それから
「どくである」
タカラを突き飛ばすように、ヨミーが割って入った。
「反則スレスレで怪我したであるから、本当は助ける必要もないであるが、吾輩優しいであるからな。感謝するように」
「何を……」
する、そうタカラが言い終わらないうちに、ヨミーの手が高速で動きだした。
それは、まるで千手観音。
「はいはいはいはいはいはいはいはいはいはいっ!」
どこからか取り出した消毒液らしき瓶を振りかけ、糸と針を信じられないスピードで動かしていく。
あまりの速さにタカラには何をしているかもわからないが、患部があっという間に縫合されていった。
「ほれ。これでOKである」
麻酔すらなく、しかしヤミタが呻き声を上げる間もなく手術は終わった。
「す、すげえ……」
「ぶっちゃけ、精霊王からお借りした力で治すことも出来たであるが、これ以上対戦に割りこまれても困るであるからな。普通の治療で絶対安静にさせたである」
ヨミーは腰に片手をあて、もう一方の手でひげを触りながら言った。
「く……何を、している……精霊、様は……どうした?」
「あっ……!」
ヨミーの手際に見入って呆けていたタカラは、慌ててスタンドに戻った。
スタンドの中央、素体をセットしている場所は、まるで立体映像のように風景を映し出している。そして、素体はその場で走っていた。
マイスターが視認できない位置まで神体が離れた際に、その動きがわかるように出来ているのだ。
レキは一心不乱にただ前だけ見つめて走っている。
「あっ!」
その背後に、フリーダが迫って来ていた。
地面を蹴るスピードがあまりにも速いため、まるで石の水切りのようにほとんど接地せず突っ込んでいく。
フリーダが迫って来ているのは、レキにもわかっているのだろう。
だが、それでも振り向かずに走る。
「ふん、フリーダ! 切り捨てろ!」
同じくスタンドで状態を確認していたバインドが叫んだ。
マイスターの声は、スタンドの素体を通して神体に聞こえている。
フリーダの素体は頷き、剣を構えた。
そして跳躍し、剣を大きく振る――
「レキっ! それを受けろ(、、、、、、)!」
タカラも叫んでいた。
レキはそれを聞いて咄嗟に振り向き、腕を交差させて防御態勢を取った。
「しまっ……」
その意図にバインドが気付いた時、既に剣はレキの腕に命中していた。
「ぐあああああああっ!」
タカラの腕に激痛が走り、同時に薙ぎ払われたレキの両腕が砕け散る。
それに留まらず、レキの体は大きく吹き飛ばされていく。
そしてそのまま――




