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マジ狩ル・プレイヤー・オンライン  作者: 山縣元隆斎三十六ノ助
仲良くしよう、パーティーウィーク
3/4

2.老獪に挑めよ、若人①

お久しぶりです

クリスマスに投稿すると決めてました(ドヤァ



 


「リップ?リップか?はは、中々ユニークな名前だ」


 オレが名乗ると、メルクリウスは楽しげに笑った。


「まぁ、私も変わらないか。改めて、宜しく。パーティー申請を送る」

「あぁ」


 メルクリウスはメニューを操作する動きをする。

 すると、やはり軽快な音と共に、オレの目の前に小さなウィンドウが浮かんだ。


 そこには、“『メルクリウス』さんからパーティー申請が届きました!参加しますか?イエス/ノー”と書かれている。

 オレは迷わずイエスを選択すると、そのウィンドウは消え、また新しいウィンドウが浮かんだ。


 今度は、“パーティーに登録する名前を入力して下さい”、と書いてある。


 このゲーム、マジカル・スレイヤー・オンラインにおいて、普通とは異なる、異色とも言える点の一つがこの仕組みだろう。

 VRゲームに限らず、大体のオンラインゲームはパーティーに入ると、プレイヤーネームは本人の物で固定されているのが普通である。


 しかし、マジスレではそれは違う。

 偽名(・・)が通用するのだ。


 それはPKへの配慮だとか、ロールプレイングへの配慮だとか、いろいろ考察されている。

 しかし、その理由がはっきりとしたことは無い。

 あるプレイヤーが言うには、現実リアルでは偽名が使えるのに仮想ゲームで偽名が使えないのはおかしいからだとか何とか言ってるが、案外それが正解かも知れない。

 運営のマジスレに対するリアルに近付けようとする態度には計り知れない物があるからな。


 まぁ、オレにとっては都合が良い。

 オレの本当のプレイヤーネームは、自分で言うのも何だが特徴的であり、もしかしたら知ってる奴がいるかも知れないからだ。

 名バレはともかく、基本フルフェイスの兜を着けているから、顔バレする事は殆ど無いが。


 そんな事を考えながら、目の前のウィンドウにリップと入力する。

 確定ボタンを押すと、ポーンという音がして、“パーティーに加入しました!”という文字が視界に浮かんだ。


「宜しく」

「よろー」


 すると、メルクリウスの側の、今まで黙っていた二人のプレイヤー達が声を掛けて来た。


「こちらこそ宜しくお願いします」


 と、丁寧に返事をすると、最初に声を掛けて来た方のプレイヤーが少し嬉しそうにした。

 髭面に、スキンヘッドという、毛の配率が上下逆さまになった様なおっさんビジュアルの男だ。

 それはリアル準拠なのか、それともロールプレイなのかは分からないが、ロールプレイなら頭を疑うレベルである。


「おう。最近、マナーが悪い奴ばかりでアレだったんだが……リップなら大丈夫そうだな。オレはドルフ、パーティーでは火力アタッカーを務めてる。敬語はいらねぇ、仲良くしようぜ」


 ドルフは背中に背負った大剣を軽く叩き、手を差し伸べて来た。

 オレはそれに応じる。


「おぉー、じゃ、宜しく」


 敬語が要らないのは都合が良い。

 どうにもオレは敬語が苦手で、喋っているうちに違和感を感じるからだ。

 手を握ると、ガッシリとした感触がして、黒人ばりに焼けた浅黒い肌をしたドルフはニカッと笑った。


「わたしはヤマダ。パーティーでは一応魔職、回復もできるよ。ちなみにわたしも敬語は無くていいよー」


 もう一人の方、ヤマダは白い肌に緑の髪の女だ。

 このマジスレではプレイヤーの種族は人間で固定なのだが、ヤマダの外見はファンタジーのエルフを意識しているのだろう。


「あぁ、宜しく頼むよ」


 返事をして、ドルフ同様に手を差し出して来たヤマダとも握手をする。

 儚げな見た目とは裏腹に、フランクな奴である。


「ん、次は私か?私はメルクリウス、壁役だ」


 そう言いながら盾と片手剣を取り出して見せたメルクリウスは、続けざまにオレに質問する。


「リップはどうなんだ?」

「あー……オレは何というか、斥候系ですかね。弓と短剣も使うんで、ある程度なら何でもいけます」

「ん、そうか、なら都合が良いな。リップには弓でヤマダと後衛、ついでに回復役ヒーラーしてる時のヤマダを守るという事で」

「了解」

「よろしくねー」


 これで物理火力1、壁役1、魔法火力兼回復1、それにオレというわけだ。

 オレは自称オールラウンダーなので、結構パーティーのバランスは良いかも知れない。

 ドルフとメルクリウスは前衛で、それぞれが補欠盾役サブタンク補欠火力サブアタッカーを兼任するようで、中々の構成と言える。


「じゃあ、準備オーケーならそろそろ行こうか」

「おう」

「オーケー」

「りょー」


 メルクリウスに、各人各々の返事をしながら、オレ達は魔導師アルクトゥルスの所へと移動する事にした。




 冒険の街、サン。

 中央の目抜き通りから外れ、怪しげな店が立ち並ぶその奥。

 裏路地の、更に細まった別れ道の奥に、『占い』と書かれた看板がある。


 その看板を通り越し、更に進んで行くと、如何にもと言ったような占い師の服装をした老婆がいる。

『老占術師・バーバラ』だ。

 マジスレにおいて、ノンプレイヤーキャラクター、通称NPCにはその全てに名前が付けられているが、バーバラのように正式名称に『老占術師』などといった称号が付いたNPCは、NPCの中でも特別な存在である。

 何が特別なのかというと、称号付きのNPCは大体がボスモンスターか、レアアイテムに関係しているのだ。

 まぁ、関係していない奴も偶にはいるが、それは殆ど稀な事だ。


 そして、このバーバラという老婆こそが、今回のこのパーティーの目的――《魔導師アルクトゥルス》のいる場所へ行く為のトリガーとなる。


「今日は、占術師バーバラ」


 メルクリウスが慣れた口調でそう言う。

 すると気難しい顔をしたその老婆は、すぐにデレーっとした顔をして、頬を緩めた。


 バーバラを呼ぶ時に、『占術師』という言葉を口にすると、一気にバーバラの機嫌が良くなり 会話が進みやすくなる、というのはこのゲームをやり込んでいるプレイヤーなら常識の事だ。

 逆に、『ババア』だとか、『婆さん』だとか、そう言う呼び方をすると、バーバラの機嫌は一気に悪くなり、最悪話すことすら出来ずに追い出される。


 こういうNPC一人一人にまで性格を与えているところが、運営の、ひいてはマジスレの狂気的な作り込みの所以なのだが、それは割愛する。


「何さね、若いお方達」

「………」


 オレやメルクリウス、ヤマダは兎も角、ドルフはどこから見ても若くは無いのだが、老婆からすれば同じようなものなのかも知れない。


「近頃、何か変わった事は無いか?」

「そうさねぇ……」

「特に、魔導師について、だ」


 メルクリウスがそう言うと、オレ達の眼前にポーン、とウィンドウが浮かんだ。


 “クエスト「老獪に挑めよ、若人」を開始します。イエス/ノー”と書いてある。


 当然、イエスを押す。


 すると、それを待っていたかのように、バーバラは話し出した。


「そうさねぇ、近頃西の荒野の辺りで、骸骨兵スケルトンが大量に発見されたって噂があるさね。ああいうアンデッドどもが自然発生するのは珍しいから、魔導師が関わっているかも知れないねぇ」

「そうか、ありがとう。やはり、占術師バーバラは流石だ」


 占術師なのに情報の出所が噂話という所が、バーバラが本当に占術師なのかどうか疑わしい所だが、ここで突っ込むべきでは無い。


「ひっひっひ、おだてたって何も出ないさね。ほら、おき、若いお方達」


 普通ならここで情報料とか言って金をせびられるのだが、メルクリウスがまたしてもバーバラを褒めたお陰で金を無心される事は無かった。

 流石メルクリウス、やり込んでいるというか、コミュ力が高いというか……やはり自分からパーティーを作る奴は違うのか。くっ。


オレ達は老婆バーバラを後にし、西の荒野――正式名称、ダルム古戦場跡へと向かった。



一話の文字数は三千〜くらいにしようと思ってます

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