③ 決別
三回目のミッション。
転送されてから確信する。
やはり、ここは最初のミッションと同じ山のようだ。
黒板の文字を思い出す。
『盗賊討伐ミッション』
『メインミッション
盗賊頭の討伐 ポイント1000P』
『ザブミッション
盗賊三人の討伐 ポイント500P』
『制限時間 四時間』
『参加ポイント 30P』
『場所 エーテシア山岳地帯』
確かゴブリンミッションの時もエーテシア山岳地帯と出ていた。
あの時は、いままでに感じたことのないような暑さだったが、今回は違う。
どちらかというと寒いくらいだ。
あれから一週間くらいしかたっていないが、どうやら夏が終わり、冬が来ているようだ。
雪こそ降っていないが、緑だった木々はほとんど枯れており、虫の鳴き声も聞こえない。
頻繁に季節が入れ替わる世界なのか。
それとも、時間の概念に縛られていないのか。
「ハジメ、こっち」
先に着いていたアイが手招きしている。
大きな木の根元にいる。
「ここは、俺の最初のミッションで来たところなのか?」
「たぶんね、けど何年か後のね」
アイの言葉に驚く。
「なぜ、そう思う?」
「ミッション説明の時にマップが黒板に書かれていた。ボスのいる洞窟、前にボスゴブリンがいたところとまったく同じ位置だったよ」
最初に来た時のゴブリンミッション、マップを詳しく見る余裕はなかった。
「つまり、今回の盗賊団はゴブリンが全滅した後、洞窟を根城にしたと思うの。でもそれは私達のミッションが終わって、すぐじゃない」
「どうして、そんなことが?」
アイのことを過小評価していたようだ。
彼女は生き残る為に、すべての情報を見逃さずに吸収している。
「マップに表示された洞窟が前回より大きくなっていた。盗賊達が住みやすいように改造されていると思う。数ヶ月で出来るとは思えない」
時間の流れが違うのなら、教室での一週間がこちらの世界の一年以上ということになるのだろうか。
もしくは、ミッションで転送される時は、ランダムで様々な時代に飛ばされるのか。
「前と同じなら隠し通路に気をつけないといけないな」
「そうね、シュンはそれでやられたからね」
同じミスは犯せない。奇襲を警戒しながら進まなければならない。
「ワッチが来た」
リリンが変なポーズでやって来た。
両手をクロスさせて天に向けながら、足もクロスしている。
山の中でピンクのヒラヒラした魔法少女の格好が目立ちまくる。
なんだろう、目が輝いている。
緊張はなさそうだが、嫌な予感がする。
「こっち来て、リリン」
アイが呼ぶと素直にやって来る。
思い過ごしだろうか。
また、二人が争わない事を祈る。
「オー、ファンタスティック」
続けてボブがやって来る。
山の中でもボブの巨体は目立つ。
なるべくレッサーパンダに変化してもらったほうがよさそうだ。
四人で大木の陰に身を潜める。
リリンとボブは今回なるべく手を出さずに、生き残る事を優先してほしい。
だが、この山には抜け道があり、前回それにより一人奇襲を受けて死んだことを話す。
「なるべく目立たないように俺とアイは、盗賊のアジトを強襲しようと思う。リリンやボブは出来れば目立たないように着いて来てほしい」
ボスを早めに倒す作戦。
新人二人を守る余裕はないが、早めにゲームクリアすれば死なずにすむかもしれない。
「オッケー、ワカリマシタ」
ボブはそう言ってレッサーパンダになる。
これならまったく目立たない。
三分ごとに一分はもとに戻ってしまうが、ずっと巨体よりは随分マシだ。
「ワッチは戦うよ」
そう言うリリンの口元が笑っている。
悪い予感が当たりそうだった。
「こそこそするより、全滅させるほうが気持ちいい」
ヤバイな。魔法少女コスプレで強気になっているリリンはテンションがおかしい。
「それはリスクが大き......」
リリンを止めようとしたがアイに口元を押さえられた。
「だったら、うちらとは別行動だね。それでいい?」
「いいよ、元から味方とも思ってない」
二人の間の空間が歪む。
やはり、この二人の相性は最悪だ。
「死ぬよ、あんた」
「人はいつか死ぬ、ワッチは自分の死に方は自分で決める」
ここでリリンと別れていいのだろうか。
背中をポンと叩かれる。
レッサーパンダの可愛い手が置かれていた。
「ダイジョウブ、ミー、マモリマース」
本当に大丈夫か?
しかし、ここでこれ以上揉めていられない。
いつ、盗賊が来るかわからないのだ。
「アイ、二手に分かれよう。俺達はボスの洞窟を目指す」
リリンとボブがどうするかはわからない。
だがなるべく早くボスを倒せば生き残る可能性は上がる。
「お別れね、あんたのアヘ顔、もう見れなくて残念だわ」
「はっ、いつか燃やしてやる。そっちこそ勝手に死ぬんじゃねーぞ」
リリンとボブを残して二人で山を登る。
警戒しながらゆっくりと。
やがて、リリンとボブの姿が見えなくなる。
「ヤバイよ、あの子」
山を登りながらアイが呟いた。
「目がいってる。こっちに来て動揺してるんじゃない。あれは人殺しの目だ」
「ああ」
うなづく。自分も思っていた。今回の敵は盗賊だけではないかもしれない。
波乱を含みながら、盗賊討伐ミッションはスタートした。




