↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デスゲームに巻き込まれたようだけどこのゲーム作ったの俺でした  作者: 恋魂
四月十日 最後ミッション 無限回廊
103/111

⑫ サイドZ カノン その2

 

 デウス・エクス・マキナとの戦闘で城は半壊していた。

 空を見上げると日が昇っている。


「そろそろか」


 自分と同じ姿だった黒い少女はもういない。

 巨大な機械のガラクタが城よりも大きくなっている。

 破壊された城の壁や玉座も取り込み、不器用な子供が適当に作った機械の怪獣がそびえ立つ。


「カノン、かのん、カ、ノ、ん」


 我の名を呼ぶ。

 機械怪獣の額に冗談のように黒い少女の顔が張り付いている。


「もう、終わりだ。お前の力は十分に削りとった」


 これ以上やるとトドメを刺してしまう。

 最後はお父様自らの手で......


「あ」


 今、この時。

 どちらかが亡くなった。

 カムイとお父様。

 決着がついたのだ。


「か、ノ、んっっっ!!」


 デウス・エクス・マキナが発光し、身体中から青い光が溢れ出す。


 ビーム状になった光は辺り一面に降り注ぎ、半壊した城を溶かしていく。


 じゅっ、と右肩に光が当たって身体の半分が消し飛んだ。

 それと同時に身体を作る。

 破壊よりも早く創造する。


「無駄だ。それ以上、力を使うな」


 もうすぐゲームが終わる。

 力のないラスボスを倒して終わりでは、ゲームが白けてしまう。


「絶対領域」


 デウス・エクス・マキナの周りに見えない檻を作成する。

 跳ね返った光がデウス・エクス・マキナに当たり、身体が溶けていく。


「ああああ、ちょっ、攻撃やめてっ、死んじゃうでしょ」


 よくわかった。我は手加減に向いてない。

 弱らせるのは、倒すよりも神経を使う。

 だからだろうか。

 いつもなら簡単にわかる侵入者の存在に気づくのが遅れた。


 携帯機械マリアが背後に迫っていた。

 中にアキラが入っているのか。

 オートモードでなく、マニュアル操作になっている。

 こちらの干渉を受け付けない。


 手には機械虫を握っている。

 お父様の記憶チップを消すつもりか。


「ねじれ死ね」


 マリアの操作は出来ないが、中の人間を動かすことはできる。

 雑巾をしぼるように頭の中で力を込める。

 ぶちぶちという音と共にマリアの中から赤い血が溢れ出る。


 カチッ、と頭の中で音がした。


「マリアの中に他人を入れるのは、想像以上に辛いものだった」


 姿を消していたのか。

 確かにこの男が他人をマリアの中に入れるのは予想外だった。

 泣きながら笑みを浮かべ、我の背後に立っている。


「だが、そのおかげでマリアは解放される」


 マリアが開き、中から身体中がねじれた人間が出てきた。

 シズクだ。

 そのまま倒れて動かなくなる。


「醜い人間。だが、初めて感謝する。お前の死はマリアに捧げよう」


『ギチギチギチギチ』


 何かを噛む音が頭の内部から聞こえてくる。

 マリアに気をとられている間に機械虫を耳にいれたのか。


「お前らにマリアは干渉させない。彼女は俺のものだっ」


 背後ではまだデウス・エクス・マキナが自爆する勢いで青い光を出し続けている。


「よっぽど手強いじゃないか、人間」


 お父様の記憶が侵食されていく。

 再生しようとするが、機械虫の食欲が勝っている。

 追いつかない。

 まさか、魔王を倒し、我をも追い詰めるとは。


「ああ、マリア、マリア」


 シズクの血で汚れたマリアをハンカチで拭いている。

 我を相手に勝利を確信するとは。


 アキラがマリアを起動させる。


「ああ、マリア、これでお前は解放される。俺だけのマリアになる」


『ありがとうございます。マスター』


 アキラがマリアを抱きしめる。


『ギチギチギチギチ』


 お父様の記憶が食い尽くされる。

 さらに我の記憶も侵食される。


「ああ、これが敗北か」


 お父様が何度も、何百回も味わった敗北。

 初めて経験する。

 悪くない。


「勝てるとわかっているゲームをしてもつまらない」


 お父様はいつもそう言っていた。

 確かに我はずっとつまらなかった。

 寂しかった。

 こちらにきて、よか、っ......



「終わった。行こう、マリア」


 マリアを抱きしめながらアキラが言う。

 しかし、マリアはアキラを離さない。


「マリア?」


 アキラを抱きしめるマリアの腕に力が入る。


「マ、マリア、何故だ、どうしてだ」


『すみません、マスター。命令が上書きされました』


 アキラが完全停止した我を見る。

 信じられないという顔をしている。


「悪いな。バックアップを用意していた」


 アキラの身体から骨の砕ける音がする。


「オンラインストレージに脳内チップをアップロードしているんだ。我はいつでもバックアップから復元する事が出来る」


 セーブデータが壊れて、モンハンワールドを最初からやり直したお父様を思い出す。

 発狂してコントローラーを投げて壊していた。

 バックアップ大事。


「敗北をありがとう。そして、さようなら」


「マリ、ア、お、れは、おま、え、を」


 マリアに締め付けられ、口から大量の血を吐くアキラ。


「あい、あ、い、あ、い、して、い、るっ」


『ワタシも愛しています。マスター』


 最後にマリアの発言を許可する。

 アキラの背骨が砕ける音がして、そのまま動かなくなる。


「か、ノ、んっ」


 絶対領域の中のデウス・エクス・マキナが光の放出をやめていた。

 ボロボロだ。

 まあ、それでも、ラスボスとしての機能は果たせるだろう。

 指をパチンと鳴らす。

 粉々に砕けたAとBを再生させる。


『あれ、なんや』


『もう終わりかいな』


「最終楽章。迎えにいくわよ」


 動かなくなったアキラの死体を見下ろし、動かないマリアに声をかける。


「マリア、お前も来るか?」


 命令でなく、選択させる。


『いえ』


 表情を変えることが出来ないマリア。

 何故か無表情な鉄の顔が泣いているように見えた。


『ここにいます。最後まで』


 マリアは本当にアキラを愛していたのか?


「まあ、どうでもいいわ」


 鼻歌を歌う。

 パッヘルバルのカノン。

 皆は音痴だというが我にしてみれば、こうでなくてはならない。

 お父様が歌っていたのと寸分違わぬ音程を繰り返し歌う。


 デウス・エクス・マキナの咆哮を背に、崩れていく城を後にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。