6話 裏垢始めました
つぶやき系SNSアプリのOwatterで今見ているアニメのことをつぶやく。
『うおおおめっちゃ血出たあ飲みてえええ』
美少女からあんなに血が出るなんて、なんてえっちな。やはりアニメは最高だな。
俺が地球に帰ってから早1ヶ月。
自分の部屋でごろごろしながら、ソシャゲしたり、死んでいた1年半の間にあった気になるアニメを見たりしていると時間はあっと言う間に過ぎていった。
俺は楽しい引き籠もりライフを送れていた。
......いやだって、俺身分ないし。学校にもいけなければ、働くのも難しい。
身分だけではない。白髪赤目もそうだし、俺は吸血鬼なので、日光や尖った耳、牙、成長しない体など、不都合がたくさんあるのだ。
よって、家族がいない平日の昼間は、たくさんある時間で存分に趣味を満喫していた。
ただの穀潰しっぽいけど、毎日洗浄魔法で家事を楽にしているので許してほしい。
ボロン
お、さっきのつぶやきに返信が来たようだ。
「おまわりさんこっちです」
略しておま〇こ。
いや、なんで俺が犯罪者みたいになってるんだよ。言ってるだけでまだ何もしてないだろ。
なんか最近、フォロワーが俺をやべーやつ扱いしてくるんだが。こいつら、俺が美少女だって知ったらどういう反応するんだろうな?
そういえば、引き籠もりになってからは、そういう美少女扱いを受けることがすっかり無くなってしまったな。
俺、こんなに美少女なんだけどな?なんかもっと、可愛さで周囲を魅了するとか、男を俺に夢中にさせるとか、美少女っぽいことがしてみたい!
せっかく美少女になって日本に戻ってこれたんだから、このまま引き籠もって人の目に触れないってのは、なんかつまらん!
不思議だ。異世界では俺が美少女故にしょっちゅう口説かれたり夜の誘いを受けたりしていて鬱陶しいだけだったが、そういうのが少しもないと物足りなくも思うものなんだな。
では、何か美少女っぽいことをやってみよう。
単純に、外に出れば人目には付くだろうけど、やはり日光の問題と、耳などの見られたくない場所もあるのが難点だ。
なら、ネットだな。
配信......ゲーム実況とか?うーん、これも、ふとしたときに耳や牙が見えてしまいそうで怖いな。耳は人間の耳の先の方が尖った感じなので一応髪で隠せるし、牙は口を大きく開かなければ見えないのだが、ゲームでテンションが上がればボロが出る可能性は大いにある。っていうかまず機材がないね。
でも、吸血鬼の高性能な頭のおかげで俺はゲームの腕前には自信があるし、配信映えはしそうだ。いつかはやってみたいね。
配信がダメなら、SNSだな。Owatterに写真を投稿するくらいであれば、スマホ1つでできるし、耳や牙は毎回確認すればいい。
よし、そうしよう。
であれば、新しくアカウントを作るか。Owatterに自撮りを投稿しているなんて周りにはあまり知られたくないし、裏垢として、ひっそり気の向くままに写真をあげていこう。
おぉ、裏垢って、なんだかイケナイ響き。なんか背徳感があっていいね。
では、さっそくアカウントを作ってみる。
Owatterの新規アカウント登録画面からアカウント情報を入力していく。名前は、本名の『雪那』を雑に英語にして『スノウ』とかでいいかな。
どんどん登録を進め、最後に『私は人間です』にチェックを入れてアカウントを作成する。俺、人間じゃないけどな!まあ、BOT避けのCAPTCHA認証だろうし、俺も見た目はほぼ人間だから許してくれるだろう。
CAPTCHAといえば、前Owatterにあった英語を入力するやたらと難しいやつ、今は無くなったんだな。俺はあれに3回くらい失敗して諦めかけた思い出がある。
さて、登録が完了したので、さっそく自撮りを投稿しよう。
スマホカメラを起動し頭上に構え、内カメラに切り替えると、画面に美少女が出てくる。
思わず笑みが漏れる。カメラ目線。はいパシャリ。
うん、いい感じ。こちらを見て微笑む白髪赤目の美少女がバッチリ撮れている。耳や牙も大丈夫そうだ。これをアイコンに設定してしまおう。
俺の偏見ではこういった自撮りアイコンは加工されていることが多いが、俺は加工しなくても美少女なのでこのまま素の顔をアップロードする。
そしたら最初のつぶやきだ。
新規のつぶやきにさっき撮った写真を添付して、『裏垢始めました』っと。後は、ちゃんと人に見られるように『#裏垢女子』のハッシュタグを付ける。白髪赤目の言い訳として『#アルビノ』も付けておくか。
ではこれで、つぶやきを送信する。なんか、ちょっとドキドキするな。これを見た人は、どんな反応をするだろう。
気になるが、今日はもう遅いので明日の楽しみとして、アニメをあと何本か見たら寝よう。