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壁を登る

作者: 亜李亜(舞)


10年前。私は無敵だった。

目の前に立ちはだかる壁はこれから越えていくべき道しるべであり

まだ、何者にもなっていない私にとってそれは、

希望の象徴であり、決して絶望とは違うものだった。


けれど近付くにつれ、その壁は高さを増しているように思えた。

手がかり足がかりを見つけ、登っていけば大丈夫。そう思った。


壁には無数のでこぼこがあり、そこを辿ればよじ登っていくことはたやすいように見えたのだ。


そうして、私は躊躇するという事を知らずにその壁を登り始めた。

一歩一歩堅実に。確実に。そう自分に言い聞かせながら。

この壁の向こうには自分が望む未来が、世界があるとそう信じて。


そんなある日のことだった。


ふと、後ろを....下の方を見ると遠くから勢いよく走ってくる子たちが居た。

私よりも少し若いくらい。そんな子たちが。


私が壁を見つけたその位置よりも遠くから勢いをつけて走ってくる。

走って走って...


それは助走だったのだ



壁よりもはるか手前で大きく跳躍した彼ら彼女らは

そのまま、空中遊泳をするかのごとく、私の頭上を越えていき

壁の頂上へとたどり着いていた。



私は 「壁」 の越え方を間違えていたのだ


壁は、よじ登るものではなく 飛び越えるものだった。


そう気が付いたのは、壁の7割ほどを登り終えたあたりだった。

ここから先は凸凹もすくなく、足がかり・手がかりを見つけるのも難しくなってくる。


けれども、あきらめるわけにはいかないのだ。

下まで戻って、助走をつけるには私は進みすぎてしまった。

よじ登ることに体力を使いすぎてしまった。


彼ら、彼女らが次々と自分の頭上を越えていく中

私は今日も壁から振り落とされる恐怖と戦いつつ

頂上を目指して今日も壁をよじ登り続けるのだ。


絶望のような希望をもって、希望のような絶望に今の私はどこまで立ち向かうことができるのだろう。



多分、私は今も振り落とされないようにしがみついているのだと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] それでも登って頑張った経験は活かされますよ。面白かったです。
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