12話 服部アパート
服部の車で妹を家まで送った後、車に揺られること30分くらいで、服部の大学近くのアパートに着いた。今の服部の住居だ。
俺が死んだ後、服部は高校を無事卒業し、大学で工学系を専攻して勉強しているらしい。
大学帰りにときどき俺の墓に寄っていて、今日はたまたま会ったとのことだ。
これだけ近い大学なら普通は実家から電車で通うんじゃないかと思ったが、服部の希望があったのと、就職前に一人暮らしの経験を積むことに親御さんも賛成したそうで、飼い猫のミケを連れて1人と1匹で暮らしているらしい。猫動画で部屋が変わっていたのはそういうことか。
「お邪魔しまーす」
部屋に入れてもらう。
服部は電気をつけ、その瞬間、固まった。
「高橋お前......」
「な、なんだよ」
「めっちゃかわいいな」
なんだいきなり。
「吸血鬼ってどの辺が吸血鬼なんだ?」
「ん、ほら、耳が尖ってるのと......牙があるんらよ」
「おお......なんかエロいな」
こいつ大丈夫か?
「耳触っていいか?」
「別にいいよ」
髪を分けて耳を服部の方へ向けると、おずおずと指でつついてきた。
「おお......」
「っ......あ、あんまり先の方はダメね」
「なんでだ?」
「吸血鬼の耳は性感帯でね。先の方は特に敏感なんだよ」
「うわっ!?」
瞬時に後ろに飛び下がる服部。
童貞みたいな反応でワロタ。
しかし、耳がこんなに敏感で何の意味があるんだろうね。
「にゃー」
「おー、ミケじゃん」
寄ってきたミケを抱き上げる。初めて見る顔だろうに、こいつは本当に人懐っこいな。
同じ白毛なので、顔を横に並べて服部に見せびらかす。
「おそろいー」
「おぉ、なんか、うちにスノウちゃんを上げてるんだなって感じだ。ああそうだ、高校の時作った服がうちにいくつかあるから、着てくれよ」
「まじか!?」
そうだ、服部と、ついでに俺も高校では服飾部だったのだ。服の部だけに。
俺と服部はよく2人でかわいい服を作ってはクラスの女の子に着てもらっていた。作った服は女の子にあげるか部に飾っていたが......
「ああ、メイド服と魔法少女コスは何をしてでも持ち帰ったわ。他にもあるぞ」
「でかした服部!」
まさかこんなところで服無い問題が解決できるとは。
メイド服はリクエストが一番多かったし、ようやく期待に応えられる。
「コスプレスタジオも結構高いから困ってたんだよね」
「ん?お前、熱帯雨林通販のプレゼント機能は使わないのか?」
ああ、あれか。
プレゼント機能とは、世界最大の通販サイトである熱帯雨林通販のサービスの1つであり、相手の住所を知らなくても匿名で物を買ってプレゼントできるというものだ。
プレゼント機能のリンクを公開して欲しいというリクエストが結構来ていたから、俺にコスプレ服を送りたい人がそこそこ居るんだと思う。それは把握していたんだが......
「裏垢は家族に秘密にしてるんだよね」
「ああ、そういうことか」
自分で買う訳じゃない以上プレゼントがいつ来るか分からないので、家族がいるときに来てしまえば追及は免れない。
「だったら俺を経由すればいいよ。俺の住所に送って貰って、後からお前に渡せばいい」
「まじ?いいの?」
「任せとけ。じゃあ、それ用のアカウント作っとくわ」
なんだこいつ、神か?面倒だろうに、ありがたいな。
これで、俺もフォロワーの期待に応えられるかもしれない。
「さておき、最初は何にするんだ?」
服部はそう言って、部屋のクローゼットを開けた。
いろいろ服がかかっているな。服部は自分で着る服はだいたい黒系なので、目立つ色のものはだいたい服飾部で作ったものだろう。
「メイド服かな。一番リクエストが多いんだよ」
「やはりか......はいよ」
白と黒のフリフリのメイド服を渡される。
懐かしいメイド服だ。
がんばって作って、服部のクラスのかわいい子に着てもらったよな。
俺はメイド服を机に置き、着ているパーカーの裾を上げ......
「......ちょ、待て待て。ここで着替えるな」
......ようとしたら、なんか服部が止めに来た。
「あ、すまん。この部屋で写真撮っちゃだめか?」
「そういう意味じゃないわ!」
あ?
「さすがに俺の目の前で肌を出すのはやめてくれ。というかお前に恥じらいはないのか」
ああそうか。
あまりにもこいつが気安いもんだから、以前のノリで普通に着替えようとしてた。
でも別にこいつになら裸を見られても恥ずかしくはないな。エロい目で見られるのに抵抗はあるが、際どい写真をあげている裏垢を知られている時点で手遅れだし、襲われても抵抗できるし、別にこいつの目が届かないところで着替える必要はないんじゃないか?
ってことを言った。
「......」
なんだその顔は。
◇
メイド服に着替えた。
俺たちが作ったやつだから着方はバッチリだ。
「服部、着替えたよー」
「お?」
ずっと後ろを向いていた服部がこちらに向き直る。
「んー、胸の辺りがちょっとキツいな」
「............いいや高橋、最高だ」
「まじか?ちょっと写真撮ってくれよ」
「おう、ちょっとハタキ持て」
「う?」
どこからともなく取り出してきたハタキを握らされる。こいつハタキなんて持ってるのか。
メイドと言ったら丸いトレイとコーヒーカップな気がするが、まあ普通こっちの方が持ってないか。
なんて思ってるうちにパシャリ、パシャリとスマホで写真を撮られる。
「ほら、見てみろ」
服部のスマホにはメイドになった俺が収まっていた。
白と黒のフリフリのメイド服は俺の白髪といい感じにマッチしていて、目の赤色が際立ち芸術作品のような味わいになっている。
胸元があいているタイプのメイド服だが、サイズが少しキツくて胸が押し込まれるから谷間が強調されている。非常にえっっっだ。
作った際のこだわりポイントである、ミニスカとニーハイの間の絶対領域もとても素晴らしい。
「いいな......これ送ってくれ」
「おう」
胸の辺りが少し恥ずかしいが、谷間なら裸ワイシャツの時にも出してるし、今更恥ずかしがっても意味ないか。これを裏垢に投稿する。
Owatterのダイレクトメッセージに写真を送ってもらい、ダウンロードしたら裏垢に投稿する。
この投稿は6000フェバを超えた。
吸血鬼の生態ガチャ!
ガチャガチャ......ポン!
【SR】耳は性感帯←[New!]
吸血鬼の生体図鑑!
【UR】
1.
【SSR】
2.日光は無理!
3.
【SR】
4.尖った耳、長い八重歯
5.吸血されるとキモチイイ
6.耳は性感帯
【R】
7.不老で半不死
8.唾液に傷を回復させる効果
9.高性能な頭
10.マナから必要な物質を作る
11.生まれた時の体を保つ機能
【N】
12.他人の血液を魔力に変換して使う
13.マナ濃度の高い所に自然発生
14.だいたい性格がイっている
15.力が強い
16.
17.




