投擲男と消失少女
東京タワー周辺が封鎖されて数日、協力者の頼みで忍び込むことになった。
「隠密行動は得意だろう?」俺のパトロンであり『異世界研究者』と胡散臭い名乗りを上げた彼女の頼みを聞く。
今回の怪物の襲撃を政府から秘密裏に研究したいと言われたので潜入する。
自分の目線を映せるカメラ装着し装備品のチェック――「用意はできましたか?」耳に付けたイヤホンから声が聞こえる。「今回からオペレートさせていただきます。戦略思考支援AIです。アイ○ンマンのジャー○スみたいなものと理解してください。」
「アッハイ」――ツッコミは追いつかないがまあスルーしよう。
雑居ビルの屋上に登り辺りを見渡す。
東京タワーから周囲500mは誰も出入りできないように自衛隊と警察が見張っている――まあ当たり前だが、足場が作られドーム状囲いが東京タワーまでの道を隠している。
「んで、どうします。」答えは分かっているが取り敢えず聞く。
「当然行く。」――鼻息荒くして返答「どうやって?」答えながら考える。
囲いの周りは常に見張られている。当然、空や地下も警戒されいるだろう。
瞬間、肩を叩かれる――敵襲?武器を取り出しながら後ろを振り向く。何も無い、気配も感じない。「…あのー?」声がする――イヤホンからではない。確実に何か居る。それとも幻術系の能力をくらったか。
考えろ考えろ考えろ――思考を停止させるな。死ぬ瞬間まで考えろ。
死ねない死ねない死ねない――まだ終われない。
「…こっちです。」声のした方向に振り向く。
女の子がいた―――一糸まとわぬ姿で。
思考が停止しかけた―――舌を噛み痛みで復帰
「ちょ…ちょっと待ってくださ…」――問答無用
ボーラを投げながら距離を詰める。女の子にボーラが絡まる。
すかさず押し倒し捕縛…可愛い、彼女を見た時に呟いてしまった。
これが俺と彼女のファーストコンタクト。
投擲男と消失少女の悲劇も恐怖劇も茶番に変えるために世界を巻き込む物語である
ボーラとは複数のロープの先端に球状のおもりを付けた狩猟用アイテム
今回使用したのは暴漢捕縛用のボーラ