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案山子 其の参
短足――足りないものは――
のたうってゐるのは
鼻の大きな人間と
真ッ白な子象。
ああ、(子象は!)
遠くを眺めてゐるよ
食べてゐる
足元の小さなひなげし。
鼻の大きな人間は
こらえるように目を見張り
銀に霞む星つぶを
うんとうんと見てゐた。
――柵の向かふに影法師。
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希望――朝――
土が うずくまる
草が うずくまる
スックとのびる 霜柱
うす紫にけむる 街並み
シンと静まり返った池にも
淡くけむる 白い霧
なんて やさしく流れるのだ・・・・・・
ため息すらも 淡い靄
寝ぼけまなこに 空気が沁みる
かくも地球は生きている
思うと滲んだのは 涙
生きるだろう、今日も。
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高部台
街に夕映えが訪れる。
高台から眺めると
両手に広がる光のカーテン――
雲が地平線と街並みを
かすめるように
浮かんでいる。
どんなに時代が進もうと
黄昏色のこの景色を
失くしたくはない――




