男の友情
「だから、おれを信じて時間を稼いでくれ!」
「は、はい。わかりました!」
「おれもレキを信じてるから!」
「はいっ!」
レキは満面の笑みをタカラに向けた。
タカラはそれに頷くと、持ち込んでいた道具袋を開いた。
その中から拳大のレジンブロックとデザインナイフを取り出す。
そして、すぐさまその場でブロックを削りだした。
もうタカラにはブロックしか見えていない。一切試合を見ていない。
その姿を見て、姫はおろおろとエポナの裾を引っ張った。
「マイスター殿は何をしておるのじゃ? 早うレキ殿を助けないと……」
「姫様、タカラ様には何か考えがあられるとですよ。やけん、邪魔したらいけませんよ」
タカラは一心不乱にブロックを削り続ける。
一方レキは、光の奔流をかわし続ける。
直前までフリーダの手元を見つめ、放つ直前にそれと逆方向に全速力で逃げるのだ。
それならば、飛んでくる破片や光熱でダメージは受けながらも、直撃だけは避けられる。
「く……」
タカラは汗を拭う。
リンクした痛みなど問題ではない。
時間がなかった。
目的のサイズには、ブロックが大きすぎる。
電動ノコギリでもあれば楽だが、そもそも電源がない。
「早く……早くしないと……!」
「貸せ」
タカラの肩がぐいと掴まれる。
「え? お前……」
「切りたいんだろう。俺によこせ」
そこに居たのは、ヤミタだった。
「寝てなくて大丈夫なのか」
「黙れ。そうでなければ来ていない。それに、こんなに爆発音がしていて眠れるはずがないだろうが。貴様がさっさと倒さないからだ」
そういつものように憎まれ口をきいているものの、まだ顔色は青白く、立っているのもやっとのように見える。
だが、瞳はぎらぎらと燃えるように輝いていた。
それからヤミタはタカラに先ほどの返事も聞かずブロックを奪い取った。
「サイズと形を言え」
「あ、ああ。長方形にしてくれ。中指くらいの長さと厚みのものが一つと、指三本分くらいで厚みも指くらいのを一つ作ってくれるか」
「造作もない」
ヤミタはブロックを空中に放り投げると、腰から下げた剣を抜き放った。
ききききんっ
あまりの速さに常人には一振りにしか見えないが、実際には十を軽く超える剣閃が放たれていた。
後は空気抵抗でばらばらになり、ヤミタは空中で目的の二つを掴むとタカラに投げてよこす。
「病み上がりの俺を引きずりだしたんだ。絶対に勝て」
「勝手に来たくせに何言ってんだ」
どちらも口の端で笑う。
「成る程。男の友情というやつじゃの」
「姫様、茶化してはいかんですよ」




