卑怯
なりふりを構わないと言ってもほどがある。
「何でそこまでするんだ!」
タカラは思わず叫んでいた。
「この世は所詮力だ。強者が弱者を支配し、あらゆる望みは力が可能にする。己はもう誰にも支配されぬ! 己は王となる! 支配者になるのだ!」
「だからって、こんなことまでするのかよ!」
「黙れ! 己は勝つのだ! 勝たねばならんのだ!」
はははははは、バインドは狂ったように笑い、フリーダに攻撃を指示した。
閃光が唸りを上げ放たれる。
いや、それは暴発に近かった。
あまりの破壊力に振り回されてしまい、狙いを定めることすら困難である。
「わわわっ……!?」
レキは半ば這いずるようにその場から離れたが、そことは違う場所に超斬撃が炸裂した。
それでも膨大な威力に余波だけでレキは木の葉のように吹き飛ばされる。
そして地面に叩きつけられてしまう。
その間にも、バインドはまたしても素体を取り換えていた。
だが、もう右手はまともに動かないのだろう。作業を左手で行っていた。
フリーダは何も言わず、盾と剣の左右を入れ替えている。
「こ、こんなの……どうすれば……」
レキの顔に絶望の色が浮かぶ。
あの強力な攻撃の前には近づくことすら出来ない。
狙いは出鱈目だが、範囲が広すぎる。
向こうがダメージを気にしない限り、いつかは必ず当たるだろう。
「こんなの……反則だよ……」
「反則……」
その言葉を聞いて、タカラの頭の中に閃くものがあった。
「レキ! とにかく逃げ回って時間を稼いでくれ!」
「え? でも……勝てるんですか?」
タカラは目を閉じ、
「『今の』おれじゃ、勝てない。だから……おれも……卑怯な手を使う。偉大な先人の力を借りる」
それから目を見開いて、はっきりと、言った。




