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② サイドB アリス その2 A組初日

 

 ロッカーの扉を開けて教室に入る。


『四月五日 三年A組』


 黒板にはそう書かれている。

 B組とまったく同じに見える教室。

 だがそこにいる者たちは、明らかにB組の者と違う雰囲気がある。


「はーい、アリスちゃん、ついに来たわね〜〜」


 オカマスナイパーのクリス。

 出席番号は11番。左から二番目の一番後ろの席に座っている。

 私と同時期に教室に来た男。

 ルカが来るまでこの男とコンビを組んでいた。

 見た目はアレだが、実力は折り紙付きだ。

 的確な射撃の腕は、ルカよりも遥か高みにいる。


「相変わらずおっきい胸ねぇ、羨ましいわぁ」


 クネクネしている。腕は認めるが二度とパーティーは組みたくない。


「脳みそ全部乳に言ってんじゃねーのか、ひっひっ」


 卑屈に笑う女。

 出席番号8番のカナ。

 右の一番後ろに座っている。

 黒い髪が前にも後ろにも伸び放題。

 かろうじて右目だけが覗いて見える。

 年齢不詳。

 最初、白いワンピースを着ていたようだが、今は返り血で真っ赤なワンピースに変わっている。

 呪咀系のスキルを持っているようだが全容は不明。

 あと乳が皆無だが言い返したら、呪われそうなので黙っておく。


「デカ乳はロックだ。オレはリスペクトする」


 サングラスにヘッドホンの男。

 髪型は紫のモヒカン。

 出席番号9番のリキマル。

 カナの左隣に座っている。

 机の上にはコンポがあり、ヘッドホンと繋がっていて、常に音楽を聴いている。

 年は二十歳くらいか。

 世紀末覇者みたいな服装をしているが、身体は貧相だ。ガリガリで胸元の骨が浮き出ている。

 背中にでかいギターを背負っている。音楽系のスキルで奏でる音によって、ギターから様々な攻撃を繰り出す。


「はんっ、気持ち悪い、お前のロック終わってんな」


「アンタの乳も終わってるぜ」


 すーー、とカナが立ち上がる。

 手にワラ人形を握っていた。

 リキマルはそれを見てギターを構える。


「やめなさい、リーダーが怒るわよ」


 止めたのは出席番号4番のシズク。

 右端の一番前の席から二人を止める。

 ショートミドルの黒髪で黒のメガネ。

 そして、格好はメイド服。

 年は私と同じ高校生くらいか。

 一度顔を合わせた合同ミッションでも彼女のスキルは判明しなかった。

 実力の程も未知数だ。

 不気味な迫力がある。

 学校でも委員長を務めるタイプだろう。


「ちっ」


 カナが舌打ちをしながら座り、リキマルがギターを背負い直す。


「リーダーはいないのか? 」


「カムイちゃんが来てから、二人で部屋に入って行ったわ。焼けちゃうわぁ」


 A組のリーダー、ラス。

 癖の強いA組のメンバーを完全にまとめあげる実力者。

 再び会うことに、少し緊張する。


「そう言えばルカちゃんは? 一緒に来たんじゃないの?」


「ルカは人見知りだからな。たぶん、ロッカーで様子を見てる」


 ガタっ、とルカと書かれたロッカーが揺れる。

 どうやら予想通りのようだ。


「他のメンバーは? あと二人いなかったか?」


「エミルちゃんは死んだわ。アキラちゃんはあまりでてこないの。いじめちゃダメよ」


 A組七人のメンバーが六人に減っていた。

 たとえ、レベルを上げて、強いメンバーと共に戦っても死ぬときは死ぬ。


「静かに」


 シズクが目を閉じて、立ち上がる。

 耳に手を当てている。


「リーダーが戻るわ。リキマル、ミュージック」


「オーケー、ド派手にかますぜ」


 コンポからヘッドホンを抜く。

 いきなり教室を大音量が流れる。

 聴いたことのある音楽。

 ボクシング映画で盛り上がる時に流れる音楽。

 リキマルは背中からギターを取り出し音楽に合わせて奏で始める。

 なんだ、これは。


 ロッカーが開く。

 カムイと共にラスが出て来た。

 身長190センチのカムイの前にその姿があった。

 出席番号2番、ラス。

 その身長はカムイの半分ほどだ。

 鋭い大きな吊り上がった紅い瞳。

 薄っすらと笑う口から牙のような八重歯が見える。

 短髪の銀色の髪は逆立つように上を向いている。

 幼女。まだ10歳にも満たない幼女だ。

 だが、そんな幼女が背中に背負う大剣は、190センチのカムイよりも大きい。

 剣先は上にあり、幼女のお尻にある柄はバンドで止められている。

 教室の天井にいまにも届きそうだ。

 私がスキルで剣を五倍にした時よりも大きい。

 この幼女、ラスは戦闘で軽々とこの剣を振り回す。


「きたかっ、アリスっ」


 でかい声が響く。

 リキマルが流す音も搔き消えるほどの声。


「見ろっ、この装備をっ。カムイとお揃いだっ」


 にかーっ、と満面の笑み。

 一瞬、ただの可愛い小学生だと思ってしまう。

 カムイ装備といっても一部だけのようだ。

 機械のパーツが両手と両足にだけあるだけで、胴体は鋼の鎧を身につけている。


「どうだっ、似合うだろう!」


「ああ、似合う」


 似合わないとでも言えば大暴れするに違いない。

 幼く、それゆえ凶暴。

 頭は切れるがそれ以上にブチ切れる。

 純粋で残酷。

 そして、カムイ並に強い。

 味方であるのは頼もしいが、子供ゆえどんな時に敵に回るかわからない。

 止められるのはカムイだけだろう。


「カムイも来たっ、これで我らは最強だっ!」


 リキマルがラスの雄叫びに上げて、音楽を盛り上げる。

 シズクが拍手をして、カナが小さい声で「おー」と答える。クリスは「ひゅー、ひゅー」と口笛を吹いている。カムイだけが無反応でラスの後ろにただ立っていた。

 まずい。ノリについていけない。


 ルカのロッカーが少し開いて、覗いているルカの顔が見える。

 手招きすると、ルカは全力で首を振った。


 A組(ここ)でうまくやっていけるだろうか。

 初日から不安全開でA組生活が始まった。




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