菱形の盾
姫が何かに納得している、その間にもタカラの手は動き続けていた。
デザインナイフで、ある形を削っていく。
ある程度形が出来ると、彫刻刀で溝を掘り、極細ピンバイスで穴を開ける。
そしてエアー缶を接続したエアブラシで色を塗っていく。
刻一刻と完成に近づいていくが、タカラが何を作っているのか、それがわかるものはこの場にはいなかった。
他方、レキは未だに攻撃をかわし続けていた。
ダメージの蓄積は深刻なものになりつつある。
とはいえ反撃は出来ない。
神盾エイ・ジ・アースが伝説通りなら、ドラゴンの突進すら止め、溶岩弾をはじき返すとされているものであるから、攻撃したところで無駄だ。
むしろ隙を作ってしまう。
だからレキは避けることに徹していた。
それがジリ貧に過ぎないとしても――
「いい加減諦めろ」
「ダメです! 絶対に諦めません! タカラさんがなんとかしてくれます!」
「……そうか。お前も同じなのか。――ならば余計に負けられない。それ(、、)だけは負けられない!」
フリーダは絶対零度の如き蒼の視線と神剣をレキに向ける。
「あなた……もしかして……」
「バインド様! 二撃連続で行きます」
バインドの両腕は血だらけになっている。
だが、涼しげな表情だけは崩さず、
「ふ。構わん。やれ」
顎だけを向けて言う。
それを見たフリーダは、初めて笑顔らしきものを浮かべた。
「……これで私は無敵だ。もはや逃がさない」
フリーダは再び剣を右手に持ちかえ、構えを取る。
「はあああああっ!」
フリーダの気合に呼応するように剣の輝きが増す。
「かあっ!」
剣が振り下ろされ、破壊力の塊が解き放たれる。
レキはそれを何とか飛びのいてかわした。
が。
「もらった!」
体勢の変えられない空中にレキはいる。
そこにフリーダが二撃目を振りかぶり――
「レキ! 今から盾を送る! それで防ぐんだ!」
タカラは完成させた一つをスロットに投入した。
その瞬間レキの前に赤と青で塗られた菱形の盾が出現する。
「バカめ! 神剣の一撃がそんなもので防げるか! はあああっ!」




