再会
「助けてくれてありがとう」
「当然のことしただけだよ」
「私っていつもいじめられてるみたい」
「みたい?」
「うん... あなたのこと、絶対忘れないから」
僕の頬に彼女の唇が触れる
「また会えたらいいね!」
彼女はそう言って、走り去っていった
鳥のさえずりが新しい冒険の始まり感じさせてくれる
朝起きて1階に降りると父さんが家を出るところだった
「起きたか凛真、眠れたか?」
「うん お父さんもう出るんだね」
「ああ お前も早く支度しな 転校早々遅刻するなよ」
今日はこの街に来て初めての学校だ
目標は・・・
小学生の時に公園で男の子にいじめられてる女の子を助けてキスされたのが全盛期
以来全くと言って女の子と縁がない...
中学校、前の高校と黒歴史を作り続けてきたが、新しい土地に来たことで全ては一新される...!
目標は彼女いない歴=年齢に終止符を...!だ
「ニヤニヤしてないで早く朝ごはん食べなさい!」
母さんに怒られた
教室に入ると、もうみんな席についていた...
普通に遅刻した...
「お、来たね 転校生の印田凛真くんだ 自己紹介しなさい」
「今日からこの高校に通うことになった印田凛真です よろしくお願いします!」
「じゃあ森目の隣の席が空いてるからそこに座れ」
女の子の隣...!
僕の時代きたか!?
「森目さん、よろしく...あ!」
彼女を見るやいなや小学生だった頃の全盛期の記憶が蘇る
「公園の子だ!」
高校生になったし顔は多少変わっているが、間違いようがない
僕の全盛期を作った思い出の女の子だ
耳に特徴的な3つの小さなほくろがあるのがその証拠だ!
我ながら覚えてるのきもいな...
「ねえ覚えてない?昔公園で君が男の子にいじめられてたところを僕が...」
彼女はきょとんとしている
「森目のことを話さないといけないな」
森目叶向はその日あったことを1日で忘れてしまうらしい
正確には、寝ると全てを忘れてしまう
つまり僕の全盛期の記憶は僕だけのもので彼女からしてみればそんなものはなかったというのだ...
しかし、寝るとその日あったことをすべて忘れてしまうっていうのはどんな気分なんだろうか
嫌なことを忘れられるのはうらやましいが、楽しかったこと、嬉しかったこと、感動したこと、全て忘れてしまうなんて想像もできないくらい悲しいことだ
そもそも学校来る意味あるのか?授業で習ったこととか全部忘れちゃうんじゃないの?
聞きたいことが山ほどある
放課後、森目さんに話しかけようとしたが、早々に教室を出て行ってしまった...
近くの席の女子に森目さんのことを聞いてみた
「森目さんって友達とかいるの?あんまり誰かと話してる姿見ないけど...」
「いるわけないじゃん 記憶ないんだし 友達になってもどうせ次の日忘れられてまた友達になるとこからやり直し 昨日と同じような会話してまた次の日も繰り返す 面白いわけないじゃん 最初は珍しい子だなって思われてみんなから人気あったけど、どんなに親切にしてもその親切にしたことすら忘れられちゃうんだよ 悲しくなるし、毎日続くとこっちがしんどい」
「うーん...気持ちは分かるんだけど、なんかその言い方はひどくないか!?」
「最初はみんなそう思うけど君も時間経てばこうなるから」
昨日は森目さんの話を聞いて、遠慮して話しかけられなかったけど今日は話しかけるぞ...!
教室のドアを開けると、森目さんは他クラスの女子3人に囲まれていた
「森目、この前貸した金早く返しなさいよ」
「...?」
「とぼけんじゃないわよ!」
「借りた覚えない...」
「覚えはないに決まってるでしょ!あんた病気なんだから!都合よく金借りたことも忘れられるなんてうらやましい病気だわ」
状況が分からなかったので周りで見てる男子に聞いてみる
「森目さんお金借りてるの?」
「借りてるわけないじゃん 森目さんが記憶なくすことをいいことに貸してもないのに貸したことにして金とろうとしてるだけ」
「なんだそれ...」
「止めるつもりならやめたほうがいいぞ 九院の彼氏は他校の不良グループの親玉的な存在なんだ 前に九院に喧嘩売った奴は病院送りにされてる」
ひどい...
でも、そんなの関係ない...!女の子が困ってるんだ...!
「おい!お前、森目さんは貸してないって言ってるだろ!」
「はぁ?あんただれ?きもちわる...絶対彼女いないっしょ」
「はい...いないです,,,」
撃沈した
「って彼女いようがいなかろうが関係ないだろ!わけのわからない言いがかりつけて金むしろうとしてんなよ!」
「うっさい!!」
「続けるなら先生に言いつけるぞ! 先生~~~!!!先生~~~!!九院さんが~~!!女子を~~!!いじめてま~~~~す!!!!!」
大声で叫び続ける
「先生~~先生~~先生~~先生~~九院さんが~~~~いじめを~~~~」
「おい、あいつやばいぞ」「ねえ、あれやばくない?」「あいつも病院送りにされるぞ...」
周りの生徒たちがざわざわし始める
この異常事態に、他クラスの生徒が大勢教室に集まってくる
「ねえ、もうやめない?」と九院さんの取り巻き
「分かってるわよ あんたまじでうるさい! タクミに言いつけてやるんだから覚悟しておいてよね!」
捨てセリフを吐いて、九院さんとその取り巻きは教室から出て行った
教室はまだざわざわしている
「森目さん、大丈夫...?」
森目さんは俯いて黙ってしまっている
「森目さn...」
「...ってもらえませんか...」
「え?」
「私と!付き合ってもらえませんか!」
え・・・?
「私と付き合ってください!」
こうして僕と寝ると記憶をなくしてしまう少女、森目叶向との不思議な関係が始まる
翌朝、
「ついに僕に彼女ができたんだ!うおおおおお~~!!」
登校しながら、昨日のことを思い返して心の中で叫ぶ
昨日は興奮して眠れなかった!
寝坊して登校時刻ぎりぎりだけど、すがすがしい朝だ!
うおおおお~~!!
「はあ~~~」
教室のドアの前で深呼吸
このドアを開けると...僕の彼女が...
ガラガラガラッ
「森目さ~~ん!おっはよ~~~!」
「おはよう、だれ?」
「ですよね~~~」
続く