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① レンタル装備

 

 教室で昼食を四人で食べる。

 正確には三人と一匹。


「やばい、です。これ可愛い、です」


 リリンがボブに餌をやっている。

 アイの食事をレッサーパンダに変身したボブとリリンが食べ、自分の食事をアイと二人で食べる。

 昼食の後、ミッションの発表があるだろう。

 ここに来てから三回目のミッションになる。

 携帯のパーティーの項目をチェックする。

 アイの名前がある。

 解除しない限りは、ミッションが終わってからもずっとパーティーメンバーのままのようだ。


『三年B組ーーっ、黒板先生ーーっ!!』


 いつものスピーカーからの音声。

 初めて聞くリリンがびっくりして身体を震わせる。

 ボブは変身が解けてレッサーパンダから人間に戻っていた。


『本日のイベント』


『盗賊討伐ミッション』


『十四時スタート』


 十四時スタート、あと一時間と少ししかない。

 いや、それよりも。


「盗賊? 人なのか」


 今までのミッションで敵は全部モンスターだった。

 ジークのような人型もいたが完全な人間はいなかった。

 しかし、この盗賊というのは。


「人間だね。でも違う世界の人間」


 アイに動揺は見えない。

 そうやって割り切れるものなのか。

 人を殺すのは、モンスターを殺すのと訳が違う。


「人を倒すのに抵抗があるなら、今回はやめとく? まだポイントあるし、うちらは無理しないでミッションをパスしても大丈夫だよ」


 新人二人だけをミッションに送るのか。

 いや、俺が食料を分ければ二人も見送れる。

 しかし、カムイが言っていた。

 最終ミッションが近づいてきている、と。

 それまでにレベルを上げて強くならないといけない。


「いや、行こう。生き残るために強くならなければいけない」


 アイがうなづく。

 まずはレベル10になり、職業を選択する。

 なるべく早くだ。

 新人の二人とは、パーティーは組まない。

 それは見捨てて殺すことと差異がない。

 二人で生き残るために他をすべて犠牲にするなら、人は殺せないなど綺麗ごとは言ってられない。


「ワタシ、着替えてくる、です。ミッションは魔法少女マゼちゃんでやる、です」


 リリンがアイにロッカー部屋を借りる。

 コスプレすれば、リリンは強気になるがそれが吉とでるか凶とでるか。

 弱気で慎重なほうがミッションを生き残る確率が高そうな気がするのだが。


「ダイジョウブ、マゼチャン、ミーガマモリマース」


 不安そうな顔をしていたのだろうか。

 ボブが満面の笑みで俺に向かって親指を立てる。

 武器があればボブも役に立ちそうだがロッカーを壊したため、素手で戦わなければならない。

 魔法スキルが使えるリリンのほうがまだ強そうだ。

 敵の武器を奪って使えればいいが、倒した敵の武器や装備は本体ごと数分で消えてしまう。


「そういえば自分のアイテムや装備を他の人に渡したら次の日に消えるけど、もし一日が経過する前に返して貰った場合はどうなるんだ?」


「それは試したことないなあ。シュンに色々貰ったけど一回も返さなかったからね。全部、消えちゃった」


 シュン、可哀想な奴。

 しかし、試す価値はあるな。

 ポイント交換の武器作成欄を見てみる。

 最初に貰ったのと同じ剣が10Pで作成できる。

 選ばなかった盾と弓は作成リストに載ってない。

 だが上位の剣が100Pで作成できるようだ。

 最初に選んだ武器と、やって来た時に着ていた装備は、低ポイントで作れるサービス品になっているようだ。


 初期の剣をタップする。

 ロッカーから音がして剣が送られてくる。

 部屋を開けると自分が持っているのとまったく同じ剣があった。


「ボブ、これで守ってやれ」


「オー、クレルノデスカー」


「貸すだけだ。ミッションが終わったら返してもらう」


 実験だ。今日中に返して貰って消えるか消えないか。10Pは痛いが大切なことだ。

 さらに携帯で素材交換の箇所をタップする。

 リザードマンの鱗と50Pで鱗の盾を作る。

 これでポイントは124Pになった。

 再びロッカーから音がする。

 開けるとリザードマンと同じ鱗に覆われた頑丈そうな盾が送られていた。

 思ったよりも軽い。これならアイも持てそうだ。


「はい、これはアイがもってて」


「なにしてるの、もし消えたらポイントの無駄遣いよ」


 少し顔が怒っている。


「大事なことなんだ。消えなかったら、ちゃんと使うし、消えたら重要な情報を知ることになる」


 そうだ。ノートの謎を調べる為に必要な情報だ。

 パーティーを組んでないボブとパーティーを組んでいるアイ。

 どちらも返して貰ったら消えないのか。二つとも返して貰っても消えるのか。もしくは片方だけが消えるのか。


「使うって剣二つで二刀流? 盾はどこに持つの?」


「スタイルチェンジして使う。片手剣に盾と双剣、どっちもかっこいい」


 正直な話、ポイントを無駄にしてもアイには盾を持っていて欲しかった。

 気配を消せる自分と違い、アイは敵に狙われやすい。


「無駄にならないといいけどね」


 そう言いながらもアイは渡した盾を大事そうに抱え込む。

 死なせたくない。強く思う。


 アイのロッカーが開いて、完全変形したリリンが勢いよく飛び出してきた。


「ワッチが来た!!」


 また変なポーズをしている。

 いつの間にか杖を装備していた。

 ナナが持っていたのと同じ杖。


「マゼチャン、キター! ビューティフル、ファンタスティック、クレイジー!」


 ボブが興奮している。

 普通のほうが絶対いいと思うんだけどなあ。


 出来ればこの全員で生き残りたいが、全てを望むことは難しい。

 優先順位は並び直されている。


 アイが机の下から手を握ってくる。

 強く握り返して二人で前を向く。

 時計の針が十四時を指す。


『三年B組ーーっ、黒板先生ーーっ!!』


 ミッションが始まった。





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