1.綺羅星印の飴玉屋
きゃー初連載!至らないところもありそうだけど頑張るぞい!
「飴屋のお兄ちゃん!飴玉おひとつちょうだいな〜!」
「いらっしゃい、お嬢さん。いつもの味でいい?」
「もちろん!ぶどう味が一番だもん!あ、あともも味の飴ちゃんを三つ!」
大都市・朔蘭の裏路地の一角に昇りたての太陽が光り輝き、天高く晴れた朝の光が差し込んだ。
そこには、古びた焦げ茶色の木造の小屋がポツリと佇んでいる。
古い木でできた看板に彫られた【綺羅星印の飴玉屋】という文字が昨日の雨で付いた雨粒をまとい、光に照らされキラキラと輝いていた。
小屋の中には右も左もぎっしり大量な瓶が並べられており、その中にはカラフルな飴玉が大量に詰まっている。
瓶にはラベルや商品説明の紙は一切付いておらず、ただ美しい透明な色が煌めいていた。
中央奥の会計には小さな木の机があり、その奥には店主の俺。手前には、制服を着た少女がいた。
彼女は代金と、持参した小さな巾着を渡してきた。華奢な手が可愛い。
この巾着は初めて来たお客さん全員にあげているものだ。この子はかなりこのお店に来ているから、布が柔らかくなっている。
実はこれ、一つ一つ、俺の手縫い。すごいだろ。
飴玉入れって持ってるだけでうきうきすると思うから、心を込めて作りたいんだ。
俺は大量の瓶の中から注文された飴玉が入っているものを素早く見つけ、蓋を開けて優しく巾着に入れていく。
どの飴がどこに入っているかは全て頭の中に入っているからね。
巾着に入れるたび、手の中に少しの重さと、コロンっという軽やかな音が静かに響く。この瞬間がすごく好きだ。
注文された分をひと通り巾着に入れた後、一番下段一面に並べてある飴細工を一本抜き取った。
これも全て手作りだ。
「お待ちどうさん。毎度ありがとう。これ、おまけね」
飴玉や飴ちゃんが包まれた薄いピンクの可愛い巾着と、棒の上に乗る宝石のように煌めくうさぎの形の飴細工を少女に渡した。
このうさぎさん、結構うまくいったやつなんだよね。可愛いこの子にぴったりだと思ったんだ。
「ありがとう!それにこれ、すごく綺麗……!
で、でも貰えないよ!飴細工って値段高いもん…………」
「だからこそ。感謝の気持ちとして贈らせてよ。また来て、飴買っていってね。待ってるから」
少女は顔を真っ赤にして下を向いてしまった。
どうしよう。なにかしでかしちゃった?!昔幼なじみに教わった対人術の“ういんく”とやらをやってみたけど、それがダメだったのかな?!
女の子にはとりあえずやっておけって言われたけど……難しいな……。
き、気まずいから話題を出さなくちゃ。
「そういえば、今日はその飴玉、何用に使うの?」
「えへへ、テスト用〜〜〜♪ 今回のテストは検査ないからね!存分に飴玉を活用できるよ〜!
あ、飴ちゃんはもちろんおやつ用だよ!」
やっぱりね。学生さんの大体はそのために飴玉を買っていくから。それについでに飴ちゃんを買ってくれるのはとても嬉しい。そっちだって、心を込めて作ってるんだ。
「なるほどね。テスト、頑張って。応援してる」
「うん!ありがとう!」
少女はお辞儀をすると、足早に学校の方向へと走っていく。
彼女の軽やかな足音が路地を明るくしていった。
少女が見えなくなってから、俺は外に出ると大きく伸びをして広い空を仰いだ。
真っ青などこまでも続く空、頬をくすぐる風が気持ちいい。
渡り鳥が五、六匹、気持ちよさそうに喉を鳴らしながら飛んでいくのが見える。
羽が光を反射してピカピカと輝いていた。
「よし、今日も頑張りますか〜!今朝はあと何人学生さんが来るかな?」
遠くを見れば、この店に向かっているであろう少女と同じ制服を着た男女が十数人見えた。
飴玉、数足りるかな…………?
俺は急いで数を数えるため店の中に戻った。
俺の名前は綺羅星恋宵。26歳の飴玉屋店主だ。
黒い瞳に、青緑のボサっとした短髪。セットめんどくさいんだよね。基本手ぐし。
服は……基本大きめTシャツにステテコのような柔らかいズボンかな。いかにもゆるゆるな格好ってやつ。
…………見たくれだけだと、俺はただのダメ男なような気がする。
しかし何故かモテる。
いやイラつかないでね!?嫌味じゃあないんだ。
高校生の時は性格が今と全く違っていて、幼なじみ以外は誰も近寄らなかったから、その……、モテるという概念がみんなとズレてるかもしれないけど。
家を勘当されてから…………己を見直して、性格もだいぶ丸くなってから、やけに人に好かれるようになったんだ。
人との繋がりの大切さを覚えたからかもしれない。
まあ、色々あったんだよ。
でもモテるってのはすごく大事で、一人で店をやってる俺からすれば、モテないと店が繁盛しないからね。とても有難いことではある。
んで、そんな俺が営んでいる「綺羅星印の飴玉屋」は名前の通りの飴屋さん。
口コミで広がってきて、ありがたいことに巷で有名な店になったんだ。
だけど、みんな疑問に思わないかな?
飴屋さんがそんな人気になるか?ってさ。
だってぶっちゃけ、コンビニに行けば売ってるもんね、飴。
あれだよ?この世界、コンビニもスーパーもゲーセンもあるからね?
よくある、古き良き中世世界的な感じではない。バリバリの現代世界である。
そしてこの世界には……………………魔法がある。
もちろん魔法が使えない人々が生み出した技術も魔法と同じくらい発展してるし、魔法使える使えない関係なしにみんな使っている。
ほうきや魔法のじゅうたんより車や飛行機の方が安全だしね。風の影響少ないし。
それでもやはり魔法が使えるってのは大きくて、当たり前のことだけれど使えない人よりは色々便利だ。
火を起こすにも、魔法が使えなければマッチとかライターとか使わないといけないけれど、魔法が使えるなら呪文ひとつだからね。
だけど昔のように格差はなくて、意外と平和に共存している。いい世の中だよね。
…………あれ、話がそれてる。
そうそう、なんでみんなが俺の飴を買いに来るかって話だ。
そもそも、俺の扱ってる飴は全部で三種類。
飴玉、飴ちゃん、飴細工だ。
飴ちゃんはみんなも知ってるただの飴。コンビニでも売ってるやつね。お手頃価格だし、いろんな味を展開してるから、もちろん大人気商品だ。特にチョコ味とラムネ味が人気だよ。俺はライチ味がお気に入り。
飴細工は俺の修行の賜物だ。
職人の元で何年も学んでようやく一人までになった俺が一から作り上げた可愛い動物達やハートや星などの模様の形をたくさん取り揃えてる。
値段は少し張るんだけど、それでも買う価値アリだって俺は思う。見て楽しい、食べて楽しい!最高の菓子だからね。
まあ、値段のせいだけど、主に大人が買っていくかな。でも、彼らが喜んでくれる顔は子供と何ら変わらなくて、俺も嬉しくなる。もっと凝ったものを作ろうってやる気が湧き上がってくるんだ。
そして、この店の最大の名物。
それが最初に挙げた「飴玉」だ。
名前にも入ってるだろ?“飴玉屋”ってね。
この飴玉には俺の人生と、秘密がが詰まっているんだ。
血と、涙と、後は友情諸々がね。
おっと、長く語りたいところだったけど、学生さんが集まってきちゃったみたいだ。
続きは、このお客さんのお相手をしてからだね。
今の俺はまだ、知らなかった。
この飴玉が原因で、この国が危険に陥ることになるのも、
俺の友人が、俺の家族(勘当されたけどね)が、俺自身が、世界の運命に巻き込まれていくのも。
この物語は、自由気ままに生きている飴屋の、そんな、奇想天外な物語だ。
さて第一話でした。
恋宵くん個人的にお気に入りです。
飴玉の秘密とはいかに?次回のお楽しみです。