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ガレキ  作者: がっかり亭
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英雄ブリキ

「いい気になるなよ。……こちらは前回一つもスロットを使っていないことを忘れたか」

 バインドがマントを翻すと、中から長槍が飛び出した。

 茨が絡み合って形を成したかのような、異様な槍である。

「神槍グラン・ニール。――まさかこれを使う羽目になるとはな」

 バインドはそれをスロットに投入する。

 明らかにスロットより大きなそれは、しかし中に吸い込まれるように消える。

 同時に、まるで転送されたかのようにフリーダの手にそれが現れた。

「ふふん。世界三十三秘宝が一つ。古の英雄ブリキが使ったとされる武器。その力は大地を裂き、ひと薙ぎは川を作るという(、、、)……」

 実際にその力があるわけではないわけだ。

 だが、スロットに投入されればそれが現実のものとなる。

「ま、まさか……そんな神宝(かんだから)をなぜお主が持っておる……!」

 国宝級の武具を持っているという情報はあったが、まさかここまでとは思っていなかったのだろう。姫は震える声で言った。

「簡単な事。己がブリキの直系の子孫だからだ」

「なんと……!?」

 ハセ姫は絶句した。

 それも無理はない。

 ブリキと言えば、この世界アンダーゲイトで知らぬものはいないからだ。

 英雄ブリキ。

 それは神体大戦が始まるより遥か昔、神話の時代の勇者。

 アンダーゲイトに巣食う悪鬼羅刹を平定し、人の住める世界にしたと言われる。

 彼は武器王とも呼ばれ、幾多の武器を操ったとされ、その内のいくつかは秘宝、或いは神宝として現代にも伝わっている。

「我が家系に伝わりしこの神槍――その威力、受けるがいい。行け! フリーダ!」

「イエス。マイ・マイスター」

 フリーダは槍を掲げ、そのまま飛び上った。

 そして――

「よけろレキ!」

「はいっ!」

 レキは一気にその場を飛びのく。

 だが、フリーダの狙いはそこではなかった。


 轟!


 凄まじい唸りと共に、槍は大気を切り裂いて池に突っ込んだ。

 まるで流星。

 着水と同時に爆発でもあったかのように大量の水が巻き上げられた。

 それでも槍は止まらない。

 魚雷のように池そのものを切り裂き、端まで到達するとそのまま地面を引き裂いた。

 あまりの威力に、槍はそのままフィールド外まで飛び出して行く。

「な、なんじゃあ!?」

「ひ、姫様、危険です。離れんと危なかです!」

 エポナが慌てて姫を抱えて下がった。

 その体にも水が降りかかる。

 大量の水に辺り一面の大地はドロ水になっていた。

 おまけに槍が切り裂いた地面は一条の川へと変貌し、そこへ池の水の大半が流れ出している。

「こ、こんな威力、反則だろおっ!?」


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