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⑫ サイドJ ヒデオ その2 転校生イベント

 

 教室のチャイムが鳴る。

 昼のチャイムだろうか。

 席に座って時計を見る。

 針は十二時を指している。


「お腹、すいたね」


 車椅子に座ったカオリが話してくる。

 初期装備の盾を抱きかかえて、不安そうな顔をしている。


「うん、でも多分大丈夫」


 あの男が書いていたデスゲームの設定資料を俺はかなり見ていた。

 友達になろうとしていたからだ。

 だが、結局、その思いは届かなかった。


「この後、ミッションの発表があるはずだ。そこで敵を倒してポイントを得られれば食料を確保できる」


 転校生イベントの次はミッションイベント。

 確か、そう書かれていた。

 カオリは昨日のうちに来て、俺は今日の朝にここに来た。転校生イベントは昨日のイベントだ。

 ならば、今日はミッションイベントがあるはずだ。


「敵......、わたし、怖いです」


「大丈夫、パーティーを組んでいたらカオリさんにもポイントが入る。俺の後ろに隠れていてくれ。全部、俺が倒す」


 そうだ。全部倒す。

 このゲームの黒幕も倒して、ここから脱出する。

 クリアの条件も知っている。

 一万ポイントを貯めてゲームを作った神を呼び出す。

 出来る。俺なら難なく出来るはずだ。


『三年B組ーーっ、黒板先生ーーっ!!』


 突如、大音量と共に黒板の文字が全て消えた。人間の声ではない機械で作った音声が流れる。


 びくっ、とカオリが身体を震わせる。

 始まった。

 ミッションの開始だ。


 すべての文字が消えた黒板に、新たに自動で文字が一字一字書き込まれていく。


『スライム討伐ミッション』


『メインミッション

 スライムキングの討伐 ポイント200P』


『ザブミッション

 スライム五体の討伐 ポイント50P』


『制限時間 二時間』


『参加ポイント 10P』


『場所......』


 黒板には文字だけではなくマップも書き込まれていく。

 だが、その書き込みが急に止まる。


 黒板消しで消されたように、再び黒板の文字が全て消えた。


『あっかん、スライムもやられてもた。えっ、マジで? ほな、それでいこか』


 スピーカーから関西弁の機械音声が流れる。


「え、何? 今の?」


「わ、わからない」


 そんな設定は無かったはず。

 何かイレギュラーが起こっているのか?



『三年B組ーーっ、黒板先生ーーっ!!』


 さっきのはなかったことにしたのか?

 また黒板に文字が書かれていく。


『本日のイベント 転校生イベント』


『男子5名、女子6名』


『皆さん、仲良くしてください』


「な、何だ。これ」


 思わず椅子から立ち上がる。

 転校生イベントが二回連続?

 しかも全部で11名?


 必死に設定資料を思い出そうとする。

 そうだ。書かれてあったはずだ。


 一度に来る転校生の上限は5名までとする。

 ただし、最終イベント前日は残っている全ての転校生を召喚する。

 尚、最終イベントは12月31日に行われるが、ポイントなどで日にちを早めることが可能である。


「馬鹿なっ、もう終わりなのかっ」


 黒板の日付けは4月9日だ。

 まだ三分の1以上残っているはずだ。

 誰かがポイントでゲームを加速させたのか。


「あ、あの終わりって? ここから出られるんですか?」


 カオリが少し、期待を込めて聞いてくる。

 違う。クリアせずに終わった場合、たぶん最悪の結果が待っている。


「あ、ああ。すぐに帰れる」


 混乱させても仕方ない。

 落ち着け。

 出来る限りゲームの設定資料を限り思い出せ。


 教室の机に名前の書かれたプレートが多数出現する。

 同時にガタガタ、とロッカーが動き出した。

 二箇所、いや三箇所か。

 今から11人もやって来るのか。

 まとめなければならない。

 大丈夫だ。

 全員、助ける。

 俺はヒーローになるんだ。


 あの男がゲームの設定資料を作っていた時の会話を思い出す。


「もし、ゲームが出来たら君は主人公タイプだよね。設定を知ってるまま、ゲームに参加させたいな」


 あの頃、まさか本当にゲームに参加させられるなんて思わなかった。

 だから、俺はとんでもない事を言っていた。


「だったら、最後のほうがいいな。ヒーローは遅れて来たほうがかっこいいからな」


 小さい頃好きだったアニメのテーマソング。

 漫画は野球漫画だったが、主題歌がすごく印象に残っていた。

 遅れてきた勇者たち。

 今も歌詞を覚えている。

 頭の中で歌を歌う。


 くそっ、いくらなんでも遅らせすぎだろっ。

 もう、終わりかけじゃないかっ。


 ロッカーが開いて、巫女姿をした髪の長い女性が現れる。

 続いて警察官の格好をした男性。


「どこじゃ、此処は」


「なんだ、貴様らっ、誘拐事件かっ、逮捕するぞっ」


 落ち着け。落ち着け。

 頭の中ではアニメソングが大音響で流れている。

 場をまとめ、皆で協力しないと生き残れない。


「あーー、爺さん、爺さんや」


 さらに杖をついた老婆が現れる。

 隣にいるカオリを見る。

 不安そうな顔で俺を見上げていた。


「任せてくれ。みんな助ける」


 さらにいくつものロッカーから、ガタガタと音が聞こえてくる。


 机に花が置いてあるのを見る。

 もう、すでに死人が出ている。

 真のエンディングへのルートは絶たれている。

 出来る事をする。

 俺は遅れてきたヒーローだ。


 ロッカーが開き、さらに人が増えていく。

 ナース。ゆるキャラの着ぐるみ。素っ裸のお姉さん。


 教室が混乱に包まれる中、黒板前の教壇に向かい、俺は叫ぶ。


「自分の名前が書かれた席について、中にある携帯を取ってくれ。俺の知ってる限りを説明するっ」


 全員が注目する。


 いつのまにか、アニメソングを声に出して歌っている自分に気がつく。


 戦場に遅れてきたヒーローが奇跡を起こす。

 戦いが始まった。




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