14話 俺の理性はやられてしまった!
一度だけ服部目線やります。
美少女が下で寝ているベッドで寝るという謎の実績を解除した。
少し並び順が違ったら全年齢さんとさようならすることになっていただろう。
なぜそんなことになったのか。
ありのまま、起こったことを話していくぜ。
親友の高橋が死んだと思ったら美少女になっててベッドの下で寝ると言い出した。
何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何を言われたのか分からなかった......
いや確かに、狭くて暗いところといったらそこが一番お手軽なんだが!
とにかく、あの日ずっと正気を保っていた俺を褒めてやりたい。
あれからもう1週間。
心なしか大学の勉強も前より順調になっているように思う。
今までの後悔に押しつぶされそうな日々が嘘のようだ。
面白い話だ。
高橋を失った傷を少しずつ埋めてくれていた存在であるスノウちゃんが高橋本人だったのだから。
ということで、高橋が生きていた。
見た目は美少女になっていたけど、高橋は高橋のまんまだった。しゃべり方も、性格も、何も変わっちゃいない。
変わっていないだけに、今のあいつは中途半端に美少女の自覚があるだけで、いきなり俺の前で服を脱ぎ出すとか信じらんないことするけどな。襲われるとか思わんのか?多分、十字架でも用意すれば好きにできてしまう。
埋葬されたマイソウルフレンドに手を出してしまいそう。これは半分言いたかっただけ。
でも、やっぱりあいつが生きてて本当によかった。これは半分だけじゃなく、声を何倍にもして言いたい。
「で、できたああ!!」
いきなりだが、できたのだ。
棺桶が!やっと!
黒一色の棺桶。香りと防音性を重視して材木と塗料を選び、光が入らないように緻密に加工した俺の渾身の一作だ。
本来動かぬ死体を入れるための棺桶だが、内側から掛けられる鍵を取り付けている。
高橋の安眠を第一に考えた設計である。
中学の工作道具に毛が生えたくらいの道具しか持ってないにしてはいい出来だと思うが、1週間も待たせてしまったな。工作道具に毛が生えて使いにくかったと言い訳しよう。
さっそく連絡するか。
そういえば、棺桶を作るのに集中しすぎて忘れていたが、スノウちゃん宛てのプレゼントがうちにだいぶ送られてきていたな。
Owatterを立ち上げ、スノウちゃん......高橋のダイレクトメッセージを開く。
最近の高橋は、俺が数着貸したコスプレ服を着て自撮りを投稿しているようだ。
カラオケ動画とメイド服がかなり伸びたのもあって、フォロワー数はどんどん増えている。始めて2週間ちょいだと言うのにもう7000人に届きそうだ。
『高橋、朗報が2つある』
『何?』
『1つ目、棺桶ができたぞ。2つ目、プレゼントが結構届いてるぞ』
『すぐ行く!!』
『今日晴れだが、大丈夫か?』
『夜行く!!』
『あいよ。じゃあ泊まっていきな』
ダイレクトメッセージが多すぎてほぼ返信しないスノウちゃんとやり取りするのはなかなかに優越感を得ることができる。
ところであいつはあまり気にしていないようだが、スノウちゃんは今ネットで話題沸騰中という様子だ。
まとめサイトやスノウちゃん専用の掲示板もできていて、スノウちゃんガチ恋勢が結構出没している。
最近の掲示板はだいたいこんな感じだ。
『白の猫耳似合いすぎw』
『小学生みたいな顔して胸あるの卑怯』
『ふぅ......』
『ついにスノウちゃんがプレゼント機能使うらしい』
『俺着ぐるみ送ったンゴw』
『スノウちゃんぺろぺろ』
『こんなかわいい子が今まで隠れてたの不思議すぎる』
『学校通ってるよな?』
『15歳だとは言っていたな』
『カラオケ動画は金曜日の昼間だったし、学校に行っていない可能性はあるかも』
『スク水まだかな』
あいつニートバレかけてんぞ......
まあ、住所と正体さえバレなければ問題なくやっていけるだろうが、まずい流れになったら俺がいい感じに話を持っていくことにしよう。
さて、あいつが来るまでアニメでも見てるか。
◇
ピンポーン
「はーい」
「よっ」
来たか。持ってる荷物はおそらく先週貸したコスプレ服だろう。
しかし、美少女が来ると分かっていてもちょっとドキッとしてしまうな。
「棺桶できたって本当か!?」
「ああ、とりあえず上がれよ」
高橋を家に上げると、すぐリビングに置いてある棺桶に気づいたようだ。
「おおおぉ!すげえ!棺桶だ!」
「おう、棺桶だぞ。大きさはどうだ?」
「んー、入っていい?」
「ああ。ここが蝶番で繋がってるぞ」
そう言うと高橋は荷物を置き、棺桶に入っていった。
「ピッタリだ、最高だよ服部!そうだ、何かお礼させてくれないか?」
「お礼?」
「ああ、もちろんお金は払うけど、他にも何か俺にできることはないか?あ、常識的な範囲で」
「じゃあおっぱいを揉ませてくれ」
「お前の常識大丈夫か!?」
だめか。
「......ん?これなんだ?」
「気づいたか。鍵だな。内側から掛けられるぞ」
「神か?」
「あ、そうだ、俺中入れないからそれちゃんと使えるか分からないんだわ。ちょっと試してくれよ」
「分かった」
そう言い、そっと棺桶の蓋を閉める高橋。
......
......
「......あれ?高橋?」
しばらく待っても高橋が出てこない。
「おーい、高橋」
返事がない。
何してんだこいつ?
蓋を持ち上げてみる。ってあれ、鍵が掛かってない?
「すー......」
「え」
ね、寝てる!?
こいつ、鍵も忘れて何してんだ!?
「......くっ」
今なら何かしてもバレないかもしれないということに理性をゴリゴリ削られる。
寝るならせめて鍵を掛けてからにしてくれ......
「高橋起きろ!」
俺の理性が持つうちに。
肩を揺すると、手の近くで高橋のパーカーの2つの膨らみがゆさゆさと揺れた。
......ぁぁあああああ!!!
俺の理性は死んだ。
両の手でおっぱいを掴む。
厚手のパーカーを着ているので目立たなかったが、掴んでみると改めて分かるEカップのボリューム。
落ちる蓋。
手の動きに合わせて伝わる柔らかさと手に吸い付くようなキメ細やかさ。
大きな音と共に腕に伝わる衝撃。
「いっでえええ!!?」
棺桶の蓋に腕が挟まれた。
なぜ?
蓋が立っていたところには、愛猫のミケの姿。
俺は理解した。
こいつがいなければ大変なところまでいっていたということを。




