関わらないだろうし
俺も、吹っ切れてるしな。
たまに来るルナ嬢が、どう思うかは
ちょっと分からないが。
その時は、マリーが説明しろよ。」
兄は、私に優しい。
本当は、あんまり良くは思ってないだろうに。
けど、その優しさについつい甘えてしまう。
「では、この件は
この後、ローズマリーが彼女に謁見して決めようでは無いか。
どっちにしろ、オマエにはまた気苦労を掛けるが
娘の頼みだ!頑張るのだな。」
そう言って国王は笑った。
牢の塔に行く私に、兄とウィリアムも付いてくることになった。




