20 眠りの騎士と眠りの王子
ルナ様を連れ、兄が居る部屋へ移動した。
ベットに眠る兄を見つけてルナ様は駆け寄る
ほっとした様な、哀しい様な複雑な顔をしながら、涙ぐむのを静かに見守った。
ふと、ルナ様は兄の何処が好きなのか聞いてみたくなった。
「ルナ様。聞いても宜しいですか?
兄の何処が好きなのですか?」
そう聞きながら横に並ぶと
ルナ様は兄の顔を見ながら話始めた。
「わたくしの初恋だったのだと思います。
5才の頃でしょうか、第一王子であるウィリアム様の婚約者候補の話が持ち上がったそうです。
勿論、数名の中の一人ですが
わたくしは、そうとも知らずに父に連れられ王城へ来てマナーのレッスンなどをしてたのですよ。
今、思えばテストみたいなモノだったと思うのです。
候補に選ばれるか選ばれないか分からぬ内は
私に知らせたくない父の配慮があったように思います。
一ヶ月くらい通ったでしょうか?
その期間中に、子供だった私は
ダンスレッスンを途中で抜け出した事があるのですよ。
お城は広いし迷子になりました。
そんな時、リュカ様とバッタリ会ったのですよ。
迷子で不安な時でしたから、泣きそうな顔をしてたのでしょうね。
リュカ様が「どうしたの?誰かに意地悪された?」とか聞いてきて
私、正直にダンスレッスンが嫌で抜け出したら迷子になったと言ったら
リュカ様、なんて言ったと思います?
一緒に戻ろう、怒られない様に僕が守るからって
もしも怒られちゃったら僕も一緒に怒られるよ
なんて言ったんです。
結局、二人で怒られました。
その時から、私はリュカ様をお慕いしてますのよ
私のナイト様ですの」
そう語るルナ様は、綺麗な微笑みを私に向けた。
「そんなエピソードがあったのですね。
ナイト様ですか…
強くない、お兄様でも好きですか?」
俯きながら聞く私に
「勿論ですわ。
今度は、私がリュカ様を守りたいです。
リュカ様が傷つけた人達に、一緒に怒られに行きたいと思います。
あの日の、お返しに…」
良かったと思った。
兄は容姿端麗だ、自分の理想を押し付けて
本当の兄を見てない人に兄の隣に立って欲しくなかったのだ。
「ごめんなさい。
試す様な質問をしてしまいましたね。
私、少しウィリアム様の様子を見て参りますので
その間、兄を宜しくお願いします」
と、礼をすると
ルナ様は無言で頷き、兄のベットの横の椅子に腰掛け
兄の手を握るのだった。
ウィリアム様の寝室に向かう。
入口前の警備の騎士に挨拶して、部屋へ通してもらう。
ウィリアム様も相変わらず寝ている。
兄に負けず劣らずの綺麗な人だ。
金髪で黒眼、とても特徴的なのは黒の瞳に細かい星屑の様な金色が散らばった幻想的な眼をしているのだ。
初めて、ウィリアム様に会ったときは
あまりの美しさに、眼をガン見してしまい
苦笑いされたものだ。
少し、寝顔を眺めていると
ウィリアム様が、うなされはじめた。
頭を優しく撫でると暫くして落ち着いた。
「ウィリアム様…
いつまで、自分を責めてるのですか?
迎えに行かないと帰って来ませんか?
それとも、魅了が解けても彼女が愛おしいですか?
彼女を、取り上げた私達が憎いですか?
ウィリアム様。
起きて、気持ちを教えてくれなきゃ
何も分かりませぬよ。
無理矢理、精神を抉じ開けて宜しいですの?」
答えなど返ってこない質問をする。
「ウィリアム様、この部屋は寂しいですね。
誰か尋ねて来てますか?
いつも、貴方様は独りでしたの?
こんなに、王城は人がいっぱいなのに
ココだけ、違う空間の様に感じてしまうのは
私の気のせいでしょうか?
何だか、私は貴方様の本心が知りたくてよ。
また、来ます。
次は精神世界で会いましょう。」
王子とは、私が思うより孤独な人なのかも知れないと考えていた。
沢山の人の中にいても孤独だったのではないか
ウィリアム様に、私の声は届くのだろうか?
それから私は、兄の部屋に戻りルナ様を送った。
ガロに2人の居場所を探してもらおう。
2人の心の声を聞きたい。




