24 ウィリアムの精神世界
一面が灰色の世界だった。
独りうずくまる様に座るウィリアム様が居た。
あのキラキラ王子が見る影もない。
王子に近付き、後ろから包み込む様に抱き締めた。
「ウィリアム様。
ローズマリーです。お久しぶりですね。」
そう言うと、とても怒った様な声で
「ほっといてくれ!私は私を許せない!」
そう吐き捨てる言葉とは裏腹に
私に抱き締められたままだった。
「勝手に話しますので、聞いてて下さい。
怯えなくて良いのですよ。
学園でウィリアム様が傷つけた人達は分かりませんが
少なくとも、国王様や王妃様。
それに、私の父や母、私だって
ウィリアム様を心配はしてても、怒ったりしてませんわよ。
ウィリアム様が目覚めなくて
心痛めてますわよ。
学園での事は聞きましたわ。
色んな御令嬢を傷つけたみたいですわね。
丁度、宜しいのではなくて?
本当は、群がる女共なんかウザかったでしょ?
王子という立場では、
全ての者を平等にとか、ほんと嫌になりますよね?
初めて、出会った日のこと覚えてますか?
私が3歳で、神の加護を持ち精霊王を召喚
って事で、国王様に御挨拶しに城に初めて招かれて
その時、ウィリアム様は5歳ですね。
5歳なのに、完璧な王子様でしたわ。
あんな完璧な王子を見たら女の子は憧れるのでしょうね。
でも、私はウィリアム様が嫌いでした。
王子の着ぐるみでも着てるのかって思ったんですよね。
目が笑ってないと言うか。
王族としては完璧だし
貴族社会では、完璧ですけどね。
でも、本心が分からないし
人形と話してるみたいで嫌だったんです。
だから、あの完璧キラキラ王子が暴走してるとか
私なんか嬉しかったんですよね〜。
ちゃんと人間だったって。」
私が声を出して笑うと、王子が話し出した。
「笑い過ぎだ。
王子に向かって、嫌いだとか普通、言うか?
本当、君はジャジャ馬令嬢だな」
呆れた様に溜息を吐いた王子に
「ウィリアム様。
私は、階級社会だから仕方なく
最低限のマナーを守って生きてるだけで
本当は、こんな堅苦しい世界は嫌いです。
それが本心です。
ちゃんとしなきゃいけない時はちゃんとして
後は、自由にしたって良いじゃないですか?
王子様だって、
誰も居ない所で
「クソ野郎〜っムカつく〜っ」とか
叫んだってバチは当たりませんよ?」
と、本心で語ると
「ローズマリーは規格外だな。
リュカが、妹は自由で羨ましいと言ってたよ。
普通、こんな時は慰めるとかするものだろ?」
と言うウィリアム様に
「慰めて欲しかったのですか?」
と揶揄うように言うと
「ムカつく…」
そう言った。
私は嬉しくなって
抱き締める力を強めて
「言えたじゃないですか?
王子がムカつくとか初めて聞きましたわ。
私の前では、偽らないで良いのですよ。」
そう言うと
ウィリアム様が、私の腕から離れ
向かい合うように座り直した。
「君は、僕が王子らしくない方が嬉しいのか?」
と、呆れた顔を私を見る。
「そうですね。
ウィリアム様が言う王子らしいの基準が
昔のウィリアム様なら、王子らしくない方が好きです。
王子着ぐるみは、正直言って嫌いです。
ただ、ウィリアム様が王子らしく居る為に
努力していた勉強や剣術や魔法魔術なんかは
尊敬してますよ。
普通は、あんなに頑張れないもの。
兄達と、頑張ってる姿は知ってますから。
でも、同時に
愚痴も言わない、いつもニコニコ。
って所が、ムカつく感じでしたけど。」
苦虫を噛み潰したような、顔をすると
「貶してんの?褒めてるの?」
と、益々呆れた顔になる王子。
「君と話してたら、今までの僕で居られなくなる
何なんだ君は。」
少しイラついた感じになる王子に
「もう、今までの王子には戻らなくて良いのではありませんか?
学園の事。ちゃんと覚えてますよね。
自分がした事。エリアーナさんの事。」
私が問うと
「あぁ。覚えてる。
忘れたいけどな…
王子として、大失態だ。
エリアーナを愛してると思い込んでた。
僕の唯一無二の存在だと本気で思ってた。
彼女が居れば、他に何も要らないと。
魅了が解けて、茫然としたよ。
凄い眠気に襲われて、気付けばココに居た。
何度も何度も、自問自答したよ。
終わりなき拷問のように。
で、絶望したよ。
僕の今迄が全て間違いな気がして。
本当の僕は孤独だったんだ。
周りに人がいっぱい取り巻いてて
皆んながチヤホヤしてくれて
だけど、誰からも愛されてる気がしなかった。
父上も母上も立場上、あまり顔を合わさなかったし、僕も自分から会いに行かなかった。
仕方ないと諦めてた。
でも、本当は
僕は、ただ愛されたかった。
本当の僕を見て欲しかったし受け入れて欲しかった。
ただの子供だね。
僕は、誰かに甘えたかったんだ。
誰かに守って欲しかった。」
泣きそうな顔で、話すウィリアム様が
子供みたいで、思わず抱き締めてしまった。
びっくりしたウィリアム様が
「ローズマリー⁈
急になんだ。同情か?」
私は答える
「同情なのか分かりません。
思わず、抱き締めたくなりました。
私、寝てるウィリアム様の所へ
度々、会いに行ってましたの。
ウィリアム様の寝室は、付き添いのメイドは居るけど
とっても静かで、冷たく感じたんです。
この人は孤独なんだって思ってしまったんです。
当たってたみたいですね。
王子としての、重圧から解放してあげたいと思ってたんですよね。
こんな事、言うと
王子なんて辞めちまえって聴こえちゃいますね。」
あはは…
とバツが悪くてから笑いしてしまう。
「ローズマリー。
なんか、ありがとう。
確かに、僕は国王にはなれそうにない。
王位継承権は辞退すると思うよ。
あんな大失態した奴に、国なんて守れない。
何かしらで国の為になれる道を探すよ。」
ウィリアム様から離れて
顔を見据えて私は
「ウィリアム様。
起きる気になりましたか?
今後の事は、これから
ゆっくり考えて下さい。
それに、国王様とも、ちゃんと腹割って話してみたらどうですか?
私から見たら国王様は親バカですよ。
目覚めたら、国王様と王妃様が待ってます。
私は、これから
2日位、寝てるらしいです。
起きたら、お見舞いに行きますね。
あっ、兄からの伝言があったんだ。
先に起きる、一緒に罰を受けよう。だそうです」
笑顔で言うと王子が「待ってる」と一言告げると
瞳を閉じて、消えていった。
「ガロ、何だか疲れたわ。
このまま寝ても大丈夫かしら?」
と、振り返ると
『後は、俺に任せて寝ろ。
お疲れ様。マリー』




