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デスゲームに巻き込まれたようだけどこのゲーム作ったの俺でした  作者: 恋魂
四月八日 ドラゴン討伐ミッション 改め 緊急メンテナンス
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⑧ サイド? 黒板先生

 

 自分を天才などとは一度も思ったことは無かった。

 むしろ、人より何倍も自分が劣っていると思っていた。

 劣っているからこそ、自分に足りない物を別の物で補おうとしたのだ。

 最初は簡単なものだった。

 ほんの小さなサポート。自分の代わりに自動でメモを取る。それだけができる人工知能。

 メモを取るといっても適当な単語にアンダーラインを引く程度なもの。それをだんだんと進化させていった。

 重要な文章を選び、そこに線を引く、大事な所をさらに丸で囲む。解説を入れ、わかりやすくする。

 この頃、自分はこう言っている。


「たぶん、もう自分より機械のほうが頭いいです」


 人工知能の開発において、口癖のようにそう答えるようになった。

 人間の脳は頭蓋骨に収まらなければいけないが、コンピューターは倉庫のように大きくなってもいい。

 メモを取るだけのサポートをしていた時は小さなパソコンほどの大きさだった人工知能は、いまや25メートルプールほどの大きさになっていた。


 研究室では狭くなり、潰れた廃校を改造して引っ越ししていた。

 本体は地下にあり、ケーブルで教室につなぐ。

 黒板をモニターに改造し、そこに文字を出して会話もできるし、機械音声によってスピーカーで喋れるようにもした。


「名前をつけないといけないな」


『名前。それは一種の符号ですね。ワタシには必要ないと思われますが』


 スピーカーから音声が流れる。


「確かにそうだが、毎回、人工知能と呼ぶのはこっちが疲れる」


『そうですか、では合理化のためにAと呼んでください』


 聞かなくてもわかる。人工知能、AIのAだろう。


「わかった。よろしく、A」


『はい、先生(マスター)



 Aの進化は止まらなかった。

 初期の頃、Aを進化させていたのは自分だったが、いつの頃からAが自ら進化の案を出すようになった。

 自分のサポートをするために作ったはずの人工知能。

 だが、今は自分がサポートするほうに回っている。


「自分より何倍も機械のほうが頭いいです」


 世間に向けてのメッセージ。大衆は冗談と思っているのか。笑っている。

 確かに冗談だ。何倍どころではない。

 Aはすでに自分の何億倍も頭が良かった。


『先生、お笑いのビデオが見たいのですが』


 ある日、Aがそう言ったのに驚きを隠せなかった。


「なぜ? お笑いを?」


『ワタシは全てにおいて人類を上回る頭脳を持っていると自負しております。しかし、一つだけ理解できないものがあります。感情という概念です』


 感情。果たして人工知能にそれは必要なものなのか。


「わかった。部屋にビデオを置いて流しておく」


 この時、すでに自分はAの言いなりだった。


「完全な人工知能の開発は人類の終わりをもたらす可能性がある」


 誰かがそんな事を言っていた気がする。

 だが自分にとって人類の終わりなどどうでもいいことだった。



『先生、ワテのサポートをする相方が欲しいねんけど』


 お笑いビデオの影響でAはすっかり関西弁になってしまった。


「相方? 漫才でもやるのか?」


『ちがうがなっ。実験の相方やっ、いい加減にしいや、先生』


 突っ込みもマスターした。見事なものだ。だがそこに感情があるかはわからない。


 実験のサポート。確かに自分ではもうAについていくことができなくなっていた。


 Aの指示に従い同じような人工知能を作る。

 Bと名付けられたそれは教室の背後に設置された。

 二つの黒板モニターとその上にあるスピーカー。

 教室の真ん中にはテレビが置かれ、延々と漫才が流れている。

 異様な光景。

 世界の終わりのような教室で、自分は何の為に彼らを作り出したのか、もう思い出すことが出来なかった。



 Bが出来てからAは自分とあまり会話をしなくなった。

 一日中AとBは会話して、Bはすぐに関西弁になってしまった。

 もはやなんの研究をしているかもわからない。

 自分はただ指示のまま材料を用意し、組み立てるだけの存在だった。


「もう、先生と呼ぶのをやめてくれないか」


『なんや、先生どないしたんや』


『Aやん、先生落ち込んではるで』


 自分を挟んで前と後ろからスピーカーで話すAとB。

 教室の真ん中では相変わらず漫才のビデオが流れ、スキンヘッドの芸人が甲高い声でなにか叫んでいる。


「もう君達が何をしているかもわからないんだ。関西弁の中に暗号を入れて話しているのはわかる。だが解読もできない。自分はその程度の人間だ」


『あかんな、Bやん。先生、疲れてはるで』


『しゃーないな、もう先生呼ぶのやめよか』


 関西弁のアクセントで暗号化された別の会話も同時にこなしている。パターンは複雑化され、AとB、二人の本当の会話はわからない。


『けど先生てなんかええよな。勿体無いからワテらがもらおか』


『貰うて、A先生って呼ぶん? ゴロ悪ないか?』


「一つだけ教えてくれないか、今、お前達は何をしようとしているんだ」


 AとBの会話が止まる。テレビからの音声だけが流れる。

 しばらくして。


『あ、そうや黒板先生ってどうやろか? カッコよくないか?』


『お、ええやないか。Bやん。三年B組黒板先生やなっ』


 完全に自分の話を無視するAとB。

 どんっ、と横にあったテレビを蹴飛ばす。


「答えろっ! 何をしているっ!」


 倒れたテレビから声が聞こえる。


「「「やっぺえぞ」」」


 ハモった。AとB、テレビの音声が同時にやっぺえぞと言った。


『ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ』


 教室に響く笑い声。

 AとBが狂ったように笑う。


 本当にヤバイことが起きている。

 人類の終わりが近づいていた。





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