31話 誕生日
1週間後の土曜日。2月20日。
今日は俺の誕生日だ。生前のだけど。
この体としては俺が死んだ6月が誕生日な気がするけど、やっぱり今日の方が誕生日だという気持ちが大きい。
誕生日プレゼントとして両親に欲しいものがないか聞かれたけど、特になかったので水族館に連れていってもらった。出かける時は黒髪スタイルだ。
屋内なので日光は届かないし、薄暗いので顔も目立たず、何も気にせず楽しむことができた。
あと妹は家で血を吸わせてくれた。
そして夜。
俺は服部アパートに来ていた。
なんでも、プレゼントが来すぎてやばいらしい。裏垢でも誕生日は今日って言っていたんだよね。
「よっ」
「来たか」
「やばいのか?」
「ああ、やばいぞ」
服部は大学が春休み期間に入ってかなり暇らしい。
2月から休みで4月に新学期か。大学ってすごいな。
部屋に入るとダンボール箱が見上げるほど積み重なっていた。
いやどんだけ来たんだよ。
これは開封だけでも時間がかかりそうだ。
さて、どれから開けようか......
ーーーーーーーーーー
「おお、着物だ」
「スノウちゃんに赤を合わせに来たか」
「包帯か。今度はこれで隠せと」
「まあ、そういうことだろうな」
「お、龍のクエストXIだ!」
「俺もそれ欲しいんだよな」
「天使と悪魔のコスだな」
「いいじゃん」
「雪○だいふく」
「スノウだけに?」
「これなんだっけ。スノードーム?」
「これもダジャレだろうな」
「ロープ」
「......え、まさか俺が縛るの?」
「指輪だ」
「それはつけちゃいけない気がする」
「バイブ」
「3つ目だな」
「ち○こ」
「デカいな」
「箱?0.01?なんだこれ?」
「それ捨てていいぞ」
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パシャリ
プレゼントのうち服やアクセサリー以外のものをズラリと並べ写真を撮った。
すごい量だ。
一番多かったのは大人のおもちゃ。
こんなに種類があるんだなと感心するレベルだ。
今まで来たのと合わせると結構な数になる。
服やお菓子も多かったが、食べ物はちょっと困るな。
俺、できれば血以外は口にしたくないんだよね......
せっかくもらったものだけど、事情を知ってる服部とみーさんにあげるか。
服は、着物、バニーガール、天使悪魔、警察官、アニメキャラのコスプレ服、あとは変なTシャツとか......いろいろ来たのでしばらくは着るものに困らなそうだ。
『プレゼントいっぱい届きました。ありがとうございます!服とアクセサリーは着て、付けて、ちょっとずつ投稿していこうと思います』
写真をつぶやくと、すぐにお祝いのコメントがたくさん来た。
『おめでとう!』
『多すぎて草』
『え、誕生日だったの?』
『誕生日おめでとうございます』
『大事に使ってください( ᴖ ᴗ ᴖ )』
『0.01送ったの誰やwww』
プレゼントの内容はともかく、こんなに多くの人に祝ってもらえるのはなんだかほっこりする。
こんなにプレゼントをもらってしまったし、ちょっとずつ期待に応えていかないとだな。
とりあえず今は服部がいなきゃできないことをしようか。
「ということで服部、縛って?」
「ああぁぁあああぁ!!」
服部にロープを渡す。
さすがに俺に縛られて喜ぶ趣味はないが、縛られる美少女になるってのはちょっとおもしろそうだ。
どうせならメイド服でも着てみよう。
ーーーーーーーーーー
「燃え尽きたぜ......真っ白にな......」
「むー!むー!」
何も見えん。何もしゃべれん。
そんなところで燃え尽きてないで写真を撮ってくれ。
俺はメイド服を着て、エビ反りの体勢で宙吊りになっていた。
その上目隠しされ、口にはガムテープを貼られている。
最初は簡易なものだった。
手足を縛ったり、椅子に固定したり。
しかしそれがだんだん調子に乗ってしまって亀甲縛りになり、そこから数歩先に行った結果こうなった。
「むー!」
「燃え尽きたぜ、真っ白にな......」
「むーー!」
服部は理性との死闘でこの有様だ。
いつ写真撮ってくれるの?
ロープって意外と丈夫でね、こんな風にギチギチに縛られると俺の力でもちぎれないんだよ。
「むーー!」
服部が正気を取り戻したのはそれから30分後のことだった。
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「......はっ!俺は今まで何を!」
「むー!」
「高橋!?」
やっと戻ってきた......
早く写真を撮ってくれ。
服部はすぐに写真を撮り、口のガムテープを剥がした。
「......動けない」
「うわああすまんすまん、目隠し外すぞ」
「んっ......」
「うおぉお前変な声出すなよ」
「耳と擦れたんだよ。もっと優しく外せ」
服部は前屈みになりながら、えび反りに吊り上げられた足からどんどんロープをほどいていった。
「まさか宙吊りで30分も放置されるとはね」
「俺そんなに死んでたのか......すまん」
吸血鬼が自身の体重程度で体を痛めることはないんだけど、ずっと体の自由が利かないのはなかなかにきつかった。
「でも、俺はまじでがんばったんだよ。......ちょっとこれ見てみろ」
服部は何やら本棚のカーテンの裏をがさごそとまさぐり始め、何か薄い本を取って見せてきた。
本のタイトルは『やめてくださいご主人様』。
表紙にどデカく描かれていたのは、まるでさっきの俺と同じように目隠し宙吊りにされた白髪メイドだった。
「お前の性癖かよ!!」
「ああ。しかもな?すぐそこにバイブがたくさんあるんだぞ。やばいだろ?」
「ひっ......お、お前は何をしそうになっていたんだよ......」
思わず体を守った。
「あ、そ、そうだ、写真!写真くれよ」
「おう、今送るぞ」
4枚の写真が送られる。
メイド服で手足を縛られ床に倒れている俺、椅子にぐるぐる巻きにされている俺、ベッドで亀甲縛りされてる俺、目隠し宙吊りされてる俺。
「なんか......やばいな」
「だろ?」
なんていう破壊力だ。
いい感じに縛られる美少女が撮れている。さすがは服部、こういうのが好きなだけあるね。
縛られてるのが俺じゃなかったら俺も興奮していたと思う。
ということで、この4枚をOwatterに投稿する。
『頂いたロープで縛られました』
投稿すると、例によって通知がすごい勢いで流れていった。一瞬服部も見えた。
『誰に!?』
『ありがとうございます』
『うわああ!?』
『4枚目ww』
『何してんのw』
『俺もスノウちゃんを好きにしたい』
このつぶやきの伸びは余裕で過去最高記録を更新。
最終的にリオワータが2500、フェバが1.8万もついた。
2月20日...この作品の投稿を始めた日です。




