11話 スノウちゃん......?
「スノウちゃん......?」
「へ?」
「スノウちゃん......だよね?あ、そっか、神奈川住みだって......ってあれ?俺の名前知ってた?」
え、待って待って。
なんでこいつ、俺の裏垢のこと知ってるの?
俺のOwatterが見られた?確かに、想像以上に伸びてはいたけど、まさかこいつの目に入るとは。
「あの、俺です、『HTR』です!えっと、今日のカラオケ動画めっちゃよかったです!どうして俺の名前を......あ、もしかして高橋の知り合い?いや、高橋の墓参りしてくれる女の子なんていないか」
『HTR』さん。覚えている。
俺がパーカーと生足の自撮りを投稿した辺りでフォローしてくれて、ちょくちょくコメントを送ってきている人。
服部がゲームで使ってたニックネームと同じだなーとは思っていたけど、本人だったの?
にしても、こいつめっちゃ動揺してるな。めっちゃ早口だし、声が上ずってる。Owatterで見た白髪美少女が突然目の前に現れたらそりゃそうなるか?ちょっと面白くなってきたな。なんかさらっと酷いこと言われたし、意趣返しも兼ねて、ちょっと遊んでみよう。
「HTRさんでしたか、いつもありがとうございます!今日は大学でテストがあったんですよね。お疲れ様でした」
「俺のつぶやき見てくれてたんですね!はい、俺の大学ではこの期間を乗り越えれば2ヶ月の冬休みになるので、もうひと頑張りってところです」
「そうなんですね。では、陰ながら応援しています。あ、そういえばHTRさんは猫を飼っているんですよね。写真とか見てみたいです!」
「はい、ちょっと待ってください」
服部はスマホを出して、猫の動画を見せてくれた。見覚えのある白猫が美味しそうにエサを食べている。
「かわいい〜!相変わらず、ささみが好きなんですね〜」
「はい。昔からささみが大好物で......え?」
「あれ?前と部屋変わりました?引っ越したりしたんですか?」
「............」
服部は止まった。
「前は、ゲームの対戦中によく画面のキャラを追っかけてましたよね。それであなたに負けちゃった時は悔しかったですが、許しちゃいますよね〜」
「............」
もう一押しかな?
「この子があなたの本棚の奥から女物のパンツを持ってきたのはおもしろかったです。クラスの子に土下座で頼みこんで貰ったんでしたっけ?」
「..................高橋?」
どうやら気付いたらしい服部に、俺はにやりと笑ってみせる。
「久しぶり」
服部は面食らった顔で、俺の頭から足を見下ろし、また頭を見た。
............
「......高橋は音痴だぞ?」
「そこかよ!!」
最初に疑うのがそこかよ!
まず俺の見た目と性別が変わっていることをおかしいと思えよ!
「うまくなったんだよ、転生してな」
「転生......」
俺は死んでからの出来事を話した。
ーーーーーーーーーー
「ははははは!スノウちゃんは高橋だったのか!お前なんであんなことしてんだよ」
「う......ほ、ほら、せっかく美少女になったんだから、美少女として崇められたいじゃん?まさかお前に知られてるとは思わなかったよ」
まあ、こいつは理解がある奴だから大丈夫だと思ってたけどな。
「リオワータで回ってきてな。一目惚れしちゃったわ。お前じゃなけりゃ口説いてたぞ」
一目惚れて。そういえば、こいつは元から白髪が好きって言ってたな。
でもよかった。この様子なら、一線を越えることはなさそうだ。俺の不安は杞憂に終わったな。
「てか高橋、なんでここに来たんだ?自分の墓に来てもいいことないだろ」
「俺の墓があるって聞いて少し気になってね。妹に連れてきてもらったよ」
「ん?ああ、あそこにいるの麻衣ちゃんか?」
「うん」
「なら待たせちゃ悪いだろ。続きは......うちくるか?」
「いいの?もう夜になるけど」
「ああ、今一人暮らしなんだよ」
ほう、一人暮らしで女の子を即お持ち帰りとは、やるな。まあ中身は俺なんだけど。
じゃあ、いろいろ話したいこともあるし、お言葉に甘えてお邪魔することにしよう。
さっそく、今から遊びに行くことを妹に伝え、墓場を後にする。妹は『服部くん、お兄に変なことしちゃだめだよ!』って言ってた。まあ大丈夫だ。一応俺の方が力強いし。
その後、服部に連れられ、近くの駐車場にやってきた。何かと思えば服部が自分の車を持ってた。まじか。俺が死んでる間にいろいろあったんだな。確かに一人暮らしなら車があった方が便利だ。
俺は免許がとれないからちょっと羨ましい。まあ、生身で車より速く走れるんだけどね。