チョウオニバス
チョウオニバス。
子どもが乗れるほど巨大な蓮のオオオニバス。それより更に巨大なLVリバー固有種の、大人が2、3人乗ろうがビクともしない蓮である。
その蓮が群生しているオニバスの池。
ここにもまたスタンドが設置されていた。
前回の戦闘から五日。
再びバインドから対戦の申し込みがあったのである。
そして、決戦の地としてここが選ばれ、開戦の時を待っているのだった。
「――ふん。棄権してくるかとも思ったんだがな。また醜態を晒したいのか?」
吐き捨てるように、バインドが言う。
池を挟んでその視線の先にいるのは、勿論タカラとレキである。
今回は、姫とエポナも傍らにいた。
「人のこと言えた義理かよ。そっちこそ、逃走した相手に連続で勝負挑むなんて、この世界じゃあんまり格好いいことじゃないんだろ? 焦ってんじゃないの?」
「ちっ……」
ついこの間大敗したばかりなのに、タカラはリラックスしていた。
それだけでなく、神体も含め意気揚々と言った面持ちだ。
バインドからすれば、アテが外れたような印象を受けるだろう。
ただ、確かにこの世界では逃走した相手に連続で勝負を挑むのは反則でこそないが、無粋でありあまり好まれないのは事実である。
「……まぁいい。やる気のない相手と戦ってもつまらんからな。フリーダ!」
「はっ」
バインドが呼ぶと、フリーダが上から降って来た。
既に鎧を纏い、臨戦態勢である。
「この身の程知らずに格の違いを教えてやるぞ。それに妙なものを付着させられ、除去に時間をとらされた恨みもある。思い切りやるがいい」
「イエス。マイ・マイスター」
フリーダは腰の剣に手を当てる。
「ちょーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと待つであーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーるっ!」
どこからともなく声が響いた。
「誰か忘れてないであるか?」
「忘れたいんだよ。空気読め」
タカラがぼそりと呟いた。
「ショッking! 吾輩ハートブレイクである!」
「いいからさっさと出て来んか! ジャッジがおらんと始まらんじゃろうが!」
「は、はい……すいませぇん」
少女に説教され、水中から蛙を模したダイバースーツを着た中年が上がってきた。
水中からどうやって声を出していたかなど、もはや誰も気にしていない。
「えっと、その、ジャッジのヨミーです……自分、虫ケラ以下です」
やたらヘコんでいる。
「本当に面倒くさいのう! 早う始めんか!」
「は、はいいっ! バトルフィールドスタンバイします」
光が走り、周囲をドーム状に包みこむ。
「えっと、もう大丈夫ですね? それじゃ、バトルスタート。はい」
ぱん、と小さくヨミーが手を叩いた。
どうやらあれが開始の合図らしい。
別にいつもやっている大きく両手を交差させて叫ぶという一連の行為は必要ないようだ。




