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襲撃



「忘れたのか、俺達も最初に乗ったあの無抵抗なエランドが数人乗ったトラックだ」


 ドクが言う無抵抗なエランドというのは目隠しされた状態で手錠と足錠で身体を拘束されている者達の事である。


「武装しているのはモンペルの兵士とトラックの運転手くらいか、確かに拘束されたエランドは大丈夫としても10人を毎日集めていた元エランドのモンペルの兵士はどうする?」


「実質二体一だ、運転手は不意打ちで撃ち殺す、それに俺の予想が正しいとすれば運転手全員がトランクの鍵を持ってる筈だ、俺もお前も外側から開ける姿は見たからな」


「予想だって? 君の兄貴と一緒にトラックを襲撃したんじゃ?」


「冗談じゃないさ、その時はモンペル兵達に喧嘩を売る程俺達は肝が据わってなかった」


「だったら今回はどうして!? モッペルムオーにモンペルの兵士を殺した事がばれたら僕達はどうなるんだ?」


「俺とお前がモンペルの兵士に出くわすまでに大体1時間が経つ、残り6時間で手を打つにはこれ以外はほぼ不可能だからだ、モッペルムオーは常に弱肉強食を謳っている、部下だって害虫のように駆除するような奴だ、気にするな」


 とんでもないギャンブルだ、だが確かにこの時間で20人を集めるにはこれが最適な方法とも言えるだろう。


 もし成功すれば明日もこの手段を使える事になる、戦う事が素人の僕でも2対1なら何とかなる気がした。


 車が通ったのは本当にドクの家のすぐ近くだった、ドクの家はこの場所からは障害物で見えないが少し位置をずらせばここからでも見える距離にある。




「ここから発砲する、トランクを開けた後は一瞬でモンペルの兵士を斬りつけろ、スピード勝負だ」


「了解」




 距離は約100m、ドクの撃った弾は見事運転手の頭部に命中した。


 しかしアクセルは踏んだままだ、このままじゃ岩石の障害物にぶつかってしまう。


 トラックは岩石にぶつかりそのままトラックは止まった、爆発はしなかったがこの衝撃で異常事態なのは中にいるモンペルの兵士が気付いた筈だろう。


 僕とドクはゆっくりとトラックに近づいていき、運転手のポケットから鍵を探しだす。


 トランクの鍵穴にドクは鍵を挿し込む。


 ドッドッド!!!


 トランクを開けるとモンペルの兵士は何も無い荒野の大地に3発発射。


「うわっ!」


 ドンッ!!!


 一撃で済ます、ドクの初撃はモンペルの兵士のこめかみを貫いた。


 10人を毎日集めていたのも納得の腕だ、ドクの撃つ弾は極めていつも頭部である。

 怯えて僕は何もできなかったが下手をすれば弾丸を身体に貫かれて死んでいたのかもしれないのだ、あの時連射付きの銃でもドクにもらっておけば良かったのかもしれない。


「さて、害虫は駆除した、このままモッペルムオーの処まで向かうぞ」

「ああ……」


 トランクの扉を閉めようとすると中から「助けて」という老人のささやかな声が中で響き渡る。

 そしてそれに悲鳴が共鳴するように中で「助けてくれ」「助けて!」という声が響き渡った。

 

 残念ながら同情をする余裕はない、このまま20人を集められなければ俺かドクのどっちかが死ぬのだ、心を無にするのだ。

 しかし今思い起こせば自分がこの世界に来てからの始まりはこのトランクの中なのだ、もし自分以外にこの世界の住人では無いゲーム関係者がいたのだとしたら……。

 僕はドクがトランクの扉を閉めようとする手首を力強く掴む。


「何をするんだ理」

「待ってくれ、一つだけこいつらと話させてくれないか?」

「別にいいが助けたいとか言い出すんじゃないだろうな? 言っとくが俺達に同情している余地なんてものは!」

「分かってる! だが物凄く重要な事なんだ! この世界を……このクソみたいな世界を壊す手がかりになるかもしれないんだ!」


 僕は力強く言った、他人にここまで本気で説得をしようとするのは生まれて初めてかもしれない。

 きっとドクの本気な目に影響を受けていたのだろう、するとドクの方も何かを言いたさそうにするが言葉に詰まっている。


「分かった、お前の好きにしろ」

「ありがとうドク」


 僕はトランクを全開にするとエランド達の顔を離れた位置から覘いた。


「この中で地球という言葉を知っている者はいないか! もし知っていたら手を上げろ、嘘を言えばこの場で殺す」


 僕の声で全員の言葉が静まる、小刻みに震えている者もいたが助けてもらうために悩んでいる者だろう、警戒せねば。


「私、私その地球人です……」


 手を上げたのは女である、眼も髪も共に暗緑色と少し変わっていたので気にはしていたが。


「何故回答に遅れた?」

「それは……怖かったから……」

「僕が怖いか、だが地球には僕より怖い生物が沢山いるだろ? 例えばゴジラとか」

「ゴジラは映画の中の生物ですよね……? 私もその映画は好きです、確かに怖い」

「っふん、いいだろう」


 僕は女の元まで歩き、手錠の鎖を握ってトランクの外へ連れ出す。


「お、おい! 女に惚れやがったか? 神の食事は一匹でも重要にするべきだ、そいつをトランクの中に戻せ!」

「聞いてくれドク、こいつは僕達の仲間だ、それにこの世界を壊す鍵になるかもしれない、信じてくれ」

「さっきのあの質問がその鍵のヒントっていうのか? なんなんだ地球だのゴジラだの」

「私あなたの事知っています、ドクさんですよね?」

「何で俺の名前を!? まさか兄貴を殺したのはお前か!」

「ち、違います! だって説明書に……」


 とにかくドクを落ち着かせるために今にも飛びかかろうとしている身体を両手で押さえつける。

 彼女は説明書といった、ゲームは説明書なんて読まずプレイする僕にとっては大変ありがたいプレイヤーだ。彼女は絶対に生かすべきである、間違いなく僕達の中の誰よりもこのゲームに詳しいのは彼女なのだから。

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