案山子 其の四
回想
その気持ちを
いったい どのように
言えればよかっただろう?
自分の思いは 誰にも
永遠にわからないという認識と――
こごえそうな 冷たい風が
ふと 首すじかすめてゆくような――
ある日どこにも居なかった母を
泣き叫び 捜した日のような――
足元をすくわれる
巨大な絶望とともに
沸きあがる 思い
――私は、ここに、居る。
私は、ここに、居るのに。
滅びし学者の叫びが聴こえる・・・・・・
コギト エル ゴスム
我思ふ ゆゑに 我あり
*******************
問答
あなたは見ないのか――
この広い地球を
こうして狭い世界を
(言動、即刻却下いたす)
いつか降り積もるよ
すべての人間の頭上に
ザブリ ザブリ
深紅の炎
(まるで―――のような)
―――早く気付いて・・・・・・
もう間に合わない
(余計なお世話)
(沈黙・・・・・・)
愛しい星のその名は、地球。
*******************
深夜
ズボン片手に
ボロ布ひっさげて。
シミでべとつく
少し鈍い藍色の
うす汚れた後ろ姿
テールランプの街道を
靴音響かせ
颯爽と去ってゆく
遠くでドリルの軋む音
街の夜が
更けてゆく。
横ぎるひかり・・・・・・
街灯・・・
朝やけ。




