25話 大学
服部との超乱闘生配信の翌日、ふいに、服部から電話がかかってきた。
服部は今大学のはずだが。
「もしもし」
『高橋ぃぃ!』
「うわ......なんだよ」
『聞いてくれ。俺のアカウント、大学の友達にバレてた!!』
ん?服部のアカウント?つまり?
ああ、なるほど、昨日のか......
「大丈夫か?」
『ひどい目に遭った。まだ体の節々が痛い。次体育なんだが、助けてくれないか?今度なんか奢るから!』
なるほど、つまり治癒魔法をかけて欲しいと。
うーん、でもなあ。
「んー、俺今日から生理なんだよね」
『え、あるのか?』
「そりゃあ体の構造はほぼ人間だからね」
そう、吸血鬼にも生理があるのだ。
親がおらず自然発生する吸血鬼だが、実は人間と子供を作ることができる。
でも子供は完全に人間になるので、本当に体はほとんど人間なんだろうな。
まあ、俺も長く生きると思うけど、さすがに女の身で子供を作るのは嫌かな。
『まじか』
ということで、残念なことに今日は生理だ。
今朝は痛みで目が覚めた。今もパンツにナプキンなるものを貼り付けている。
異世界ではコットントレントって魔物から取れる綿のシートを使っていたが、あっちの方が気持ちいいし吸水性も高かったな。
『なら無理しなくていい、すまんな』
「んー、いや、大丈夫だよ。今いく」
服部にはかなりの恩があるからね。
棺桶を作ってくれたこと、プレゼントの中継になってくれていること、服を貸してくれたこと。
その恩返しのためならこの程度造作もない。
むしろもっと俺の事を扱き使って欲しいと思っていたところだ。
『本当か?よくわからんが、寝てた方がいいんじゃないか?』
「いいから。今から行くわ、ちょっと待ってて」
まあ俺はそんなに症状が重い方ではなくて、下腹部が痛いのと、眠いのと、あとはちょっと体がだるいくらいだ。
生理前もちょっと眠いくらいなので、昨日の配信もほぼいつも通りやれた。
といってもこの痛みには1年半経っても慣れる気はしない。
なぜか治癒魔法も解毒魔法も全然効かないんだよね......
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ということで、すぐに着替えて電車で大学に来た。
今日は晴れだが、ここは大学なのであまり目立たないように日傘は我慢し、パーカーのフードとマスク、手袋だけ身につけた。
服部はもう体育の授業が始まっているらしいので、とりあえず体育館らしき場所を探す。
てか、建物が多いな。大学ってこんなだったのか。
闇雲に探しては時間がかかるだろうが、俺には魔力感知がある。激しい運動をしている魔力の集団を探したら、体育館はすぐに見つかった。
結構大きい体育館だ。
外のドアからちらりと中を覗いてみる。
バスケットボールの授業をしているようだ。
服部もいた。ちょうど試合をしているところのようだが、ちょっときつそうな表情をしているね。
さっそく、俺は解毒魔法と治癒魔法を服部に向けて発動した。
すると服部はハッと立ち止まりキョロキョロと辺りを見回した。
手を振ってみる。
あ、目が合った。
服部は感謝のポーズをして、試合に戻っていった。
ではせっかくだし、授業が終わるまで見学していようかな。
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授業後、いの一番に体育館から出てきた服部が駆け足でこちらに来た。
「助かった、ありがとうな高橋。でも体調は大丈夫なのか?」
「ん、まあ、普通にしてる分には平気だよ」
「そうか。にしてもその格好まじで不審者みたいだな」
そういえば服部はあまりこの姿の俺は見ないね。いつもはこれに傘も差してます。
一応これでも小柄な女の子に見えるということが救いかな。
「それ日光きついんじゃないか?どっかの空き教室にでも行って話そうぜ。次は空きコマなんだよ」
「助かる」
そう言って、足早に歩き出した服部に付いていくが......
「おい、服部が女の子を連れてるぞ!」
「なん......だと......!?」
「ま、まさか......?」
おや?
「げ。見つかったか」
体育館から出てきた男3人。
この人らが服部の友人たちかな?
「友達でしょ?別にこの人たちが一緒でもいいよ」
「いいのか?」
「まあ、すぐに帰るし、挨拶くらいなら」
ということで、即座にスノウちゃんモードに切り替える。
「服部さんのご学友ですか?よかったら、空き教室で話しませんか?」
「は、はい。あの、もしかして......」
ん?ああ、なるほど。
俺は目深に被るフードを少し上げ、赤目と白髪を見せた。
「「「......!!」」」




