32話 衝撃の事実はCMのあと!
妹の麻衣視点やります。
雪那が縛られてる頃の話です。
お兄が服部くんのアパートに出かけるのを見送った私は、両親とテレビ番組を見ていた。
お兄は土曜の夜はいつも服部くんのところへ行っていて、泊まってくることもよくある。
仲が良くていいことだとは思うけど、男女が同じ部屋で一夜を共にして何か変なことが起きないかとても心配になる。
『衝撃の事実はCMのあと!』
番組がCMになったのでなんとなくOwatterを眺めていると......何やらとても肌色の多い、えっちな写真があった。
どうやらクラスの男子がフェバしたらしい。
白い髪の女の子がほとんど裸で大事なところだけ何かで隠して......?
「は!?」
これお兄じゃん!?!?
えっ!?何してんの!?
「麻衣?どうかしたか?」
「な、なんでもないっ!」
咄嗟に私の部屋に逃げた。
ーーーーーーーーーー
「はぁ、はぁ」
バタンと扉を閉め、もう一度写真を見てみるが......やっぱりこの女の子はどう見てもお兄が吸血鬼に転生した姿だ。
8000フェバもあったそのつぶやきをタップしてみる。
『ああああああああああ』
『えっっっっっっ』
『裸カラーコーン
裸絆創膏
裸おたま
裸トランプ
裸びっく○チキン←New!』
『発想が飛んでる』
『くちばしを胸に掛けるなwww』
『俺もスノウちゃんのおっぱいに吸い付きたい』
『はだかびっく○チキン並び替えてはっキりチくびかンだ(殴』
スノウ、日本語で雪。安直な名前だ。
プロフィールを見てみると、自己紹介には裏垢と書いてある。やっぱり、見られちゃいけないやつじゃん。
ってフォロワー2.5万人!?多すぎない?一体いつからやってたの?
下にスクロールしてつぶやきを見ていく。
『プレゼントいっぱい届きました。ありがとうございます!服とアクセサリーは着て、付けて、ちょっとずつ投稿していこうと思います』
『一眼レフと三脚、びっく○チキンを頂きました。ありがとうございます』
『超乱闘募集します!1人1戦でお願いします』
『頂いたトランプで隠しました』
『彼氏はいません。HTRさんは友達です』
『これからたまにHTRさんのチャンネルで超乱闘配信するので、よかったらチャンネル登録してください!』
『HTRさんと超乱闘のアマチュア大会にでます。HTRさんのチャンネルで配信します』
『頂いた園児服を着ました』
『カラオケで焔を歌いました』
スノウ......お兄は超乱闘の対戦を募集していたり、いろんなコスプレをしたり、えっちな写真をあげていたりしていた。
名前が出ていたHTRさんは、どう考えても、服部くんのことだ。
『スノウさんがリオワータしました:あの裸カラーコーンのスノウちゃんと映画館に来てるよ!』
お兄がリオワータしていたのは、お兄がかわいい女の子と並んでいる写真......ってこれみーさんじゃん!?
『ふぁっ!?』
『尊い』
『何見るの?全滅?』返信:『全滅です!』
『仲いいね』
『スノウちゃんは実在したんだ......』
『いいなー俺もリアルスノウちゃんに会いたい』
『こうして見るとスノウちゃんまじで白いな』
みーさんのプロフィールも見てみると、お兄みたいにコスプレしたり、えっちな写真をあげたりしていた。
みーさんも裏垢やってたんだ......フォロワー3.8万って、お兄より多いじゃん。
この前お兄がみーさんの病気を治したって言ってたのも、Owatterで知り合ったということだろう。
お兄、ずっと引きこもってゲームばっかしてると思ってたけど、こんなこともしてたんだ......
多分お兄のことだから、美少女であることを楽しみたいとか、美少女なのに引きこもりはもったいないとか思ったんだろうな。
確かに、お兄の可愛さは全世界に自慢できるレベルだ。フォロワーが何万人いるなんてこともあるんだろう。
でも、えっちすぎない?羞恥心とかないの?
こんなことして社会的に大丈夫なのか心配になるけど、そうだお兄は社会的にはそれ以前に死んでるんだ......どちらにせよ、フォロワーがこんなにいたらもう手遅れな気がするけど。
まあ、裏垢をやってることに対して、私がとやかく言うつもりはない。裏垢なんてことをしている動機が分からないわけではないし。
でも、全部私に黙ってたのは面白くないなー。プレゼントをいっぱい貰ってるってのも全然知らなかった。
全部お兄の部屋に置いてるのかな?
気になるし、見に行っちゃえ。
「お、お邪魔しまーす......」
私の部屋のすぐ隣にあるお兄の部屋。
すっかり女の子の部屋の匂いになっている。
電気を付けるとすぐ目についたのは、無造作に床に置いてある真っ黒な棺桶。これは服部くんに作ってもらったと言っていた。
棺桶の他には、ベッド、チェスト、クローゼットなどの家具類。あとはゲーム用のモニターかな。
棺桶と、クローゼットの上に座っている青いサメとカラーコーンを除けば普通の男の子っぽい部屋だ。
って、何、サメとカラーコーンって......
裏垢やってるとそんなの送られてくるの?
サメの横にあるのはカチャッチの箱だ。
なるほど、誕生日だからカチャッチ欲しいって言うと思ってたけど、それがなかったのは服部くんにやらせて貰えるからじゃなくて既に持っていたからか。
クローゼットを開けてみる。
半分は、お兄が男だった頃の、遺物?だ。
服とか、学校で使う道具とか。
で、もう半分は、とてもかわいらしい服が、たくさん。
巫女服、サンタ服、セーラー服、他いろいろ。
私も着てみたいやつがいっぱいある。
でも、このまま物が増えていってしまったら仕舞う場所が無くなっちゃうんじゃないかな?
続いて、ベッドを見てみる。
お兄も元男の子だし、もしかしたらベッドの下あたりに何か隠して......っ!?
「うぁっ!?」
びっくりして体が跳ねた。
何かとんでもないものが見えた気がしたのだ。
私はベッドの下に見えた、手を引っ張ってそれを取り出す。
......
女性の......首から下。
としか言いようがない。
これは......アレだな。うん。
見なかったことにしておこう。
私は女体を元の場所に戻した。
今度は棚の中を見てみる。
下の引き出しには、高そうな一眼レフと三脚、あとはゲームやコード......電子類かな。壊れやすいものを上に入れたくないの、分かるよ。
真ん中の引き出しには、下着類が入っていた。男物と女物が混在してて不自然さがすごい。
そして上の引き出しは......
「ひぇっ!?」
反射的に閉じて、またそーっと開けた。
これは、どう見ても、女の子がえっちの時に使うやつだ。
それがいくつも。貰いすぎじゃない?
思わずそのうちの1つを手にとってしまう。
新品みたいに綺麗だけど、箱に入ってたりはしてなかった。まさかお兄、こういうの使ってるのかな?これをお兄が使ったかもと思うとちょっとドキドキしてくる。
「......」
いや、ないない!お兄、中身は男だった頃のままだし。女の子の体でそんなこと......
どうせ、一日中ゲームばっかして......あ、でも、裏垢やってるくらいだし......
いろいろ葛藤を繰り広げるうちに、手に持っていたひとつを私の部屋まで持ってきてしまっていた。
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次の日。
お兄は服部くんの車に乗って帰ってきた。
プレゼントを送ってもらってるんだろう。
玄関でお兄を迎える。
「ただいまー」
「おかえりお兄」
プレゼントを入れる袋か何かを持っているだろうと思われたお兄は何故か手ぶらだった。
「そうだお兄、服をしまうところがないなら私の部屋使っていいよ」
「............え?」
面食らった顔をしているお兄に、私はしてやったりと笑ってみせた。