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side boy

 どうやって話しかければいいのだろうか?

 中学校に入学して初めてのゴールデンウィークに突入しようとしている。

 入学式の時、アイツに似た人だと思ったが、クラス内の自己紹介の時間でアイツ本人だと分かったのだが……。

 可愛くなりすぎだろ。何あれ、美人過ぎて緊張するっての。

 っていうより、俺のことを覚えているのだろうか?

 前の学校で気の合う人がいてソイツと彼氏になっているかもしれない。

 あそこまで美人だとそう思ってしまう。

 っていうより、そこまで顔が良くもない俺何かが声をかけるのは流石に、迷惑だよな……。

 落ち込み気味で通学路で通る小学校の母校を通りながら思う。

 テンションが下がっているのは、声をかけられないからというより、アイツに彼氏がいるのかもしれないという方だ。

 実際どうなんだろうか?

 まあ、一人で導き出せない答えを考えこんでもしかたがないのだが、不安でつい考えてしまう。

 今日は三十分ほど寝坊したため、いつもよりも一時間程度遅く出る。

 全力疾走をすれば、一時間目の半ばくらいに到着するだろうが、一時間目は得意科目の数学で、中学校の復習的なやつなので教師の説明何か聞かなくても教科書を読んだだけで分かる。面倒な俺は一時間目が始まる五分前に担任に今起きた事を伝えて、二時間目に来るということ伝えた。親は仕事でいないし、遅れても学校に行っていれば怒られることはない。

 まあ、遅刻自体を許されるのは今月一杯だけだろうからゴールデンウィークが終わってから引き締まればいいだろう。

 ん?

 視界に入ったのは小学校の校庭の側面にカメラを持った中年男性がいた。

 その男性の視線の先には体育の授業をしている児童達がいた。

 ひょっとしたら盗撮というやつなのか?

 いや、だとしたらこんなに堂々とするか。でも、堂々としているからこそ怪しまれないのかもしれない。

 住宅街に囲まれている学校だが、この辺は共働きが多いとか母さんに聞いたことがある。もしかしたら、この時間帯が人通りが少ないのかもしれない。

 とりあえず。知人の警察官に頼むか。

 ポケットの中にある携帯電話を取り出して、その人の連絡先に電話をかけると、三コール目で出た。

 「もしもし。内海です。夏輝兄さん。今お時間良いですか?」

 アイツの兄に電話をかける。

 アイツが戻ったのは近くに引っ越した兄の家に住んだからである。

 何でわざわざ兄の家に行ったのかは知らないが、複雑な家庭事情なんだと思い、深入りするのをやめている。まあ、嬉しいからいいけどさ……。

 『全然構わないが、この時間帯は普通、学生は授業中だろ?』

 痛いところつかれるが、自分のことよりも、近くにいる被害者を救いたいのである。

 「遅刻を言い訳にしたサボりと捉えて構いません。それはそれとして、母校の小学校の敷地付近で児童を盗撮している輩がいるのですが、どうすれば良いのでしょうか? やはり待機が一番でしょうか?」

 『学校行っている最中に出くわした感じか。丁度夜勤が終わって家に帰るところだったんだ。家も近いかr――――』

 その時、盗撮犯と目が合うと、その男はカメラをバッグにしまい逃走した。 

 「すみません。どうやら、自分の存在がバレたみたいなので、追跡します」

 『追跡ってt――――』

 電話を切って、携帯電話をポケットの中に入れて追跡する。


 足の速さは正直自身がないが、気にしてはいる。

 幼稚園の時から運動会で散々笑われ、鬼ごっこで鬼になったら運がない限り他の人にタッチできない。努力もしないで、小六の運動会が終わるまで走力を向上しようと思わなかった。

 先月廃刊になった学年誌で中学生デビューとかいう記事を鵜呑みして鍛錬したといと思ったのである。

 最近知ったのだが、新生活での何たらデビューというのは、前の生活でイジメなどによる不当な扱いを受けた者が新天地でそのようなことを再び繰り返さないためにする手段らしい。

 市立なため、極端に言えば、近辺に住んでいる同い年の連中を詰め込めただけの学年であり、小中学校が一緒になるのは必然と言っても良いだろう。それに、私立や隣町に引っ越して違う学校にいっても、ネットが普及されている時代だから、外見の極端な変化は顔が広い人から盗み撮りされてチャットとかで晒されるのがオチだろう。

 そう考えると、数千キロメートル以上離れないと外見の変化は厳しいため、案外内面の中学生デビューは悪くないのかもしれない。


 「ハァ……ハァ……」

 私の足が速くなったのかそれとも、盗撮犯が鈍いのかはわからないが、彼から約三メートルほどの距離感を保つ。

 男は近くにあったゴミが入っているコンビニ袋を投げつけると、それは視界を遮ったため、私がそれを受け止めると、男は消えていた。近くの角を曲がったのだろうか?

 そう思って右折しようとすると、男の声が聞こえてきた。

 「た、助けてくれ、少年が、私をカツアゲしようと……している」

 マズイ。どうやら、学校をサボってオヤジ狩りをしている不良として誰かに助けを求めたらしい。

 角の先が視界に入ると、私はホッとした。

 なぜなら、彼はアイツの兄に助けを求めていたからだ。

 「夏輝兄さん。コイツです。盗撮犯」

 私がそう言うと、男は青ざめる。それもそうだろう。中学生が警官と知り合いであるのは珍しいのだから。

 「ち、違う」

 男は後退りしながら、立ち去ろうとするが夏輝兄さんに腕を掴まれる。

 「違うのなら、堂々としてて下さいね。潔白が証明すれば貴方の言う事を信じますから。仮にこの現場から逃げても公務執行妨害として逮捕しますよ。さあ、悪い事をしていないのなら怖がらなくていい。むしろ安心してもらいたいくらいですよ」

 夏輝兄は微笑みながらそう言うと、男は堪忍したのか溜息を付いてカメラを差し出すと、夏樹兄はそれを受け取って操作する。

 「あー。内海君。放課後で良いから交番に来てね。事情聴衆したいから」

 「分かりましたー」

 棒読みで返事をすると、盗撮犯は縄につながれたのであった。    


 サボりながらこれっといって何もすることなくゆっくり登校するつもりが、犯罪者一人を検挙して校舎の中に入る。

 このことが公になったら全校集会とかでステージに上がったりするのだろうか?

 だとしたら恥ずかしいし、面倒臭い。

 そんなの人として当然なこと。という扱いでスルーしてもらいたいのである。

 誰もいない少々年季が入った昇降口に入ると、一限の終了を告げるチャイムが鳴り響く。

 丁度良い時間に到着したらしい。

 次の授業は理科で、実験だから理科室に行かないといけないんだっけ?

 しかも、面倒な千葉先生だったな。ダル。

 少し急ぎ気味で教室に向かうのであった。


 教室に入ろうとすると、アイツが一人、上半身を机の上で伏せて着席していた。

 泣いているのだろうか……。

 女同士の社会は男の想像を遥かに超えるほどギクシャクしているとか何とか聞いたことがある。本当かどうかは知らないが……。

 だとしたら泣かされたのか。気が強いアイツが?

 俺が嫌いな今のところ義務教育七年間同じクラスの性悪女のせいかな?

 オレと違う小学校を通っていた男共はそいつに夢中になっている人がいるらしいが、心の底からやめとけと言いたい。ってか性悪すぎて美人に見えないっての。

 誰に泣かされたとかは置いといて、どうすればいい。シカトか?

 いや、多分余所の人からみたら俺が泣かしたみたいになるかもしれない。

 今の時代、ネットで写真付きで晒されたら、誤解を解くのは難しい。

 そんなことを思っていると、アイツは立ち上がる。

 急だったため、反射で一歩退いしまう。

 アイツの目元や頬に涙を流したかのような痕はない。どうやら、眠くて俯いていたらしい。

 アイツは理科の教科書などを持って急ぎながらオレがいる反対側から教室を出る。

 誰もいなくなった教室に入り、黒板の上にある時計を見ると、授業開始まであと三分程だ。

 この教室は三階で昇降口から遠い場所にあるため何かと時間がかかるのである。

 急いで鞄を置き、理科の準備をして、早足で理科室に向かう。

 隣の校舎に向かう渡り廊下の方向へ曲がると、アイツが知らない男に腕を掴まれているのである。驚いたオレは咄嗟に下がって見つからないように覗き込む。

 もしかしたら、口説かれているのだろうか?

 無理もない、アイツは美人だ。多分、学年一、二を争うほどの。だから、口説かれるのも……。アイツが誰かと一緒にイチャイチャするのは少しイヤだな……。想像しただけで胸が少しだけ苦しい……。

 そういえば、あの男どこかで見たことあるな。

 幸久。……とかいう幼稚園が一緒だったが、小学校に行きだして普通に忘却した元友達とは違う感じだ。

 最近学校ですれ違ったのか?

 いや、オレの場合はこんな短時間で覚えるほど他人に興味はない。だとしたら何だ?

 ふと、彼の顔が少しだけ困ったような表情を見て思い出した。

 この間、西浦先生にエロ本を堂々と買おうとしていたところを注意されていた四人組の一人だ。

 盗撮犯に十八歳未満のアダルト購入者に遭遇。何で朝から常に恥を知らなそうな奴に会うのだろうか?

 そういえば、最近エロ話をする友人やクラスメイトが増えてきた気がする。

 仲が良い高崎が言うにはエロに興味が全くないのはまだまだ子どもらしい。だったら、一生子どもで良いっての。

 それにしても長いな。このまま覗き込むのも変だし、そろそろチャイムがなってもおかしくはない。

 オレは堂々としてアイツがいる廊下を渡ることにした。

 距離が近付くにつれてアイツが困っているのを察した。どうやら好みではないらしい。

 良かった。こんなエロ助がアイツの彼氏とかたまったもんじゃない。

 「ん? 何やってんの?」

 オレがそう言うと、二人は一斉にオレの方を向くと、アイツと目が合って、オレは少しだけ照れる。

 「えっと……誰?」

 エロ助は表情を引きつりながら問いかける。

 まあ、初対面だから知るわけがない。しかし、コイツがオレのことを知ってもらいたいとは思わないため、正体を隠す事にする。まあ、オレのことを知りたかったら、知っている人に聞けばいいし。

 さて、どうしようか?

 彼を怒らせたら、彼のアイツへの好意がオレへの敵意に変わったりするのだろうか?

 「さあ? 初対面で個人情報を与えるほどオレは寛容じゃないが、オレはお前のことを知っているよ。確か、この前本屋でエロ本買おうとしたら、西浦先生に見つかって説教されてた四組の一人だろ」

 そう言うと彼の顔は火がついたように真っ赤に染まり、アイツを掴んでいた手を離した。

 恥ずかしがっているのか、激怒して赤面しているかは分からないが、陰湿なネチネチタイプだったら嫌だなってふとよぎる。

 「う、うるさい。他の人にしゃべってたら許さないからな」

 やや声を張って言い残しエロ助は去って行った。

 オレに対する敵意は無さそうだが、何となく怯えているような感じがした。まあ、イジメのネタにはなりそうだな。あのことはもう他人に言うのはやめるか。

 「あ、ありがとう」

 アイツの頬が赤く染まっているせいか、いつもより可愛く見えるし、見ているこっちも赤くなりそうだ。

 「ああ……。それはそうとさっきのこと他の奴に言わない方がいいぜ。あいつイジメられるだろうし、エスカレートして自殺したら面倒臭い事になるだろうし」

 オレが知っているアイツはそんなことをしないのは分かっているが念のため。オレがいなかった時間でそのような性格になっているかもしれないから。まあ、無いだろうけど。

 「分かってるよ。それくらい。……そこまで性格悪くないし」

 真直ぐな瞳で私の目を見ながら言う。

 嘘の有無を見抜けるほど観察力はないが、信じよう。

 「ならいいや」

 ここで道草食っている場合ではないな。先生遅刻したらウザイし、アイツと二人っきりの現状を見て、カップルとか言われたくないし。

 「ま、待ってよ」

 その言葉で思い出した。待たなかったら後で、グーパンされたことを。兄と一緒に空手を習ってるから痛いし。

 アイツに従って振り返る。  

 「あのさ……。私のこと覚えてる?」

 少しだけ寂しそうな表情で私を見る。

 ってか、何でそのような馬鹿な質問をするのだろうか?

 そんなに避けていたっけ?

 思い返すと、必要以上に関わってはいけないと思って避けていたかもしれないと思い。反省する。

 忘れるワケ無いだろう。

 だって最初にできた女友達で、そして……。

 そして、何だ?

 好きなのかな?

 うーん。どうだろう。あまり長考すると、アイツにも悪いから好きかどうかの思考は後回し。

 「阿南……千秋。だろ? 小ニまで一緒で、背の順で隣だったオレの最初の女友達だし……」

 二時間目の始業のベルが遮るように鳴り響く。

 その鐘の音で我に返る。

 「やべえ。また、千葉センに怒られる。ちーty――。阿南さんも早く行かねぇと、あいつウザくて有名だから急ごうぜ」

 さっき、小学生の頃の愛称である。“ちーちゃん”。って言いそうになった。

 馴れ馴れしいし、余所から見たら恋人同士に見えるだろうし、アイツは嫌だろう。

 オレは恥ずかしくなって、逃げるように理科室に向かう。

 さっきの思考の続き。

 多分。オレはアイツのことを好きだと思う。

 誰かが彼氏になるのが妬ましいし、アイツのことを考えると胸が熱くなり、通常よりも思考が捗っている感じがするのである。

 まあ、いきなり告白して振られるのもキツイし……。アイツの前だと緊張して、○○だぜ。とか普段言わない語尾付けているから、そういうのを先に治さないといけないと我ながら思う。昔はそんなことなかったのに。やっぱ意識しているからだろうか?

 そんなことを考えていると、理科室は目前である。

 動揺しているため、軽い深呼吸をして教室に入る。

 「遅れてすみません」

 千葉先生に一礼する。

 「今日の実験は手間かかるからとっとと二人とも席につけ。説教は昼休みだ。逃げるなよ」

 「「はい」」

 アイツと返事が被って恥ずかしくもあるが。少しだけ嬉しくもあったのであった。

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