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雨の日は思い出と共に  作者: 新津 未歩
1/3

#1 オープニング



 それは、本当に普通の、いつも通りの帰り道だった…。




梅雨の終わりの雨は激しい。


ニュースでは、数日の間に日本各地の大雨による被害が報じられている。


更に日本の近海では台風も発生しており、台風による影響で地盤が緩んだ土地では被害が拡大する可能性があったり、河川の氾濫が予想されていたりと不安になることばかりだ。


仕事柄新聞やニュースはチェックしている。


しかし、日々新たな災害が起こっており、少し前にあった災害についてはもうすでに触れられていないことが多い。


新しいことはどんどん更新されていくが、過去のことは忘れ去られていくばかりだ。


そこにいる人々にとっては、まだ終わっていない出来事だというのに、世間では「そんなこともあった」程度のものとなっていく。


しかも、ニュースにも流行があるらしく。


1度当たったニュースがあると、しばらくはそれに似たようなニュースが続くのだ。


例えば、医療事故だったり、政治家の献金問題だったり、幼児虐待だったり、芸能人の不倫だったり…。


同じようなニュースが続くと、それを見ている人たちは飽きてくる。


「またこの手のニュースか…。」


となるのだ。


すると、人々が飛びつくような別のニュースをピックアップし、出来るだけ見ている人たちが飽きないようにしていく。


ニュースでさえ、エンタテインメントになっているのだろう。


そんな風に感じてしまう。


更に、日々どんなに真面目に仕事をしても、真面目に過ごしたとしても。


1度失敗すれば責められる。たった1度だ。


1度の失敗を、世の中は許してはくれない。


かと言えば、当然だが隠蔽したとしても、バレたら烈火のごとく責め立てられる。


いつから、こんなに住みにくい世の中になってしまったのだろう…。




そんなことを考えながら、鞄の中に仕事の書類を入れる。


職場で片付けられなかった仕事を、家で一息つきながらする予定だった。


どうせ帰ったところで1人だ。


適当に音楽でも流しながら、書類に目を通さなければ…。


今日は、この前買ったばかりの新作のコーヒーでも煎れてみよう。




外に出ると、ザーーっと激しい雨が降っている。


昔から、雨は苦手だ。


嫌な想い出ばかり思い出してしまう。


だから出来るだけ、雨が降り出す前に帰りたかったのだが…。


「ちょっと、遅くなったかな…。」


そう呟きながら、私は鞄の中から折りたたみ傘を取り出す。


激しすぎる雨に対して、折りたたみ傘では心もとないが、それでもないよりはマシだ。


それに、遠くまで歩くわけではない。ちょっとの距離なら大丈夫だろう。


少し駆け足で歩く。


激しい雨はいくつもの水たまりを作り、靴だけでなくズボンの裾までも濡らしていく。


ほんのちょっとのつもりだったが、靴下も濡れてしまい、歩いているとグニグニとした感覚が気持ち悪い。


あの日も、こんな雨が続く梅雨の時期だったな…。


雨の日の独特の匂いは、遠い日の自分を思い出してしまう。


朧気だった記憶の輪郭を、くっきりと現わしていく。









初めての作品なので拙い点もあるかと思いますが、少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。

よろしくお願いします。

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