策
「……なんだあの愚劣なジャッジは……気分が悪い。さっさと終わらせるぞフリーダ!」
「イエス。マイ・マイスター」
フリーダが飛び出す。
スタンドは地上にあるが、フィールドの中央は池だ。
蓮の葉の上を走って行く。
「こっちも行くぞレキ!」
「はいっ!」
レキもスパチュラを槍のように構え、蓮の葉の上を飛び移っていく。
迫るフリーダ。
基本的には、鎧を着ていてもそのスピードはレキとほとんど変わらない。
その秘密は、足の裏にあった。
撥ね琥珀。それはフリーダの人間部分を構成しているこの世界にしかない物質で、人の肌に極めて近い性質を持っている。
樹脂が化石化したものであるが、ゴム系のそれが固まったものであるため、柔らかく弾力性がある。
バインドはそれを圧縮する製法を生み出し、強度のある肌を生み出した。
そして、足の裏は特別圧縮したもので制作することで、地面と触れた瞬間に反発し加速することを可能にしているのだ。
要はホッピングに近い。
タカラがそんな材質や製法を知るわけがない。
だが、推理することは出来る。
材質は向こうの方が確実に重い。
それでも速いなら、脚に何か仕込んで加速しているのではないか?
だから、このフィールドを選んだのだ。
「む……そういうことか。無い頭なりに知恵を絞ったな」
フリーダは反発力で加速する。
しかし、オニバスの葉は浮いているだけであり、思い切り踏むと沈む。
これでは反発力は活かせない。
この蓮の上で戦う限り、スピードはレキの方が上なのである。
突進するフリーダ、その背後にレキは回り込む。
そして、スパチュラで切りつける。
「ぐっ……」
フリーダの鎧は硬い。
だが現代日本の科学力が生み出した細工道具は、鉄製であっても純度が極めて高い。
即ち、ただの鉄などに比べて強度は段違いなのだ。
鎧にぶつかったところで一度や二度で折れるようなものでもなく、撥ね琥珀の部分なら十分に切り裂ける。
レキは超スピードでフリーダを翻弄し、切りつけ続ける。
「く、くう……」
「ぐ……なめおって! この間の敗北を忘れたか! フリーダ! 外装をパージしろ!」
「イエス・マイ・マイスター」
「離れろレキ!」
「はいっ!」
直前までレキのいた位置を吹き飛ばすようにフリーダの装甲が爆発した。
前回見せた軽装形態である。
「鎧の重みがなくなればそれだけ脚が蓮にかけられる重みも増す。これでおそらくスピードはほぼ互角になったはずだ。となれば攻撃力が上であるこちらが有利だ。貴様らの考えなど所詮は浅知恵だと言ったはずだ!」
バインドの言葉通り、フリーダは身軽になりそのスピードを更に上げていた。
レキの動きにも追いつき、剣を繰り出す。
「レキ!」
「はいっ!」
レキは後ろに跳び、フリーダから距離を取る。
「無駄なことを」
フリーダもすぐにその後を追う。
その剣が到達するより先に、
「たあっ!」
レキは鎧を脱ぎ捨てた。




