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ガレキ  作者: がっかり亭
18/46

ずきっ

 LVリバーの城下町。

 土壁の家々が建ち並んでいる。

が。

「……なんか、寂れてないか?」

 以前城の窓から見た時は遠目からでわからなかったのだが、近くで見るとかなり建物に年季が入っている。

 建材は劣化し、ヒビが入り、ところどころ崩れて芯がむき出しになっていた。

 町のあちこちに、浮浪者らしき人々。そしてストリートチルドレン。

「なんだこれ……ここって、城下町だよな……?」

 もうスラムのような雰囲気である。

 とても王のお膝元とは思えない。

 とりあえず、タカラは比較的治安の良さそうな商店街に行ってみた。

 商店街、とはいったものの、畳んだ店も多い。

 そして品揃えもよくない。

 タカラは、姫から支給されたそれなりの額のお金を持ってはいたが、なかなか欲しいものに巡り会わなかった。

 そんな中、雑貨屋で品定めをしていると、店の外で話している声が聞こえて来た。

 どうやら、町人同士が立ち話をしているらしい。

「……まったくよぉ、全然生活よくなんねえよなぁ」

「そうだな。こないだも急に祭りだとか言って、金かかったしな」

「ふざけた話だぜ。そのくせ王宮なんか、めちゃくちゃ豪華らしいぞ」

「ああ。何か外国にバカにされないためとか言ってたな。それこそバカな話だぜ。もっとほかにやることあるだろうに。だからバカにされるんだ」

「しかもそんなムダなことやる度に俺らから税金搾り取られるんだ。ざけんじゃねえチクショウ!」

「くそ……俺も他の国に生まれたかったぜ。こんな万年最下位の、おまけに無能な姫の国なんかじゃなくな……」

「まったくだぜ!」

 別に、タカラは聞こうとして聞いたわけではない。

 内容も、あまり気持ちのいいものではなかった。

 言っている内容も、そう的外れではない。

 それでも知人が悪く言われて、胃がむかむかしてくる。

 だが、いつしかその会話に聞き入っていた。

「そういや、二勝目あげたらしいぜ」

「へえ。もう何十年ぶりなんだろうな。せめてもう少し上の順位まで行って欲しいよな」

「へっ、ムダだろ。どうせ待遇がよくなってもあのバカ姫だぜ?」

「かもな。……何にしろ、あのダメ精霊には困らされたもんだが、やっとマシになったなぁ」

 ずきっ、

 タカラの胸に痛みが走った。

 そうか。

 あいつが、勝ってあんなに喜んだのも――

 そして喜ぶ人たちを見て寂しそうにしていたのも――

「けっ、最初だけかもしれねえぜ。期待させといていつもみてえにどうせ負けるんだ」

「そうだな。期待するだけ後の落胆がでかい。今まで勝てなかった雑魚精霊が急に順位上げられるもんかよ」

 ぎり、

 本人も驚くほど、タカラは奥歯を噛んでいた。拳を握りしめていた。

「お前ら……」

 気がつくと、タカラは店の外に出て、男たちの前に立っていた。

「なんだてめえ」

 男たちは、思いのほか屈強そうである。

 特に片方は筋骨隆々の上スキンヘッドで、プロレスラーだと言われてもそのまま納得できそうなほどだ。

 だが、そんなことは関係なかった。

「お前ら……あいつがどんな気持ちで戦ってると思ってる……!」

「はぁ?」

「こんな奴らのために……あいつはっ……」

「因縁つけてんのか? このモヤシ野郎」

 スキンヘッドの男がぱきぱきと拳を鳴らす。

「うるせえっ!」

 タカラは殴りかかった。

 だが喧嘩などしたことがないタカラの拳などが、荒くれ者に当たるはずもなく。

「バカが」

 重い拳がタカラの腹に突き刺さった。

「げふっ……!」

 倒れ込んだタカラの頭を、もう一人の男が掴んだ。

「なぁ、兄ちゃん、喧嘩ってのは相手を見て売りな」

 その男も加わり、殴り始めた。

 タカラはサンドバックのように一方的に殴られ続ける。

 暫く殴られ、ぼろぼろになったタカラは再び倒れ込んだ。

「まったく、弱えくせによぉ、わけわかんねえぜ」

 男たちは立ち去ろうとした。

 だが、

「……待てよ」

 その足を、倒れたままのタカラが掴んだ。

「あ?」

「あいつを、バカにしたことを取り消せっ……」

「何言ってんだてめえ。死にてえのか」

「取り消せっ!」

 タカラは、倒れたまま、男を睨んだ。

 もし、この時にその男がもっと理性的な人物だったならば、その瞳の意味に気づいただろう。

 触れてはいけないものに触れた、その眼。

 強さ弱さなど関係なく、決してさせてはいけない眼(、、、、、、、、、、、、)。

 死線をくぐり抜けたものですら、肌がそばだつほどの視線。

だが、男はそんなことに気づかないほどに、鈍感だった。

「うぜえんだよ! そんなに死にたきゃぶっ殺してやらあ!」

「お、おいそりゃ流石にまずいぞ」

「うるせえ!」

 スキンヘッドの男は激昂し、足を振り上げ、それをタカラの頭めがけて一気に振り下ろした。


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