37話 暇だ......
とうとう4月になり、みーさんと服部は学校が始まってしまったので、俺はずっと部屋に篭ってゲームする日々が続いている。
みーさんはちゃんと高校でも友達を作れたようで、休日に友達と遊びに行くこともあるようだが、部活はしていないらしいので、俺は放課後たまにみーさんの家に遊びに行っている。
最近の裏垢の活動といえば、リクエストに応えたり、頂いたものを着たり、超乱闘したり......あとは、たまにカラオケしたり、服部と配信したり......
まあ、特に新しいことはしていない。
最近の自撮りで伸びがよかったのはバニーガールと裸包帯かな。どちらも1000リオワータと1万フェバくらいついた。
でも、みーさんを縛った動画には全然及ばないね。
あの動画の伸びはすごかった。俺とみーさんセットでフォロワーが一気に5000人くらい増えたからね。
もう2人ともフォロワー5万人に届きそうだ。
そんな今日この頃。
平日だからみんなは学校に行っていて、俺は部屋に1人こもっているのだが......
「暇だ......」
暇である。
......いや、やるゲームはある。決して暇ではないはずなんだ。
だけど今はなんとなくゲームをする気分じゃなくて、その結果、暇になった。
わかる人にはわかると思う。
うーん、何しようかなあ。
外は憎たらしいほどの快晴だから出掛けたくもないし......
裏垢用に何かおもしろい写真でも撮ろうかな?
ここしばらくは、リクエストやプレゼントに応じているだけだったからね。
なんか、リクエストにも来ない、誰も思いつかないような写真を撮ってみたいな。
「ううむ」
誰も思いつかないといったら......異世界か?
異世界にしかないものをこちらの世界の人がリクエストできるわけもないし。
となると、魔物とか?
魔物と一緒に写真を......いや、魔物に襲われる写真とか、なかなかいいんじゃないかな?
巨大スライムとか、触手とか。
おお、なんだかめっちゃいい気がしてきた。
さっそく行ってみようか。
俺は異世界のローブに着替え、転移魔法を発動した。
「お?」
異世界は夜だった。
場所はあの街の冒険者ギルド前。
前回と一緒だね。
さて、来てみたはいいものの、そうそう都合のいい魔物とかいるかな?
とりあえず冒険者ギルドでいい感じの討伐依頼がないか探してみたが、特になかった。
まあそうだよね。エロゲの世界でもないんだし。
うーん、目当てはスライムか触手だけど、触手といったら、やっぱ海の魔物じゃないかな?
海なら、イカなりタコなりイソギンチャクなり、いるかもしれない。
ーーーーーーーーーー
てことで近くの港街までダッシュで来た。
さて、この街でも冒険者ギルドで何かいい依頼がないか探してみる。
依頼の掲示板を見てみると、ど真ん中に重要度大の赤い貼り紙の依頼が貼ってあった。
『巨大イカ討伐
沿岸部に巨大イカが現れ、海産物を食い荒らしています!
至急、駆除をお願いします!
報酬 白金貨1枚』
......あった。
俺はすぐさま依頼の紙を受付まで持っていった。
「これ受けます」
「え?あなたが?お1人で?」
「はい」
「えっと、申し訳ないのですが、この依頼は危険が伴うので、単独ならAランク以上、パーティーでもBランク4人以上じゃないと受けられないのです」
「私Aランクですけど」
「え?」
ギルドのランク制度か。あったなそんなの。
確か、駆け出しがFランクで、実力と実績によって上がっていくやつだ。
目安としては、Cランクが一流冒険者、BランクはCランク冒険者のパーティーと同等の戦力、AランクはBランクパーティー......と続いて、SとSSまであったかな。
これだとわかりにくいけど、まあだいたいAは街一番、Sは国一番を名乗れるレベルだ。
「し、失礼ですが、ギルドカードを拝見しても......?」
ギルドカードか。確かローブのポケットに......お、あった。ローブに着替えていてよかったな。
「はい、どうぞ」
「......!ほ、本物......」
俺は特にランクは意識していなかったけど、かわいい子に恩を売るためにいろんな魔物を討伐してたらいつの間にかAランクになっていたんだよね。
「し、失礼しました、セツナ・ハイブリッジ様」
それから無事依頼を受けられた俺は、直接依頼主に会って詳細を説明してもらった。
今回現れたイカは全長十数メートルほど。
夜行性で、今も絶賛海産物食い荒らし中とのことだ。
討伐にあたっての作戦としては、光魔法の使い手が同行して海を照らし、イカをおびき寄せたところを俺が攻撃するということになった。
それにあたってウェットスーツのような服をもらったので、これを着ていくことになる。
「それで、報酬の件なのですが」
「ああ、お金はいりません」
「え?」
きょとんとした顔をする依頼主の若いお姉さん。
この人はこの港街の漁業組合の長の娘さんらしい。
「その代わり、お願いを2つ聞いて欲しいんです」
「それは、どんな?」
「1つ目は、討伐に同行して、この魔道具に私を収めて欲しいということです」
そう言って俺はスマホのカメラを起動し、お姉さんに渡した。
「す、すごい、板に景色が映って......こんなの初めて見ました」
俺の目的は裏垢用の写真を撮ることなので、撮影役が必要だ。
このお姉さんには俺が触手に絡まれるのを録画してもらって、後からいい感じなところを写真として切り抜く。
それにあたって、拡大縮小の仕方を教えた。
「討伐に必要なので、お願いします」
「は、はい、わかりました。では、2つ目は?」
「2つ目は......ごめんなさい、まだ言えません」
2つ目のお願いは、血を吸わせて欲しいということ。
異世界から帰るのに必要だし、毎回ユーリアに頼むのも忍びないからね。
このお姉さんはこの街ではかなり裕福だろうから身だしなみもしっかりしていて綺麗だ。おそらく血もおいしいだろう。
でも、この世界で吸血鬼はかなり恐れられているからね。このお願いはまだ伏せておく。
「少し頂きたいものがあるんです。終わった後に言いますが、ダメならダメでいいです」
「わ、わかりました」
ってことで、さっそく依頼主のお姉さんと光魔法の使い手のお兄さん......長いからライトくんでいいや、を連れて海辺に行くことになった。




