4話 E
家族といろいろ話していたらいつの間にか日が昇っていた。今日は土曜日らしく、仕事や学校はないらしい。
ふと、父さんが話を変える。
「そろそろ昼ご飯に行くか。雪那はどうする?」
「うーん、俺は血以外はいらないや」
吸血鬼は食事が必要ない。
普通に味覚はあるし、食べ物から栄養を摂ることもできるんだけど、食事をしなくても体内で勝手に栄養が作られていく。
どうやら、吸血鬼はそこら中に満ちる万物の元たるマナから代謝に必要なエネルギーや物質を体内で構築するらしい。栄養だけではなく、体温が低いと熱を作り出し、息ができないと酸素を作り出す徹底ぶり。チートすぎて必須アミノ酸も涙目だ。
ただし制約もある。
まず、マナから栄養を作るには、人間の血液が必要なこと。血液は栄養などを作る工程における触媒的な働きをするらしい。
そして、日光は血とは逆の触媒効果を有している。つまり、日光を受けると逆に体の組織がマナに分解されていく。
日光が苦手なカラクリである。
血が十分あれば少しの日光は受けても平気なんだけど、もろに受けたりすると体が消えていく訳なのでめちゃくちゃ痛い。
地球にもマナがあったため、俺は食事を取らずとも平気であることが分かった。家族と食事を取りたい気持ちもあるが、俺はできれば血以外は口にしたくない。
常にお腹が空いている状態にはなるが、食事をしなければうんちは出ないし、おしっこは無臭になる。
美少女はうんちしない。そんな男の幻想を実現できるのだ。それをしない手はないだろう。
「そうか。でも、食事の後は買い物に行くから雪那も付いてきた方がいいんじゃないか?服とか、いろいろと必要な物もあるだろう」
ああ、確かに。俺の部屋はそのまま残してくれたらしいけど、服とかは新たに購入する必要があるな。
「服なら私のでいいじゃん」
「えっ。いいのかい妹よ」
「うん、体格は同じくらいだし、何着かあげるよ」
なんだって!?可愛い妹の服を着られる!?
女の子にもなってみるものだな。
「あ、でも下着はだめだからね?......ってお兄それブラしてる?」
「え?してないけど」
「ちょ、だめでしょ!バスト崩れるよ」
「吸血鬼の体は不変だよ?」
不老半不死の賜物で、吸血鬼には生まれた時の体を保つような機能があるのだ。鍛えても筋肉は成長しないし、髪や爪は切っても一晩で元に戻るし、おっぱいの形が変わることだってない。こりゃまた、ホメオスタシスも涙目だ。
「それでもブラくらいつけるでしょ!ちょっとこっち来て!」
「おぉ」
手を引かれ、妹の部屋に連れ込まれる。おお、妹の匂いがする。生前は、妹が中学生になった辺りから入れてもらえなかったんだけどな。
何かと思えば、妹は引き出しからメジャーを取り出し、俺の胸のサイズを測りだした。
おぉ。可愛い妹にそんなところ触られて、お兄ちゃん何かに目覚めちゃいそう。
それで、何がとは言わないけど、Eだった。
妹は「3カップも負けた......」と微妙な顔をしていた。
◇
日光を避けるため車の中で毛布を被ってしばらく。大型ショッピングモールであるピエンモールに到着した。屋内駐車場のおかげで日光に触れることなく建物に入れた。
白髪は目立つので、妹に貰ったパーカーのフードを深く被って、周りの視線に気を配りながら歩いていく。たまにすれ違った人に見られるけど、声を掛けられたりはしないな。
「なあ、今の子、めっちゃ可愛くなかった?」
「あの子?ああ、可愛かったな」
「そっちも可愛いけど、フードの子の方」
「そっち?見えなかったわ」
聞こえてるぞ。確かに俺は美少女だけど、実際に言われるとむず痒くなるな。
「じゃあ、父さんは雪那のスマホの契約をしてくる。母さんは夕飯の買い物で、麻衣は雪那をよろしく」
「分かった!」
ということで、ここからは別行動でそれぞれ買い物をする。ちなみに、麻衣は妹の名前だ。
俺は妹に連れられ、モール内のランジェリーショップを訪れた。
「なんか、罪悪感が......」
当然、ここに売られているのは女性物のショーツやブラであり、俺が入っていいのだろうかという気分になる。異世界でも入ったことがあるけど、なかなか慣れないな。
地球に来てから家に帰っている途中も女子トイレを利用したが、すれ違った女性にめっちゃビクビクしてしまった。異世界ではだいたい野ションか男女共用の個室トイレだったから、まだ全然慣れてないんだよね。
「やっぱ白似合いそうじゃない?」
売られている女性下着から目を背けていたら、いつの間にか妹に試着室に連れ込まれて服を脱がされていた。
きゃーえっちー。
「ほらお兄、前に屈んで」
「狭いんだが......」
「こうやって胸を寄せて......」
「ちょ」
妹がブラの付け方を教えてくれているが、俺がブラを付けられているってのと、妹に生乳を触られているので恥ずかしくてそれどころじゃないんだが。
「おぉ〜やっぱ似合うじゃん。大きさはどう?」
姿見を見る。確かに俺は全体的に色素が薄いから白いブラが似合うな。天使とか妖精とか、そんな言葉が過る。
また、俺の胸は白のブラジャーに寄せられて谷間が出来ていて、いつもより胸が大きく見える。
違和感はあるが、ブラの内側のめっちゃ柔らかい謎の素材に丸ごと優しく包み込まれていて、少し気持ちいいかも。
すごいな。これがブラジャーか。
「わからん、初めてだから違和感しかない」
「んー、じゃ、店員さんに見てもらおっか!」
そう言って妹は店員さんを捕まえてきて、後は店員さんに従うままにブラとショーツを何着か選んで購入した。ブラはどうやらこのまま付けて帰るらしい。
店員さんは俺の髪を見て目をパチクリさせていたが、妹がアルビノだと言って誤魔化していた。アルビノって、遺伝子が原因で色素が薄い動物のことだよな?確か目が赤くなっている人もいたような。俺がアルビノなのかは分からないが、言い訳としてはちょうどいい。
そうして店を出ると、妹が自分の手のひらを見つめて「あれがEカップ......」と呟いていた。おい、感触を思い出すな。
その後も、俺用にパジャマや日傘などいろいろ買ってもらって、ピエンモールを後にした。
吸血鬼の生態ガチャ!
ガチャガチャ......ポンポン!
【R】マナから必要な物質を作る←[New!]
【R】生まれた時の体を保つ機能←[New!]
吸血鬼の生体図鑑!
【UR】
1.
【SSR】
2.日光は無理!
3.
【SR】
4.尖った耳、長い八重歯
5.吸血されるとキモチイイ
6.
【R】
7.不老で半不死
8.唾液に傷を回復させる効果
9.高性能な頭
10.マナから必要な物質を作る
11.生まれた時の体を保つ機能
【N】
12.他人の血液を魔力に変換して使う
13.マナ濃度の高い所に自然発生
14.だいたい性格がイっている
15.
16.
17.