フリーダ
謁見の間。
奥側、即ちホスト側には、姫、ヤミタ、エポナ、タカラ、レキ、あとついでにぴよぷー。
その反対側には、マントを纏った、肉食獣を思わせる鋭い目つきの長身の青年。その傍らにはモデルと見紛うほどの美貌とスタイルの、ダークスーツを着た女性がいた。
青年は鬣にも似た金髪、女性は流れるような長い銀髪で、二人並ぶと非常にバランスが良く、まるでファッションショーか何かのようでもある。
「急な訪問のご無礼をお許し願いたい。自分はドリメイト国マイスター、バインド。それから隣に控えているのが我が神体フリーダ」
フリーダは表情一つ変えずに一礼する。
「……うむ。それで今日は何用じゃ?」
「降服の勧告に」
「は?」
あまりにもさらりと言ったので、誰もその意味をすぐには理解できなかった。
「お、お主は何を言っておるのじゃ……」
「こちらは対戦を申し入れる準備がある。だが、万年最下位のこの国とはやるだけ無駄だ。それならば面倒は省いた方が良い。対戦開始と同時に降参しろと言っている」
バインドは、挑発するように言った。
「ふ、ふざけるな!」
「ふざけてなどいない。結果のわかりきった試合などする必要があるのか? それにそちらも破壊された素体を修理する手間が省けて助かるだろう?」
「む、ぐうう……」
姫は怒りのあまり気絶寸前である。
「そもそも最下位如きを相手にしてやっているんだ。礼の一つでも言って欲しいものだな」
はははは、とバインドは笑った。
「てめえ……!」
たまりかねてタカラがバインドに詰め寄った。
と、その瞬間――
「なっ……!?」
「マイ・マイスターに触れるな」
タカラの首筋に剣がつきつけられていた。
剣の主は、フリーダ。
まったく表情を変えず、しかし氷のような凍てつく視線でタカラを射抜いていた。
「やめろ。フリーダ」
「はっ」
バインドの一言でフリーダは剣を下ろす。
「悪いな。我が神体はことのほか下賤な輩が己に触れるのを嫌がるらしい」
「なんだと……!」
「ふん。貴様がこの国のマイスターか?」
バインドは値踏みするような視線をタカラに向ける。
「だったらどうした」
「そんなに地獄を見たいのか? 無様に地べたを這いつくばりたいのか? 無力さに涙したいのか?」
再びバインドは嘲るように笑った。
「ふざけるな! お前みたいな奴には負けてたまるか!」
「……いいだろう。そこまで言うのなら相手をしてやろう。場所は……そうだな。サラセニスの森でいいだろう。そこで待っている。準備が出来次第来るがいい」
バインドはマントを翻し、謁見の間から出て行った。
フリーダも一瞥もくれずに去っていく。
「なんと無礼な奴らじゃ!」
姫は地団太を踏んで悔しがった。
その様を、エポナがはらはらしてみていたりする。
「ひ、姫様、あんまり慌てとるとまた気ぃ失ってしまいますよ」
タカラやレキもあの物言いには、闘志を燃やしたが、ただ一人、ヤミタだけは思案顔をしていた。
「……だが、気になるな。バインドの言動……むしろ何か焦っているようにも思えたが……」




